カジノ合法化に関する100の質問

日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ

カテゴリ: 観光振興

さて昨日、拙著「『夜遊び』の経済学 世界が注目する『ナイトタイムエコノミー』」(光文社新書)が発売されたワケですが、その新著内でも言及した観光新興施策に対する「間違い」を象徴するニュースが報道されております。以下、朝日新聞からの転載。


超満員のバス、消えゆく情緒…急増する訪日客に京都苦悩
http://news.livedoor.com/article/detail/13199857/
急増する外国人観光客が日本屈指の観光都市・京都に押し寄せ、住民の日常生活に思わぬ影響が出始めている。バスは満員、違法民泊も増え、「もはや限界」「観光公害」という声が出るほどだ。その陰で人口が減り、行く末を憂える地区もある。国が進める「観光立国」に死角はないか。

石畳に白川のせせらぎが響く祇園新橋地区。京町家が並ぶこの観光スポットで今春、地元住民らが大きな決断をした。27年前から続けられてきた夜桜のライトアップを中止したのだ。


訪日外客が増え、彼らが京都に殺到した結果、地域住民からは「観光公害」などという評まで出て来ている事態。その結果、長らく地域で続けられてきた夜桜のライトアップが中止にまで追い込まれたとの事です。実は、拙著「夜遊びの経済学」ではこれと類似する事例として、近年開催の縮小が行われた神戸の冬のライトアップイベント「神戸ルミナリエ」をご紹介しているのですが、まさに同じような状況が現在進行形で京都にて発生してしまっているといえるでしょう。

「夜遊びの経済学」では第三章の「夜の観光を振興する」において、観光振興を考えるにあたっての原則的な考え方に関して以下のように記述して居ます。


観光客は「ただそこに来る」だけでは経済効果は生まず、むしろそれを受け入れる側の地域にとっては、一義的に「コスト要因」に他ならない。観光客が訪問先でゴミを発生させれば、それを処理するのは地域の自治体であり、その原資は地域に住む住民の治める税である。観光客が歩く公道、使用する公衆トイレは全て自治体財源によって維持管理される公共物であり、ましてや観光客を迎え入れる為に新たなインフラ整備を行うということになれば、当然そこには地域住民の血税が投入されることとなる。

そのような様々な財源部分の話をさっぴいたとしても、そもそも域外から得たいの知れない人間が多数来訪し、道端でワイワイガヤガヤと大騒ぎし、私有地や進入禁止地域にまで入り込み、「旅の恥じはかき捨て」とばかりにトラブルを巻き起こすなどというのは、地域の住民にとって必ずしも歓迎されるものではない。はっきり言ってしまえば、観光客というのはそこに根ざして生活する人間にとっては、根源的に厄介者であり、迷惑以外の何ものでもないのである。


観光業界に生きる人、観光行政に関わる人というのは多くの場合、観光振興は「地域の魅力を発信すること」であり、同時にそれは「地域にとって喜ばしいこと」であるといった間違った考え方から論議を始めることが多いのですが、観光に関わる人達がまず自覚しなければならないのは「観光客というのは原則的に地域にとってはコスト」であり、「観光振興というのは基本的に地域にとってマイナスからのスタート」であるということなのです。

そして、本書ではこのマイナスから始まる観光政策に関して、以下のように論議を転換させているわけです。


繰り返しになるが、観光客が来るという事は、根源的に地域にとってはコストである。観光客を多数誘致したにも拘わらず、そこで発生する様々なコストを上回る経済効果が地域にもし生まれなければ、観光施策はただ地域のリソースだけを浪費して、リターンを生まないマイナスの政策になってしまう。国や地域がもし自然や歴史など収益を生みにくい観光資源を「売り」とするのなあば、逆に「そこからどうやってお金を生み出すのか」という仕組みづくりにもっと真剣に取り組む必要がある。そして、この「消費」の観点から観光政策を捉えた時、ナイトタイムエコノミー振興の重要性が見えてくる。


ナイトタイムエコノミーというのは、日没から翌朝までの間に動く様々な経済活動を総称する概念でありますが、このナイトタイムエコノミーの振興はその性質上昼間が中心となってしまい、同時に収益の生み難い自然や歴史などの観光資源を補完し、地域を訪れる観光客から大きな「消費」引き出す観光資源として現在、世界的に注目が集まっているもの。我が国はまさに、このような自然や歴史を観光の「売り」とする国であるわけですが、そうであるならば尚更に陽が落ちてからの観光、そして「儲かる」夜の観光の振興を真剣に考えなければならないわけです。

拙著「『夜遊び』の経済学」では、現在世界で行われているナイトタイムエコノミー振興策を豊富な実例を元に様々な角度からご紹介をしているところ。是非、ご一読頂けましたら幸いであります。


「地域の特色ある発展」なんていうお題目は地域振興の世界では遥か昔から掲げられてきた標語でありますが、結局、地域行政がこうやって総花的な政策方針しか打ち出せないから「地域の特色」なんてものがなくなってしまうのですよ。以下、朝日新聞からの転載。


「行きたくない街」は名古屋 市自ら調査、つらい結果に
http://www.asahi.com/articles/ASJ8Z51Q9J8ZOIPE01N.html

国内主要8都市で、名古屋は「行きたくない」街ナンバーワン。名古屋市が「ライバル」7都市と比べた魅力度を各都市で調査したところ、そんな結果が出た。「名古屋が日本を支えている」。河村たかし市長はイメージアップへ号令をかけるが、前途は険しそうだ。[…]

市は6月、東京23区と札幌、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の7市に住む20~64歳を対象にインターネット調査を実施、各都市から418人ずつ回答を得た。どの程度行きたいか尋ねて指数化すると、名古屋は「1・4」。首位京都(37・6)の27分の1という結果となった。  「最も魅力的に感じる都市」に名古屋を選んだのは全体の3%で最下位。首位の東京23区(22・4%)の7分の1だった。「最も魅力に欠ける都市」は大阪市(17・2%)を引き離し、30・1%に上った。[…]

名古屋城が有名なことから、河村氏は「都市の一番重要な誇りになる」と持論の天守閣木造復元を力説した。大村秀章愛知県知事は「愛知県民は黙々と仕事をして『観光はええわ。来たけりゃ来い』という雰囲気があったのは事実だ。それがいかん」と分析。2027年に予定されるリニア中央新幹線の東京―名古屋間開通に期待感を示した。
 

朝日新聞の論調は、全国主要8都市で取得されたアンケート調査の結果により名古屋がダントツで「行きたくない街ナンバーワン」という不名誉な称号を得たというニュースから、行政側の主張する観光振興政策の必要性に展開するというものとなっています。しかし、この報道を見て私の中に沸々と湧き出て来るのは、日本有数の「モノづくり大国」たる中京圏を代表する都市・名古屋が、なぜ今更「観光都市」を目指さなければならないのか?という大きな疑問です。

「地域の特色ある発展」というのは、総花的な政策を実行するのではなく、地域の特徴に合わせて力点を付けた政策選択をしましょう、ということであります。日本で最も「工業」に軸足を置いて発展してきた中京圏を代表する都市・名古屋が、「観光」の観点からみて必ずしも良い評価を得ないというのは寧ろその地域の特殊性を前提とした「選択と集中」の結果なのであって、正直「だから何だ?」と笑い飛ばして良いレベルの話でしかないハズなのですよ。

ところが、愛知県知事と名古屋市長がガンクビ揃えて「こりゃ、アカン」と。名古屋市長に至っては、市民の血税を500億円も投じて名古屋城を復元するなぞという計画を持ち出し、アリもしない経済効果を延々と語るというなんというお粗末さ。「んなもん、大阪なり姫路なりに任せとけよ」としか申し上げようがないワケです。

【参考】名古屋城復元、最大504億円 市長「理にかなう値段」
http://www.asahi.com/articles/ASJ3Y62HCJ3YOIPE029.html

「地域の特色ある発展」というのは、安倍政権の掲げる地方創生政策の胆となる標語でもあるワケですが、「選択と集中」が苦手なこういう地方行政の総花的な政策によって、地域の特色というのは失われてゆくのですね。その結果、全国に出来るのは「何でもあるように見えて、特筆すべきものは何にもない」そんな特徴のない都市であります。

以下のような京都市長によるコメントが日経ビジネスオンラインに掲載されております。以下、本日更新の日経ビジネスから。


京都では観光がとても活況なのに、市の税収はまったく伸びていません。(門川 大作 京都市長)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246215/051700239/?n_cid=nbpnbo_twbn

その理由は宿泊施設や飲食店といった観光業で働く人の75%が非正規雇用であることと無関係ではないと考えています。製造業は非正規雇用の比率が30%です。観光業の非正規雇用の比率がこのままだと、持続可能な産業ではなくなるような気がします。観光は京都にとって基幹産業でもありますから、何とかしなければならない。
 

京都市長によれば「京都観光が活況なのに市の税収が伸びないのは非正規雇用中心の観光産業のせいだ」とのことでありますが、私からすれば不可解極まりないのですよ。そもそも長期休暇とその他の期間、休日と平日と繫閑差が非常に大きくなってしまう観光産業が、非正規雇用中心となるのは産業としての宿命であって、それを「在庫」という概念のある製造業と比べて非正規比率が高い/低いという論議を行う事自体が非常にナンセンスな話です。

勿論、この繫閑差は一日の中にも存在しており、例えば観光業界の中核にある宿泊業種などは、お客様がチェックアウトをしてから次のお客様を迎えるまでの10時~15時にどうしても局地的に労働人員(客室清掃員)が必要となる。これら労働需要を支えているのは、例えば子供を学校に送り出してから彼らが夕刻に帰ってくるまでの間に働いているパートの主婦(主夫)の方々。即ち非正規雇用者であるわけですが、これはこれで事業者側と労働者側の受給がマッチした雇用形態なのですよ。

それを、どっかの労働組合の如く、ひとからげに「非正規が悪い。正規化せよ」と批判の対象にするなどというのは、観光都市・京都の首長とはとても思えぬ発言…と思いましたが、そういえば京都は左派系の労働団体の政治的圧力が非常に強い「お国柄」でしたね。それはそれで、京都の首長らしい発言であるのかもしれません。

また、京都市長の発言が根源的にオカシイのはそもそも消費税の中には地方消費税分が含まれておって、域内に観光客が沢山来て金を落とせばその発生元となる京都市に税収として還ってくる仕組みになっているのです。にもかかわらず「観光客が増えても、税収が増えてない」とするのならば、寧ろ何かそこに別の問題があるのではないか?と考えるのが筋であるワケです。

…という目で、京都府の発表している観光統計を見てみたのですが、京都市長が本件を完全にミスリードしているという事実が判りました。

京都市の観光客数と観光消費額(平成26年 vs . 平成25年)
kyoto
出所:「観光入込客数及び観光消費額」(京都府)を元に筆者編集

残念ながら平成24-25年の間に統計の取得手法に変更があったようで平成24年以前の数字がないのですが、例えば平成26年と平成25年の二か年の観光統計を比較すると上記のようなものとなります。

・観光客数自体は前年度比7%増
但し、その増加の中心は日帰り観光客 (9.5%増)であって、宿泊客(2.5%増)ではない。

・観光総消費額自体は前年度比8.9%増
但し、一人あたり消費額を見ると宿泊客消費が32,630円(H25)から35,872(H26)に増加しているのに対し、日帰り客消費は7,096円(H25)から6,670円(H26)へと下がっている。
 

京都市長のミスリードは、第一に「税収が増えていない」という発言。上記の統計を見ると、日帰り、宿泊を合わせた観光消費額は前年度比で8.9%と増えていますから、少なくとも京都市に還元される地方消費税収は増えているハズ(但し、地方消費税の市町村還元分は独特の計算手法で出すので増加分が即反映するワケではないが)。また、地域観光が活気付くことで域内不動産価格が上昇すれば必然的に京都市が得る固定資産税収が増えますから、地方消費税以外の部分でも税収は増えているハズです。京都市長が何をもって「京都では観光が活況なのに、市の税収はまったく伸びてない」と主張しているのかが全く判らないですし、もし本当に税収が全く伸びていないのだとすると観光以外の原因で税収が伸びていないだけなのではないでしょうか?

京都市長のミスリード(その2)は、京都市内の観光産業の抱える問題点を「非正規雇用比率」という全く別のところに求めている点。上記観光統計が非常に象徴的に示しているのは、平成26年から平成25年にかけて宿泊客の一人あたり消費額は32,630円から35,872円へと増加しているのに対して、日帰り客の一人あたり消費額が7,096円から6,670円へと大きく減少している点です。

もし、京都市長が市の税収が「思ったより」増えていないという意味で冒頭の発言を述べているのだとすれば、この部分が原因。観光客の中で最も大きな構成比率を占めているのが日帰り観光客ですから、この部分の消費額が減ってしまえば「一見客が増えているようにみえるが、実は見た目ほどは儲かってない」という状況が生まれます。実はこのような状況は、今、全国の多くの観光地で見られ始めているものであり、先日個人的に訪れた日光の観光業者の方も同様の感想を述べていました。


京都も日光も、いわゆる歴史観光資源を「売り」とする観光地でありますが、歴史観光というのは観光客数は稼げても実は観光消費を誘引するのは非常に難しい観光資源であるというのは常々私も当ブログで申し上げてきたところ。京都市もまさに、同様の問題に直面しているのではないか?と思っておるところです。京都の観光振興に関しては、以前、以下のようなエントリを書いたことがあるワケですが、京都市長は観光業界の雇用構造なんぞを意味も分からず批判してないで、このような地元商業者の声をもうちょっと細かく拾ってゆくべきではないでしょうかね。

祇園はテーマパークじゃない:「儲ける観光、儲かる観光」の必要性
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9153003.html

すべての日本の観光業界人が鼻汁を噴出せざるを得ない大胆構想が、楽天・三木谷氏から語られました。


三木谷構想"2020年観光客1億人計画"とは?  「日本のプラットフォームを変えればできる」
http://toyokeizai.net/articles/-/87801

日本への観光客数は、もともと2020年に2000万人という目標でしたが、前倒しで達成できてしまう。であれば僕が言っているのは、2020年の目標を3000万人ではなく1億人にしよう、ということです。1億人で少なくとも20兆円はプラス効果がある。日本をシリコンバレーのように世界から人が集まって働く場所にすることも、大きな政策になる。世界中から人が集まるようになれば100兆円くらいの経済効果があるでしょう。 […]

1億人という数字に根拠があるわけではなく、素朴なアプローチです。マレーシアは6000万人で、フランスは9000万人。それを超えられると思うのです。日本には、北海道から沖縄まであって多彩な観光資源がある。食べ物も美味いし、サービスもいいし、温泉だってある。どう考えても1億人はいけますよね。


記事タイトルを見て「あと5年で一億人達成…って(笑」と思って本文を読み進めたら、「数字に根拠があるわけではない」と高らかに宣言されております。

そうですか、そうですか。良いですなぁ、数字に責任を負う必要なく、とりあえずぶち上げておけばそれで良い立場というのは。でも、もし楽天内で部下が「今、月粗利2000万円のサービスを5年で1億にします!」とぶち上げた直後に、「一億という数字に根拠はない」とか主張したらブチ切れると思うんですよね、三木谷氏は。お願いですから、こういう根拠のないものを、ご自身が代表を務める新経連の政策提言とかにしないで下さいね。



まず、大きな間違いを幾つか指摘しておきますと、マレーシアの訪問外国人客数が6000万人などという数字が出ていますが、2014年のマレーシア訪問国際客数は2700万人で全然数字が間違っています(参照)。また、この2700万人の訪問者うち、約半数の1300万人を占めるのは地続きで国境が繋がっており、鉄道で往来可能な隣国シンガポールからの来訪客であります(参照)。対して、八方が海に囲まれており地続きの隣国のない日本とは環境が全く違いますので、それを単純比較してはいけません。

また、フランスの8千万人も我が国との比較対象で良く持ち出される統計ではありますが、コチラも来訪客のtop5は、イギリス、ドイツ、ベルギー、イタリア、オランダ(参照)と全部鉄道で往来できる国々であります。EU諸国はそもそも国際協定の元で人の往来は自由ですから、下手すりゃ我々が隣の都道府県の温泉地に出かける感覚で域内を移動します。繰り返しになりますが、こういう事例を我が国と単純比較してはならないと思うんですよね。

三木谷氏のみならず近年の訪日外客の爆発的な増加を受けまして、色々な識者が今更の如く「2000万人なんて目標は生温い!」などという叱咤を発するワケですが、我が国の訪日外客数は1995年に「ウェルカムプラン21」なる国際観光推進計画が立てられ、「2003年までに700万人」という達成目標が建てられて以来、その当初目標が達成できず、ずるずると計画の「後ろ倒し」が行われてきたのが実情です。

【国際観光目標の変遷】
ウェルカムプラン21: 350万人(1995年)を700万人(2003年)へ
ビジットジャパンキャンペーン:500万人(2003年)を1000万人(2010年)へ
観光庁の発足:830万人(2008年)を2000万人(2020年)へ
民主党政権の発足:670万人(2009年)を2000万人(2016年),その後2500万人(2020年)へ
自民党政権の発足:830万人(2012年)を2000万人(2020年),その後3000万人(2030年)へ

これらを我が国の訪日外客実績と合わせて図にしますと、以下のようなものになります。

我が国の訪日外客数実績と政府目標
target_tourist
(出所:政府観光局資料等を基に筆者作成)

そんな我が国の国際観光産業が、やっとの事で低空飛行から脱したというのがここ数年の動向でありまして、ハッキリ言ってこんな「にわか景気」を見て「すわ一億人!」とか急に言い始めるのはどうかと思うんですよね。三木谷構想を上図でピンクの太線として示していますが、もはやグラフを吹っ切ってますわ(笑

で、上図を更に詳細に見てみますと、己が設定した観光目標をまかりなりにも達成していたのは小泉政権下におけるビジットジャパンキャンペーン(2003年~)の初期の頃と、現安倍政権下の数年の間だけなんですね。これらがどういう時代かと言いますと、政府の金融政策において積極的な円安誘導が行われていた時代であります。要は、為替が円安に振れれば、外国人にとっては日本旅行が相対的に安くなりますから、必然的に訪日外客数は増える。逆に円高時には不調になるということであります。

勿論、現在の訪日外客の好調は、特に東南アジア諸国からの渡航者に対するビザ解放や、国内LCC拡充の進捗などが複合的に合わさった結果ですので、必ずしも為替の恩恵だけによるものではありません。ただ、少なくとも現在の日本の実績というのは、為替による「ゲタ」を履かされた結果であるのは確かであって、それを見て「己を過信しすぎる」事は禁物なんですね。

寧ろ、現在の「にわか景気」でキャッシュフローが潤沢なうちにキッチリと未来への投資を行って、観光競争の為の基礎的体力を増強して置く必要があります。為替政策なんてのはミズモノでありますから、潮目が変わって景気が減速し出してから慌てて投資しようと思っても、残念ながら資金が出てこない。こういう時こそ、「にわか景気」に踊らされることなく、謙虚かつ冷静な目線をもって着実に足場を固めてゆく施策を考えてゆく事が必要であると言えます。

最後についでと言ってはなんですが、冒頭にご紹介した三木谷氏の記事内後半で「我が国のカジノは外国人専用にすべき」等のコメントが出て来ているのですが、冒頭の「2020年までに1億人」計画のインパクトが強すぎて霞んでしまいました(笑。正直、「外国人専用カジノ」案に関しては以前の三木谷氏の発言と比べると宗派替えが甚だしいのもあって、「へー、何があった?三木谷氏」という感想しかないワケですが、ご興味のある方はご覧いただければ幸いです。

さて、昨日の閣議によって安倍政権の成長戦略「日本再興戦略2015【改訂版】」が正式に承認されました。以下、日本経済再生本部へのリンク。


『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」が閣議決定されました(H27.6.30)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/


「未来への投資・生産性革命」と副題が付けられ様々な経済政策、産業政策に触れている今年の成長戦略ですが、中でも観光産業は安倍政権下にあって各産業の中で最も顕著に好ましい経済指標が出ている分野であり、同時に2020年東京オリンピックという大きなマイルストンが存在する注目の分野となっています。それだけに、文書内の記述では観光産業の振興に沢山のスペースが割かれ、国全体の成長戦略、および安倍政権の掲げる地方創生政策の柱となる施策として、政権としての力の入れようが読み取れる発表となりました。

観光産業は、2001年の小泉政権の成立以来、民主党政権であった時期も含めてすべての政権が経済成長戦略の主軸の一つとして定めて来た産業です。一方で、現・安倍政権の観光政策がこれまでと大きく違うのは、観光産業の「稼ぐ力」を非常に重視したこと。我が国の観光行政は、ともすれば非常に観念的、かつその政策効果を図りにくい「観光の文化・社会的効用」ばかりを謳いがちで、逆に数値で政策評価が明示されてしまいやすい「産業、経済政策としての観光振興」の側面に目を背け続けてきた部分があります。しかし、安倍政権では「2020年までに訪日外国人の旅行消費額4兆円」など明確な数値目標を立て、「消費の喚起」に重点を充てています。政治側がここまで明確に「観光で稼ぐのだ」という指針を示せば、さすがに観光行政を担う官庁側もそれに応えざるを得ないでしょう。

当然ながら、「儲からない観光なんて辞めちまえ」などと、かねてから「観光で儲けること」の必要性を訴えて来た私としては、これを好意的にみているところであります。


【参照】儲からない観光振興なんて辞めちまえ
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8735653.html


そのような我が国の観光行政にあって、特に「稼ぐ観光」の本丸となるのが我が国のカジノ合法化と統合型リゾートの導入であります。今回閣議決定を受けた日本再興戦略の中でも、その点については以下のように言及が行われています。


統合型リゾート(IR)については、観光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待されるが、その前提となる犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないための制度上の措置の検討も必要なことから、IR推進法案の状況やIRに関する国民的な議論を踏まえ、関係省庁において検討を進める。


但し、本記述は昨年発表された日本再興戦略2014に掲載された記述をそのまま継承しただけのものであり、そこに全く改変は加えられていません。そういう意味では、政府の本件に関する姿勢は昨年から全く進捗していないといえるでしょう。IR導入検討に関して、政府はこれまで「あくまで議員立法の成立を前提とするもの」というスタンスを貫いており、この点に関してはIR推進法案の成立を待つしか方法がありません。

一方で、肝心の国会におけるIR推進法案の審議進捗はというと、昨年末の衆院解散によって廃案になってしまったIR推進法案はこの時期には既に法案の委員会審議が開始されていたのに対して、今年再提出された法案は、未だ付託委員会すら決定されないまま衆院に吊るされている状況です。その点だけを見れば、「状況は昨年よりも後退している」と表現してもよい状態といえます。

また、審議入りの時期に関しても、当初は6月中旬以降などとアナウンスされていたものが、すでにその時期も過ぎ、最近では「なるべく早く」とか「早期に成立を目指して」とか、もはや具体的な目標すら示されなくなっている状況であります。せっかく政府主導で盛り上がっている我が国の観光振興政策に対して、IR導入が完全に「乗り遅れ」てしまわぬよう、こればっかりは立法府サイドにいる国会議員の皆様方の奮闘に期待するしかありません。

私個人としては、参院自民党より政策審議会への講師招聘を受けており、今月中にも何かしらのお話をしてくる予定となっています。私なりに出来る事は精一杯やってくるつもりですが、本件に関しては別途またご報告致すこととします。

過日の「カジノ研究の第一人者を逮捕」という報道で、私の存在を思い浮かべた方々が少なからぬ数でいらっしゃるようで、謎の風評被害を受けています。逮捕されたのは大阪商業大学アミューズメント産業研究所所属の研究者であり、私ではありません。どうもこんにちは、木曽です。

そんな事は良いとして(いや、良くないけど)、内閣府の経済財政諮問会議が、来月にもまとめる「骨太の方針」の中で、新たなる観光戦略を組みれるとの報道がありました。以下、読売新聞からの転載。


観光戦略で政府が司令塔設置へ…地方創生策
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150526-OYT1T50006.html

政府が6月下旬にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込まれる「地方創生」策が明らかになった。円安などを追い風に日本を訪れる外国人旅行者が増えていることから、地域ごとの観光戦略をつくる司令塔となる「日本版DMO(観光地域作り推進法人)」の整備を進めるのが柱だ。

特産品や観光地といった地域の魅力が埋もれているケースは少なくない。地域に合った経済産業戦略を立て、新規事業の創出やブランド化を進め、地方の「稼ぐ力」を高める。


上記記事中で紹介されているDMO(観光地域づくり推進法人)とは、Destination Management/Marketing Organizationの略称で、地域の観光資産を利用して地域課題の解決を試みる法人のこと、「街づくり」業界で先行するいわゆる「まちづくり法人」の観光地版とでも言うべき存在でしょうか。

ただね、この点において非常に気になるのが、実はこのDMO、海外ではむしろDMC(観光地域づくり推進企業:Dstination Management/Marketing Company)と呼ぶのが一般的であり、あくまで収益を生み出す主体として位置付けられるものです。一方、日本でこれを「敢えて」海外ではほぼ使われない「DMO」と呼んでいるのは、それが「企業」に限定されては困る事情があるワケでして、即ち非営利法人までもを含んだ概念として日本各地で展開させようという腹づもりがその先に透けて見えるワケです。

あくまで「企業」として展開する海外のDMCというのは、当然ながら厳しい「コスト/利益」管理が求められるワケですが、日本で想定されているDMOというのは「社会的意義」だの「地域での必要性」だのという非営利組織お決まりの論議が先行しがちであり、それをどのように具体的に管理してゆくのかなぁというのが正直なところ。政府の上位方針としては、あくまで「地域の稼ぐ力を高める」ことを目標としているワケですが、結局、いつもの補助金投入して、効果の良く判らないグダグダな展開にならないよう心から祈らざるを得ません。

また、別の報道ではこのDMOの設立は、「魅力的な観光資源があり集客が見込める地方都市」を優先して選定し、集中的に観光地としての育成を行うのだとしているのですが、これもまた実施の段階に至るとドンドン枠組みが広がって、結局、「悪しき平等主義」の下で「皆が同じことをやって共倒れする」というお決まりの構図にならぬよう、実施にあたる行政サイドの皆様も、是非気張って頂きたいなと思うところです。

「稼ぐ観光地づくり」というのは私のライフワークでもあるだけに、やっと芽生えた正しい方向性が「正しく」運用されるよう、日本版DMOの展開を注目して見守りたいと思います。

【追記】2015/05/27
当初の記載では「産業競争力会議が、来月にもまとめる骨太の方針」との表記となっていましたが、「骨太の方針」自体を纏めるのは内閣府の経済財政諮問会議であり、そこに向かって政府産業競争力会議が施策提言を行っているという構図のようです。上記、訂正いたします。

我が国の統合型リゾートの導入に関して「五輪まで開業」なんてもはや実務上不可能だし、IR誘致の本丸はアフターオリンピックの振興策なのだという話は、私がずっと主張してきたワケですが、やっと国政の主たる立場を占める方々にまで浸透してきたようです。以下、読売新聞からの転載。


カジノ誘致先「大阪が有力」…沖縄・北方相
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150330-OYT1T50018.html

山口氏は、法案について「与党内の調整が難しく、今国会で審議することは断念した。(東京)五輪までに(開業)ということはあり得ない」との見通しを述べた。その上で「五輪後は国の経済が落ち込む。その後の対策として中長期的に考えようということ」とし、五輪後の景気浮揚策としてIR誘致を位置づけているとした。


そもそも実務側から本件を見ている私の立場としては、東京のオリンピック誘致が決定した直後から急に出てきた「2020年までに開業」論に対して、それを実現するためにはどんなに遅くとも2014年の春国会までにIR推進法を成立させなければ無理というのはずっと主張してきたところ。

それに加えて、そもそも統合型リゾートの実現が最も政策的に重要になるのは、五輪の後に訪れる経済のダウンタイムの振興策としてなのだという事は、私が連載させて頂いている日経ビジネス側のコラムにも、東京五輪が決定した直後である2013年9月の時点で書かせて頂いていた事であります。


日経ビジネスオンライン「マジメに考える夜の経済成長戦略」(2013年9月)
カジノが東京五輪にできること ―税金を投入せず公共インフラを整備する方法がある
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130909/253150/


ところが、「五輪までに」という御旗がどうしても欲しい一部の議員と、実務サイドが全く見えていない一部の御用学者とが結託をして、「五輪までIR開業」論がその後も延々と論じられてきたのが実情です。昨年、6月に衆議院行われたIR推進法案の委員会審議においても、「オリンピックまでに」と主張する議員が質疑に立ちました。また昨年10月に行われたIR議連の総会に至っては「(IRの開業が)2020年の東京オリンピック・パラリンピックに間に合うよう、最大限努力すべき」などという議連の公式文書が総会決議され、それらが政治的目標として掲げられてきたというのが実情です。

一方で、「政治は超現実主義でなければならない」と考える私としては、このような「実現不可能な夢物語」をいつまでも掲げていること自体が、ハッキリって害悪にしかならないという事は幾度となく申し上げてきたところ。これに関しても、過去の日経ビジネス側のコラムで書きましたね。


日経ビジネスオンライン「マジメに考える夜の経済成長戦略」(2014年11月)
2閣僚辞任で漂流するカジノ法案 ―2020年開業という「達成不可能」な目標
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141105/273446/


そして、ここに来ていよいよ安倍政権の閣僚の口から「東京五輪までに開業ということはあり得ない」、「五輪後は国の経済が落ち込む。その後の対策として中長期的に考えよう」というメッセージが明確に出てきてしまったワケですが、昨年10月の時点で「五輪まで開業」を公式文書にまで入れて掲げてしまったIR議連の皆さんは、一体、どのようにリアクションをするつもりなんでしょうか。奇しくも本日の夕刻から、今年初めてのIR議連の総会が執り行われるワケですが、彼らの今後の動向に注目が集まります。

っていうか、何度でもしつこく繰り返しますが、五輪まで開業なんて、既にとうの昔に有り得ない話になっているのですから、さっさとその旗は降ろした方が賢明ですよ。

本日は、観光業界の人間は口が裂けても絶対言わない事を、あえて口に出してみるとどの様な結果になるのかを実験してみたいと思います。表題の通り、テーマは「儲からない観光振興なんて辞めちまえ」です。

1. マジックワード化した「観光振興」

マジックワードというのは、この言葉を使えば無条件に己の正当性が主張できるという非常に都合の良い言葉のことを指します。行政やビジネスの世界では2,3年毎に新しい「マジックワード」が登場するモノで、ちょっと前で言えば「クールジャパン」、今の流行は「地方創生」です。そして、今回テーマとして扱う「観光振興」というキーワードも一種のマジックワードとして我が国に長らく存在し続けてきた用語です。

観光振興という言葉がマジックワード化したのは、2002年に小泉内閣が「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(いわゆる「骨太の方針」)を閣議決定し、観光を我が国の基幹産業に育てるべしとする大きな指針を示して以降のことでしょうか。その後、2006年に観光立国推進基本法の制定、2008年に観光庁が設立され、我が国の「観光立国」への道筋は盤石となりました。

その状況にさらに輪をかける事となったのが2020年東京オリンピック誘致の成功です。オリンピック開催が決定して以降、何かにつけて「東京五輪に向けて」、「五輪客をおもてなす為に」などという説明が持ち出され、「それって本当に関連性あるのか?」と思われるような事業の正当性が語られる。このような状況が、恐らく2020年まで延々と続くのでしょう。

2. 観光客は地域にとってコストである

一方で、これは非常に原理的な大切な観点なのですが、実は観光客というのはそれを受け入れる側の地域にとっては第一義的に「コスト要因」にしかなりません。

観光客がゴミを発生させれば、それを片付けるのは当然ながら地域の自治体です。観光客が公道を歩き、公衆トイレを使うのなら、それらはすべて地域のリソースですし、ましてや彼らを迎え入れる為に新設のトイレを設置し、交通標識を整備しなければならないなどともなれば、当然、そこには地域住民の大切な公財源が利用されることになります。

そういうお金の話をさっぴいたとしても、そもそも域外から得体の知れない人間がゾロゾロやってきて、道端でワイワイガヤガヤ大騒ぎをし、挙句の果てには私有地や進入禁止地域にまで入り込み、「旅の恥はかき捨て」といわんばかりにトラブルを巻き起こすなどというのは、地域の住民にとって必ずしも歓迎されるようなモノではない。いや、ハッキリ言ってしまえば、そこに根差して生活する人間にとっては迷惑以外のナニモノでもないわけです。

3. 観光振興の正当性は経済性にしかない

では、このように地域にとっては根源的にコスト要因でしかない観光が、なぜ長らく正当性をもって振興されてきたのかというと、そこに発生する「経済性」があるからに他なりません。そもそも観光立国推進基本計画そのものが、「モノづくり」一辺倒でここまで来た我が国の産業構造の転換が必要だという命題が大前提があるものです。また、近年ことさらに国際観光の振興が叫ばれるのも外に向かってモノを売るだけではなく、消費者そのものを「迎え入れる」ことで、少子高齢化と人口減少により縮小する我が国の内需を補完しようとするものであります。

同時に、今流行の「地方創生」政策において、これまた観光振興に大きな力点が置かれているのも、大都市圏に集中する消費力を経済減退の進む地方が享受する為に必要な「消費移転」の手段として観光が捉えられているからこそであり、当然ながらこれらも観光の背景にある「経済性」が大前提となっている論議といえます。

4. だったら「お金」のことをもっと真剣に考えなければいけない

だとするのならば、我々は観光振興を語るにあたって「如何に儲けるか」、「如何に地域にお金を落とさせるか」をもっと真剣に考えなければいけないワケです。しかし、観光振興の現場で行われる論議というのは、それとはかけ離れていて「○○が育んだ美しい自然」とか「●●年の伝統を持つ豊かな文化」などという「美しい理念」ばかり。そこには「お金」の「『お』の字」すら登場しないのが実態で、その原資すらも「もっと公金をそういう所に使うべきだ」などという主張が、実しやかに行われる始末です。

一方で、「自然や文化は良いけど、それでどうやって儲けるんですか?」などと論議を向ければ、「オマエは文化の重要性が判ってない」とか「金の亡者、エコノミック・アニマル!」などと糾弾され、たちどころに「無粋な奴」レッテルを張られます。かくいう私は大体、そういう役回りです。

でもね、最初にご紹介した大前提を忘れないで欲しいんです。地域に観光客が来るというのは、根源的に地域住民にとってはコストでしかなく、それを前提にしながらも観光振興の正当性が語られているのは、その背後にある「経済性」故であるということを。

私は、自然や文化の価値そのものを否定しはしませんが、殊に「観光振興」という一点から見た場合に、自然や文化による誘客というのは消費をそこに直接生むのが難しい。丸一日かけて観光客が文化財だの史跡などを巡ったところで、そこで落ちる消費は精々数百円の拝観料です。自然観光に至っては、そもそも自然の散策に「お金を払う」という観点をもった観光客自体が殆どいないでしょう。そういう収益を生みにくい観光資源を「売り」とするのならば、「そこからどうやってお金を生み出すのか」という仕組みの部分をもっと真剣に語る必要がある。結局、人間の消費というのは、街に出て買い物をしたり、何かしらの施設を利用したり、サービスを享受したりという「現在進行形の人間の営み」の中にしか生まれないワケで、歴史的重要性だの、自然の価値だけを語ったところで、観光消費にまで行き付かないワケです。

一方で繰り返しになりますが、地域に観光客が来るという事は原則的に地域にとってはコストであるワケで、下手をすれば地域振興として語られている観光施策が、地域のリソースだけを浪費してリターンを産まないようなマイナスの活動にすらなっているかもしれないわけです。そんな所にワザワザさらに予算をつぎ込んで観光振興をするなどというのは無駄の極致であって、そんな観光振興は寧ろ「やらない方がマシ」であると言えましょう。

ということで、これからの観光振興を考える人達には、現在の観光の現場にありがちな「美しい理念」ばかりに捕らわれず、その背景にある経済性や商業性についても厳しく追及して欲しい。それが私が追求し続けている「儲かる観光」、「稼ぐ観光」の在り方であると言えます。

旧正月を迎えて中国人観光客があふれ始めると、必ず以下のような論調で語る人が出てくるのですけど、どうなんでしょうね。以下、Blogosからの転載。


中国人の「爆買い」で賑わう銀座に勝谷誠彦が苦言 「目先のカネに飛びつくと後悔しますよ」
http://blogos.com/article/106270/

番組では中国人観光客が大型バスで東京・銀在に乗り入れ、買い物にいそしむ様子を紹介。玩具店は「ものすごく助かってます。お正月がもう1回来ている感じ」と頬を緩め、ビジネスホテルも通常料金の約3万円を5万4000円に値上げしたと明かす。百貨店近くのカバン店では、毎日500個のスーツケースが完売しているという。その一方で目につくのが、彼らのマナーの悪さだ。


中国人観光客のマナーが悪いのは事実で、現在の彼らの立ち振る舞いそのものを擁護するつもりは毛頭ないという前提で、以下論を続けます。

海外における日本人観光客の評価は、持ち前の自己主張の苦手さと、キレイ好きな国民性もあって、各観光地においては歓迎される傾向の高い存在ではあります。ただ、殊にショッピング観光においては、我々日本人もあまり褒められたものではない時代が長く、今の中国からのショッピング観光客を単純に非難、ましては嘲笑的に語ることのできるような立場でもないことを忘れてはなりません。

我が国では欧米圏の超ハイブランドが人気を博した時代が長く、円高時代が背景にあったのもあり、海外に靴やバッグなどを買い求めるショッピング観光客を沢山送り出した時代がありました。

例えば当時、欧米を訪れた日本人観光客は、現地では超セレブしか利用しないようなハイブランドの本店に、ジーパンにサンダル、Tシャツといったかなり場違いな格好で観光バスを利用して団体で乗り付け、「あぁでもない、こうでもない」と大騒ぎ。また当時は、ブランドのロゴの付いた紙袋をサブバッグとして使うのが日本で流行っていたのもあって、紙袋を余計に多く入手しようと店頭でゴネまくったりしながら買い物をし、結果的に店頭からすべての商品を買いさらってゆく存在として知られていました。

欧米のハイブランド利用者からしてみると、当時の日本人の観光客は突然現れた「イナゴの大群」みたいなもので、お店の買い物環境を荒らしまくった挙句、日本人が訪れた後には商品が何も残らない。実は、この点においては日本人観光客も、特に欧米圏のセレブ層には非常に非難が多かったのですよね。

今となっては、当時のような一部のハイブランドに日本人の人気が集中するような異常状況が解消し、また日本人自体が団体旅行から個人旅行を好む形に嗜好が変化したのもあって、欧米のブランドショップやそのファンにご迷惑をかける事はなくなってきました。しかし、少なくとも我が国もかつての一時期には、そういう「恥」を世界中にまき散らしていた時代もあるわけで、現在、やっと海外旅行デビューをしたばかりの中国人観光客層(特に本土からの観光客)の惨状を見て、非常に短絡的な非難をしたり、嘲笑するのもどうかなと思うところもあります。

中国人観光客にはマナー向上を継続的に期待をすることは当然のこととして、もう少し長い目で彼らの立ち振る舞いを見守ってあげることも必要なのかなと、個人的には考えるところであります。

自治体の観光行政がいよいよ仁義なき戦いに突入しそうな、大きなニュースが飛び込んできました。


宮城県、観光客の旅費半額補助へ
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201502/20150220_11017.html

宮城県は19日、県内を訪れる観光客の宿泊代や交通費を、半額程度助成する事業に新年度から取り組む方針を固めた。旅行券や旅行商品を販売する事業者などに割引相当額を補助し、東日本大震災で落ち込んだ観光客入り込み数の回復を期す。関連経費約10億円を計上した本年度一般会計補正予算を開会中の県議会2月定例会に追加提案する。

 補助対象は、インターネットのサイトや旅行会社の窓口で販売される宿泊施設と鉄道や飛行機のパッケージ商品など。ほかに、観光客が県内の宿泊施設で利用可能な旅行券をサイトや旅行会社、コンビニエンスストアなどで割引価格で購入できるようにする。一部は4~5月の大型連休前の利用開始を目指す。


旅費を直接税金で補助…。世の中に行政補助の形というのは数多くあれど、商品価格に直接公的補助を入れて価格ダンピング的な廉価販売攻勢行うというのは完全に「禁じ手」の部類です。

この宮城県の施策は、政府の「地域住民生活緊急支援交付金」、すなわち俗にいう「地方創生予算」を利用して行うもので、今までも他県の動きのなかで商品価格を補助するような提案もないことはなかったワケですが、利用者や利用方法を限定するなど、もっと「慎ましやか」に検討が行われてきたもの。今回の宮城県のように、大々的かつ包括的、そして何より「半額補助」というトンデモナイ補助比率で一種の価格ダンピングを行うというのは、宮城県はあらゆる批判を一身に受ける覚悟をもって施策決定しているといえます。

変な話、これが行政倫理的に認められるのならば、観光商品のみならず、全国の自治体が地域産品に一斉で補助合戦を始めます。この種のものは自治体にとっても「消費者の奪い合い」の分野ですから、隣がやるなら自地域も同様に動かなければ地場産業が死滅してしまう。まさに「やらなければ、殺られる」の仁義なき戦いの幕開けと言えましょう。

そして、何よりこの報道で悲鳴を挙げているのは、宮城県との県境に位置する近隣県の観光地です。政府の地方創生予算は、これから先一年の使い道を「今」決めなければいけないもの。他県が、今から宮城県に対抗する施策を準備するのは時間的に不可能ですから、おそらく来年4月以降の一年は宮城県内観光地の独走が続きます。一歩県境を越えたら旅費の補助がでるわけですから、消費者は当然のように宮城を選択するわけで、近隣の観光地にとっては影響が甚大です。

そのような価格ダンピング攻勢を一年間にわたって仕掛けられれば、周辺県にある大抵の観光業地は完全に「干上がって」しまうワケで…今からその地獄絵図は想像に難くありません。そして、来年以降、宮城県の観光地はそうやって近隣が「焼け野原」になった市場で悠々と商売をする、と。まさに仁義なき戦いの様相です。

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