カジノ合法化に関する100の質問

日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ

カテゴリ: 制度設計

ご報告になりますが、10月2日発売の金融系ジャーナル誌「金融財政事情」に「IR推進会議『取りまとめ』に対する疑問点」と題された寄稿論文が掲載されております。以下は掲載文から一部抜粋。

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他にも例えばIR推進会議の「取りまとめ」では次のような法の読み替えも登場する。そもそもIR推進法の起案を行ったIR議連は、我が国に誕生する未来のカジノ産業の統制を既存の行政機関に帰属させず、独立性の高い行政機関によって行わせることを前提として本法を起案した。このことは、昨年12月8日に衆院内閣委員会で行われた法案審議でもIR議連幹事長の岩屋毅議員の答弁内で確認された事項である。


参議院内閣委員会 平成28年12月08日
○衆議院議員(岩屋毅君)
我が国において初めてのカジノというゲーミングをたとえ施設の一部であっても認めていく上においては、やはり政府においてもしっかりとした監視、管理の体制をつくってもらう必要があると。今までの公営競技のように、競馬だったら農林省だと、競輪だったら経産省だと、そこが監督していればいいんだというような体制であってはならないと私どもは考えてまいりました。したがって、法案の中にありますように、いわゆる三条委員会、独立性を持った、強い権能を持ったカジノ監視のための組織をつくるべきだということも中に入れているわけでございます[…]


この点に関しては同様に、昨年12月02日に行われた衆議院内閣委員会での西村康稔議員の委員会答弁においてもその内容が更に確認されているところである。


衆議院内閣委員会 平成28年12月02日
○西村(康)議員 まず私から、三条委員会にすべきではないかという点についてお答えを申し上げたいと思います。全く御指摘のとおり、カジノに関する規制を行う機関としては、監督、規制を適切に実施するため、既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切であり、御指摘のとおりだというふうに考えております。


ところが、IR推進会議はこのように法案審議の過程で示された議会の意思に関しても、独自の解釈論を繰り広げ、そもそも想定されてきたものとは異なる制度案を提案している。IR推進会議は「取りまとめ」において、このカジノに関する規制を行う機関の「独立性」について以下のような主張を行っている。


<制度設計の方向性>
カジノ管理委員会は、IR 推進・振興に関係する他の行政機関とは一線を画し、カジノに関する規制を厳格に執行する独立した行政委員会として位置付けるべきである。


上記の記述は一見すると、先に示した西村康稔議員の衆院内閣委員会答弁に即した表現に見える。しかし、昨年の議会において示されていたのは「既存の行政機関から独立した新たな行政機関」による産業の統制である。一方、IR推進会議はこの答弁内では一切登場していなかった「IR 推進・振興に関係する他の行政機関とは一線を画し」という文言をそこに付加し、オリジナルの答弁が意味するところとは全く異なるものとして読み替えを行っている。そして、そこから更にIR推進会議は、我が国のIR導入政策の主務となる大臣と、その権能に対して次のような論を展開するのである。


・区域の認定主体である「国」については、IR 事業の主目的である「国際競争力の高い魅力ある滞在型観光の実現」と関係の深い単一の主務大臣が認定することとし、具体的には国土交通大臣とすべき
・主務大臣は、基本方針等のIR 制度の運営に向けた方針を示し、区域整備計画(IR 事業者が作成する事業基本計画を含む。)の認定、実施協定の認可を行うとともに、①区域整備計画、実施協定が適切に実施されていない場合、②国際的・全国的見地等から必要があると認める場合や複数のIR 区域での調整が必要となる場合には、IR 事業者に対し報告徴収、立入検査、指示等を行うこととすべきである。また、上記も含め、主務大臣の監督権限として、事業計画の内容の確認、報告徴収、立入検査、指示、区域整備計画の変更指示や区域整備計画認定の取消しを定めるべきである。加えて、区域整備計画の認定及び実施協定の認可は、更新制とすべきである。


繰り返しになるが、そもそも昨年の法案審議時における委員会答弁では、日本のカジノ統制のあり方は「今までの公営競技のように、競馬だったら農林省だと、競輪だったら経産省だと、そこが監督していればいいんだというような体制であってはならない」(岩屋毅議員、平成28年12月08日)とされ、「既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切」(西村康稔議員、平成28年12月02日)であるとの認識が示されていた。しかし、今回の「取りまとめ」においてIR推進会議から主張されたのは、既存の行政機関である国土交通省を主務として定め、そこに強力な統制権限を付与した従来型の産業統制の形式であり、これが果たして法案審議時に示された議会の意思を反映したものとなっているのか甚だ疑問である。(続く)

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えーっと、先の風営法に関する質問主意書を提出し、「風営法の規制の範囲で営業を行っている限りパチンコ店が賭博罪に問われることはない」との答弁を引き出した緒方林太郎議員(民進)のブログで以下のような言及がなされています。


読み違い
http://ameblo.jp/rintaro-o/

私が提出し、答弁が戻ってきた風営法に関する質問主意書について、どうも世間に「読み違い」が流布しているようです。これは「霞が関文学」の最たるものでして、読み違えることは仕方ありません。本件はもう少し情報が揃ってから思いをまとめる予定でしたが、誤解を放置しておくと良くないと思いますので、ここで投稿しておきます。[…]

まず、①ですが、これは景品の換金行為がなされている事を承知していると書いてあるだけです。それに対する法的な評価はありません。そして、②について、まず、冒頭の「ぱちんこ屋」が何を指しているかですが、これは風営法上の「遊技」としてのぱちんこを指しています。つまり、遊技をさせて景品を渡す、これだけです。なので、そういう遊技であるぱちんこは賭博に当たらないという、いわば当たり前の事を当たり前に書いているだけです。

①と②が並んで書いてあるのでどうしても誤解したくなりますが、それぞれの答弁をよく読むと何処にも「換金行為がOK」、「三店方式がOK」などということが読める内容ではありません。
 

大変申し訳ないですが、緒方議員こそ「読み違い」です。 国会議員は法律にしか権限を持っておらず、その法の下に存在する政省令および解釈運用基準、もしくは各都道府県における施行条例の内容まで把握していないでしょうから仕方がないことなのかもしれませんが、風営法がパチンコ店に関して定めている規制の内容は、緒方議員が言及している:


冒頭の「ぱちんこ屋」が何を指しているかですが、これは風営法上の「遊技」としてのぱちんこを指しています。つまり、遊技をさせて景品を渡す、これだけです。なので、そういう遊技であるぱちんこは賭博に当たらないという、いわば当たり前の事を当たり前に書いているだけ
 

ではなく、パチンコ店に関して遊技をさせて景品を渡した「後」に関しても様々な規制を持っています。以下、全て風営法およびその関連法令からの引用。


●風営法
第二十三条
第二条第一項第四号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一  現金又は有価証券を賞品として提供すること。
二  客に提供した賞品を買い取ること。

●風営法施行条例(東京都)
第7条第2項
法第二条第一項第四号及び第五号の営業を営む風俗営業者は、前項に規定するもののほか、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 客相互の行う遊技の結果に対して賞品を提供しないこと。
二 客に提供した賞品を買い取らせないこと。

●風営法施行条例解釈基準
4-7-(4) 
「客に提供した賞品を第三者に対して客から買い取るよう勧誘し、又は援助する
等の方法」とは、例えば次に掲げる方法が考えられる。
ア 賞品の買取業者に資金を援助し、土地若しくは施設を提供し、又はこれらをあ
っせんする方法
イ 賞品の買取業者の役員を兼ね、又は従業員を派遣する方法
ウ 賞品の買取所の光熱費の肩代わりをする方法
エ 客に提供した賞品につき、真正なものであることを証する書面、相場を表示す
る書面等を交付する方法
オ 客に賞品の買取所を案内する方法
カ 買取所における当該賞品の相場又は遊技球の換金率を営業所内で表示する方法 
(下線は筆者)
 

安倍政権が先の緒方議員による質問主意書に対して行った「(風営法の)規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しない」という答弁は、上記の風営法関連法令による各種規制が存在することを前提として為された回答であり、この範囲で行われる営業については刑法賭博罪が問われることがない、ということを明示したものであります。

そして、今回緒方議員が不覚にも起こしてしまった政府答弁書の「読み違い」によって改めて提出をした質問主意書の内容:


答弁書の「六について」及び「七について」に関し、客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却した結果、風営法に基づく必要な規制の範囲を逸脱し、それが刑法第百八十五条に規定する罪に該当する事はあり得るか。ある場合、どのような状況下でそれが起こるかを答弁ありたい。
 

の答えは既に現法令の中に示されているのですよ。即ち、私が上で下線部を引いて示した風営法およびその関連法令から逸脱する行為はたちまち違法であり、その違反内容の如何によってはそれが「刑法第百八十五条に規定する罪に該当する事もあり得る」ということとなります。

正直、もうちょっと「あぁでもない、こうでもない」のモヤモヤとした期間を楽しみたかった部分もあるのですが、昨日ご紹介したパチンコ景品買取行為の適法性に関する質問主意書。質問者の緒方林太郎議員が己のブログにおいて先出しの政府回答書の内容を紹介しています。以下、緒方議員のブログより抜粋して転載。


質問主意書(風営法)
http://ameblo.jp/rintaro-o/

【質問】
六 ぱちんこ屋で景品を得た後、その景品を金銭に交換している現実を政府として把握しているか。
七 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定されるぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか。

 
【答弁書】
六について
客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。
七について
ぱちんこ屋については、客の射幸心をそそるおそれがあることから、風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。
 

ということで「(風営法の)規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しない」という事が明示されまして、パチンコ業界の皆様の大勝利です。オメデトウゴザイマス。

パチンコにおける「いわゆる換金行為」(正確には景品買取行為)に関する、警察庁および政府答弁は「直ちに違法とはならない」という表現を使うのが常であり、「賭博罪には当らない」という表現は私が知る限りにおいてこれまで公式に使われた事はありません。 「直ちに違法とはならない」というのは他の法的判断においてもしばしば使われる表現ではありますが、「忽ちこの場で違法であるとは断言できない」といういわゆる「疑わしきは罰せず」の罪刑法定主義に基づく表現でありますが、一方で将来の法的判断に対しては「別の結論の余地」を残した表現でもあり、この表現がパチンコ業界が「グレー」と評される一つの根拠でありました。

それに対して今回、政府が「パチンコ景品が売却され結果的に客が現金を手にすることがある」という現状認識を明示しつつ、その営業が風営法の規制範囲で行われている限り賭博罪(刑法第185条)が適用されることはないと断言したことはパチンコ業界にとっては大きな前進であることは間違いないでしょう。業界の皆様におかれましては、今後、「嫌パチンコ」派の方々から「違法駅前賭博」などというレッテルを貼られた時は、「内閣総理大臣 安倍晋三」名で出されたこの政府答弁書を金科玉条の如く掲げることをお勧めいたします(笑

そしてこれは「奇しくも」という表現となるわけですが、パチンコ業界はこの2年ほどの間に「釘問題」、「換金問題」という業界2大タブーを乗り越えた(もしくは「事故的に」乗り越えることとなった)こととなります。この二つの法的論争は、東京証券取引所がパチンコホール企業の上場をこれまで認めて来なかった2大要因であり、まさに「奇しくも」この問題を乗り越えたパチンコホール企業の皆様は東証への上場に向けての大きく前進をしたということになります。

勿論、その前に必要となるのは、目下、まさに処理の行われている「検定時と性能が異なる可能性のある遊技機」問題への対応。まずは、定められた年末までの問題対処をこなした上で、「新しいステージ」に突入されることを心よりお祈りしているところ。一方、これまでパチンコを「違法駅前賭博」などと称して散々攻撃してきた、いわゆる「ネトウヨ」界隈の皆様におかれましては、本政府回答を引き出した緒方林太郎議員のところにでも嗚咽を上げながら全凸すれば良いと思うよ(笑

という事で、長きに亘って論争を振りまいてきたいわゆる「パチンコ換金」に纏わる法的論争はこれにて終幕。関係各所の皆様の今後のご活躍を祈念しております。

今月、民進党の緒方林太郎議員が衆院に2つの質問主意書を提出。内閣送付が行われています。以下、衆院webサイトからの転載。


賭博及び富くじに関する質問主意書
一 海外にサーバーが存在するオンライン・カジノであり、開帳を始めとするすべての手続きが海外でなされるものに、日本国内からオンラインで賭博に参加する行為は刑法第二編第二十三章の罪に該当するか。
二 海外で販売されている富くじを日本国内から購入する行為は、刑法第百八十七条第三項における富くじを授受した者に該当するか。
 
右質問する

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 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第二条第一項第四号において、風俗営業の一類型として「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」と規定されている。これを踏まえ、次の通り質問する。
 
一 まあじやん屋、ぱちんこ屋以外に何が含まれるか。
二 射幸心とは、何を意味するのか。
三 射幸心の「幸」には、直接的又は間接的に金銭的利益を得る幸せは含まれるか。
四 平成二十六年六月十八日の衆議院内閣委員会で、政府参考人が次のように答弁している。「刑法上賭博等が犯罪とされておりますのは、賭博行為が、勤労その他の正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、社会の風俗を害する行為として処罰することとされているものと承知しております。」ここで言う「射幸心」とは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第二条第一項第四号の「射幸心」と同義か。
五 「そそる」の有無を判断する基準は何か。また、上記答弁の「助長」との違いは何か。
六 ぱちんこ屋で景品を得た後、その景品を金銭に交換している現実を政府として把握しているか。
七 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定されるぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか。

右質問する
 

一つ目の海外に本拠をおいて提供されるオンラインカジノおよびオンライン宝くじへの国内からの参加に関しては、2013年に私自身と友人の渡邊雅之弁護士(@三宅法律事務所)が企画をして実現した質問主意書と同一の質問内容であり、正直、「過去ログみろ」もしくは「ググレカス」以外の感想はないのですが、2本目のパチンコに関する質問は非常に秀逸なものであります。


【参照】ファイナルアンサー: オンライン賭博は違法である


パチンコで行われている景品買い取り行為に関する違法性を問うた質問主意書としては、2015年の通常国会においても民主党(当時)の小見山議員から同趣旨のものが内閣送付されております。ただ、当時の小見山議員の質問は、その「書きぶり」があまりにも漠としていた故に、所管の警察庁からは風営法の解釈論のみでお茶を濁されてしまい、肝心のそれらが刑法賭博罪にあたるのか?に関する回答にまで至る事ができなかったという残念な案件でありました。

以下、当時の状況を書いたエントリからの転載。


「パチンコ賞品の買取行為は直ちに違法にはなりません」(by 安倍政権)

[…]上記のように、風営法との兼ね合いのみに焦点を当てたのではなく、その他の法律も含めて「違法であるか/ないか」の見解を求めていたワケで、政府は小見山議員の質問に対して巧妙に「すれ違い答弁」をしていることが判ります。当然ながら、これは意図的に行っているものでしょう。(これを意図せずやってるのなら、この答弁書を作った官僚は日本語が大変不自由な人であるということになります)

というか、三店方式が風営法の定めに反していないなんてことは最初から判ってるわけで、むしろ小見山議員が本当は聞かなきゃいけないハズの刑法第185条に定められる賭博罪との兼ね合いに関して、政府は回答を避けたというのが実態であると言えます。この答弁書も警察庁単独で作成されたものであり、刑法を所管する法務省は関知していない事になっているハズです。
 

一方、今回の緒方議員の質問主意書はというと、後半の質問六・七において、「ぱちんこ屋で景品を得た後、その景品を金銭に交換している現実を政府として把握しているか」からの「ぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか」という質問の畳み掛けが、シンプルかつ必要十分な質問内容であり、お見事! その辺は流石、元官僚議員と言うべきでしょうか(緒方議員は元外務省職員です)。

パチンコでの景品買取行為への認知確認をした上で、そこに刑法賭博罪の違法性阻却は必要ないのか?と質問しているわけですから、普通に答えるのなら警察庁の風営法の解釈論で逃げることは出来ず、法務省刑事局が出張ってきて刑法賭博罪の適用論議を行わなければいけません。

もしこれで「違法性阻却は必要ない」との法務省判断が出れば長らく続いてきたパチンコ違法/適法論争においてパチンコ業界の完全勝利。一方、それと異なる回答が出て来た場合には常々パチンコ換金の違法性を訴えてきた「嫌パチンコ派」の方々にとって有利な回答となり得ます。(必ずしも「勝利」と言えるとは限らないが)

果たしてどのような回答が出るのか。はたまた、警察庁はまた何かしらの理屈をコネクリ回して法務省の刑法解釈の明示を避ける方向で動くのか。先日、全く別の事案の流れにおいて消費者庁消費者委員会から刑法賭博罪の解釈論に関する意見書が提出されたのに際し、「パチンコ業界に「終了のお知らせか?」というエントリを書いたばかりでありますが、いよいよこの論争も最終局面に突入したなと思うところ。

「パチンコ違法/適法論争」に終止符が打たれるかもしれない注目の政府答弁を息を凝らして注目して行きたいと思います。

さて、先のエントリではこの9日にも始まると言われているIR推進法案(通称:カジノ法案)の審議ポイントをまとめ、そのうちの最大の論点の一つが俗に「民設民営」型と呼ばれる現在のカジノ法案の示す賭博合法方式にあるということを説明しました。この点は我が国の未来の賭博統制を考えるにあたっては非常に重要なポイントとなりますので、本日はさらに深くこの点に関して説明してゆきたいと思います。

1. 日本の公営競技は、すでに「公営ではない」

我が国では、既に競馬、競艇、競輪、オートレースの4事業が、「合法的な賭博」として認められています。これらは一般的に「公営競技」と総称されていますが、その実態はすでに「必ずしも公営ではない」ということを皆さんはご存知でしょうか。実は、我が国で採用されている公営競技制度では、すでに民間事業者の一部事業参入を認めており、公から事業受託をするという形式で、公営競技場の開発や運営に対して民間事業者が大きく関与している例が沢山存在しています。

賭博の実施にまつわる法律的権限は、厳密には「施行」「開発所有」「運営」の3つに分類されます。「施行」とは、法律上「一義的」に付与される賭博事業の実施権限。これまでの我が国における賭博行政の中では、この施行権は公的主体のみが保持できるものとして運用が行われてきており、これこそがまさに我が国の賭博が「公営賭博」呼称される所以でもあります。

一方、実は現在の我が国における賭博行政ではこの施行と分離するものとして、「開発所有」と「運営」という2つの権限を設定しています。開発所有とは、文字通り公営賭博競技の開催を行う施設そのものを開発所有する権限。一方の「運営」とは、その当該施設内で行われる様々な賭博事業、もしくはその一部を運営する権限であります。そして先述の通り、実は既に我が国の公営賭博の世界では、この施設の開発所有と運営に関しては既に大元の施行権を保有する好敵手体から事業受託をするという形式で民間事業者による参入が認められているのが実態です。

例えば、埼玉県の競輪場である西武園競輪は、その開業当初から西武鉄道グループが施設の保有をしていますし、大阪市の住之江競艇場は南海鉄道グループの住之江興業が施設全体の保有を行なっているほか、「自治体からの受託」という形で公営競技場の運営全般を取り仕切っています。但し、繰り返しになりますが、これらは全て大元の施行権を「公」がコントロールしているという前提の事業。なぜなら我が国の刑法はその第185条において賭博を原則的に禁じており、公が公たる目的をもってそれを執り行う事業として別法にそれが定められる時のみ、例外的に賭博が合法のものとして存在できるというのが我が国における原則的な刑法解釈であったからです。

一方、前出の通り、今月9日にも審議が始まると言われているカジノ法案が前提とするカジノの導入方式は、これまでの公営賭博の世界で行われてきた様々な法的検討とは全く異なり民間企業に民業としての賭博事業の実施権限を付与するものとなっています。これは、一般的に「民設民営」と呼ばれる賭博事業の導入奉仕式であり、これらを比較できる形で表にまとめるのなら、以下のようなものとなります。
 
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 2. アナタの言う「本邦初」は、「先人が誰もやらなかった」だけ
 
私自身はカジノ合法化の推進派でありながら、この点に関してだけは非常に慎重な立場を貫いているわけですが、本カジノ法案を上程したIR議連はこの「民設民営」型のカジノ導入のあり方を「本邦初の革新的な案である」として強く推奨しています。

ただ、実は我が国において「民設民営」型の賭博導入が提案されたのは、今回が初めてであはりません。実はこの種の提案は、2001年から始まった小泉政権による「聖域なき構造改革」の中でも散々論議され尽くした案件でもあります。

皆様もご存知のとおり、小泉政権は「官から民へ」を旗印として、すべての行政分野に文字通り「聖域なく」切り込んだ政権です。その象徴として最も知られているのがそれまで公共性の高い事業として維持されていた郵政の民営化ですが、それと同様の民営化に向けた政治的圧力は当時の公営競技の世界にも強力にかけられていました。

当時の小泉政権では、竹中平蔵氏が行革担当大臣となり、競馬、競輪、競艇、オートレースと、それぞれの公営賭博を所管する官庁に検討会議を設けさせ、その実施にあたって法的、制度的、そして市場競争的な観点から、実現性を検証させました。ただ、この時の検討においても、市場競争力強化のための民間ノウハウと資金力の取り込みは必要とされながらも、現在の刑法解釈の元で賭博事業を完全民営化することは難しいとの結論が出され、その結果、生まれたのが先述の「公設民営」を旨とする公営賭博制度です。2003年には最も民営化に対して柔軟な立場に居た経産省が自転車競技法を改正、それを追う形で2004年に競馬法、2007年にモーターボート競走法と小型自動車競走法の改正が行われました。

民営事業化を前提とする法改正に最も時間の掛かったモーターボート競走法と小型自動車競走法の改正が2007年ですから、多くの官僚にとっては賭博事業の民営化検討は「ついこの間、総括が終わったばかり」の案件であって、今回のIR議連による民営賭博の合法化提案は「ウソでしょ!?またやんの??」状態なのが実態。事実、私、某公営競技を掌握する部局の担当官にレクした時に「それこの前、総括が終わったばっかの案件じゃん…」とまさに直球のコメントを投げかけられたことがあります。そもそも、IR議連の推す民営賭博案には反対のスタンスの私としては、「そうですよね…心中お察しします」と、苦笑いをする以外ありませんでした。

3. そもそも「民営化でなければならない根拠」がよく判らない
 
そもそも、私としてはIR議連が主張する「我が国で新設されるカジノが民営賭博でなければならない理由」自体が、これまでの論議の中で二転三転してきていて、よく判らないのが実態です。

a) 「資金調達が出来ない」論
 
私の記憶の中で、最も古い時代に彼らが主張していたのが「公設民営では十分な資金調達ができない」というもの。公設民営、すなわち公民連携事業の一環として検討が始まった当初のカジノ合法化案は、1999年施行の旧・PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の一貫として検討が行われていたものです。当時のPFI法は先行するイギリスの制度を模倣して日本で導入したものでありましたが、非常に使い勝手が悪かったことでも有名で、特に大規模資金調達を必要とする事案において民間事業者に投資リスクを負わせる事が実質不可能であるなど、様々な不備がある制度となっていました。その結果、「公設民営ではカジノのような大規模資金の調達が出来ない」という主張が形成され始め…というのが、当時の流れだったはずです。

この主張は旧PFI法制下であった当時、何となく「モットモらしく」聴こえる論であったのは確かです。しかし時代は巡り、現在のPFI法はカジノと関係ないところですでにそれら制度的不備が指摘され、2011年に改正がされたもの。旧PFI法では難しかった大型の新規開発事案への適用も可能になっています。これらを既存の賭博統制制度にどのように適用するかという技術上の課題はあるにせよ、当時の状況とは環境が全く異なるワケで、「公設民営では資金調達が出来ない」という主張はその前提が全く崩れています。

現在、民営賭博の合法化を推奨するグループのこの視点における主張は「諸外国に公設民営のカジノは事例があまりなく、肝心要の外資オペレータにとって分かり難い。故に資金調達が難しい(と外資企業が言っている)」という何とも弱々しい主張になっています。私から言わせれば、別にPFIそのものが海外にないワケでもなく、その程度のスキームを投資家や融資先にキッチリと説明できないような外資企業さんは、むしろ日本に進出して頂かなくてよろしいんじゃないでしょうかね、といったところ。その際には国内企業中心の出資元で、事業開発を行なえば良いだけの話であって、それが「民営賭博でなければならない理由」にはなりません。

b) 「公が賭博リスクを負うべきではない」論
 
上記のような「資金調達が出来ない」論が何となく理屈が立たなくなってきた後に、民営賭博派が持ち出してきたのが「公が賭博リスクを負うべきではない」論です。

カジノで提供されるゲームというのは「バンクド・ゲーム」と呼ばれる「ゲームルールの中に胴元の取り分(控除率)が組み込まれる」形式のゲームです。この種のゲームが、競馬や競艇などを代表とする「パリミューチュアル・ゲーム」と大きく違うのは、短期的には胴元が大きくゲームで負け込み、ゲーム結果が胴元にとって赤字になるリスクを抱えているゲームであるということ。これをもって「賭博リスクを公が負うべきではない」→「ゆえに、民間賭博でなければならない」という論を展開し始めたのが、その後の彼等の主張の変遷です。

私からすれば「何だか一気に仔細な話になっちゃいましたね…」としか言いようがないのですが、彼等の主張の理屈は判ります。ただ実は、競馬や競艇が例えパリミューチュアルゲームであってゲームの結果で胴元が赤字になる事はないとはいっても、その先にある運営事業費などを差し引いた事業収益の面では、当然赤字になるリスクはある…というか、事実、これまでの公営賭博の歴史の中で競技場が「赤字続き」という状況はナンボでもあったワケで、現在の公営賭博統制方式の「公設民営」スキームの中でもその赤字リスクを民間に負わせる制度はすでに存在します。

具体的には「公-民」間で結ばれる運営委託契約の中で、事業が赤字となった場合の特約条項というものが付いていて、万が一事業が赤字になったとしても民間側は一定の金額の納付(収益)を公に対して保証するという「収益最低保証」が設定されているのです。カジノにおいても同様の条項を「公-民」間契約の中に入れ込めばよいだけの話。そもそも短期的に赤字が出ようとも、大数の定理上、中長期的には必ず胴元側にゲーム売上が残ることを知っている事業者側は、そのような条項が契約に入ることを大きなリスクとは見ません。

このような私の論に対して、民営賭博派の論者は「例えそのような特約条項があろうとも、賭博事業の主催者(施行者)が公である限りは、万が一、受託者が破産した場合にその債務を逃れ得ない」と主張するわけです。「これまた非常にレアなケースを持ち出した主張ですね…」というのが第一印象でしかないのですが、確かにそうですね。でも、これもまた既に現在の公設民営制度はすでに乗り越えているんですよね。

賭博事業が破綻した場合に、そのリスクが公会計に及ぶ可能性があるというのは既存の公営競技も全く同じ構図であって、現在の公営賭博制度はそれを乗り越えるために、賭博事業の主催者(施行者)を「公的な性質を持った主体」と限定をしているだけで、「公そのものでなければならない」とはしていないんですね。例えば、中央競馬の主催者は法律上、日本中央競馬会(JRA)と呼ばれる組織となっていますが、これは農林水産省から切り出された特殊法人であって、行政官庁たる農水省そのものではありません。まぁ、この種の特殊法人を新設するというのは何となく今の行政の風潮には合わないですし、特殊法人は会計的に必ずしも公と完全分離されていない部分がありますから、だとすれば行政府からより高い独立性を持って公的事業を行なう主体である独立行政法人を施行者にするという案もあるでしょう。事実、JRA以外の多くの公営競技に関与する団体は、独立行政法人の形式を取っています。

もっと言えば、実は現存する公営競技場の中では、公営企業(100%公が出資する企業)が事業の主催者として指定されているケース(浜名湖競艇場の「企業団モデル」)もあるワケで、実は公営賭博事業の会計を公的主体と切り分け、倒産リスクを公に及ばせない手法というのは既存の制度内に既にナンボでも存在している。民営賭博派の方々の、完全なる勉強不足であるといえます。

c) 「公設民営を地方自治体が望んでない」論
 
そして最後に、民営賭博派が最近、持ち出すようになった「民営でなければならない」論が、公営競技と同様のスキームでは地方自治体が賭博の主催者でありながら、同時に地域の行政主体としてそれらを管理する両方の立場となる。これは地方自治体にとって非常に難解な作業であり、また、それらを実質的に取りまとめられるような行政能力が自治体側にはない。それ故、公設民営スキームそのものが望まれていない(と自治体側が言っている)という主張です。

私としては、ここまで至ると何とか民営賭博案を正当化する為に必至で理由を作っているに過ぎず、もはや失笑する以外の反応は示しようがないです。今の公営競技場の殆どは「施行者が自治体、管理者も自治体、そしてその先に民間事業者に管理運営を委託しているケースもある」という形式で存在しているワケですが、もしこのようなスキームが難解すぎて各自治体が対応できないとするのならば、既存の公営競技場はどのようにして存続しているというのでしょうか?「バカも休み休み言いなさい」のレベルです。

100歩譲って「自治体にはその能力がない」としましょう。でも、それも既に現状の公営競技の制度設計は乗り越えているのが実態。それが、先述の日本中央競馬会の存在です。我が国の公営競技場において、中央競馬と呼ばれる公営競技だけは、国の特殊法人が直轄で管理している事業であり、施設が立地する自治体はあくまで「立地自治体」として周辺施策つかさどり、それらを管理する主体でしか有りません。もちろん近年は競技場そのものの新設というのはないワケですが、一方で場外馬券場の設置に関しては未だ地域主導で積極的に行なわれており、しかも現在の場外馬券場(車券場、船券場も含む)はそれこそ最も民間企業による投資開発が行なわれている公営賭博分野でもあります。

例えば、これは私がよく講演会等で使う例ですが、読売巨人軍のホームグラウンドが存在する東京ドームシティは、野球場はもとより、「格闘技の聖地」である後楽園ホール、ホテル、ショッピングセンター、飲食店、SPA、遊園地、国際会議&展示施設などが、場外馬券場と共に開発されている複合観光施設です。施設そのものの開発運営は100%民間企業、かつ東証一部上場企業である株式会社東京ドームが行なっており、同時に公との契約の元で中央競馬と東京都競馬の場外馬券場が存在しているワケで、この場外部分がカジノに置き換われば、そっくりそのまま「統合型リゾート」と呼んで差し支えない施設といえるでしょう。

即ち、現行の公営賭博の中で利用されている「公設民営」制度の元でも、カジノを含む統合型リゾートの導入は可能なのであって、わざわざそこに「民業としての賭博導入」という新しい制度の導入を行う必要はない。寧ろ、現在のような非常に未熟な検討の元で「なし崩し」的に民間賭博の合法化を行うことは、関連業界に与える影響の大きさを考えるとあまりにもリスクが大きすぎる、というのが私自身のスタンスであります。

さて、いよいよ始まりそうです。ここに来るまで一体何年の年月を無駄にし、何人の関係者達が倒れていったのでしょうか(遠い目)。以下、日経新聞より転載。


カジノ法案、今国会で審議入りへ 自民方針
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H6L_R01C16A1PP8000/

自民党は1日、カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進する法案(カジノ法案)を9日にも衆院で審議入りさせる方針を固めた。衆院内閣委員会の審議時間に余裕が生じ、慎重だった公明党も容認した。観光客誘致の起爆剤として期待するが、今国会で成立するかは不透明だ。

法案はカジノや宿泊施設などIRの整備を後押しする内容。超党派の国際観光産業振興議員連盟(IR議連)がまとめた。政府・自民党内には、2020年東京五輪や、大阪への誘致をめざす25年の国際博覧会(万博)との相乗効果を期待する声が多い。
 
 
実は「早ければ今月9日にも法案審議の開始」というメッセージは、 内々では先月の公判くらいからアナウンスメントが為されていたのですが、審議の開始にあたって最大の障害となっていた公明党のスタンスが軟化したため、何とかここに至りました。勿論、これからの法案審議が一番大変なワケですが、一先ずここまで至ったことにホッとしておる所であります。

ということで、本稿では法案審議の「先取り」と致しまして、本法案の論議ポイントを纏めてご紹介いたします。

1)カジノ合法化の目的

今回審議の対象となるIR推進法案(通称:カジノ法案)は、その第一条に我が国でカジノ合法化を目指す目的が明示されています。その内容は:

●特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものである
(※特定複合観光施設区域:カジノを含む複合観光施設の整備区域)

となっているわけですが、まずもってこの部分においてその効果の検証が必要となるでしょう。勿論、推進派は「カジノを含む複合観光施設の開発が観光振興、地域経済振興、および財政の改善に資するのだ」という前提で本法案の提案をしているわけですが、これに反対もしくは慎重の立場に居る方々の中には、この前提そのものに対して異論を唱えている方も存在します。勿論、その異論のあり方も多様であって、カジノに観光振興や経済効果はないのだとする主張、例えその効果があったとしてもそのようなモノに頼るべきではないという主張まで、恐らく多種多様な異論反論が交わされるものと思われます。

勿論、この法律の推進派はこれら各種異論・反論に対する論理的な回答を用意しておかなければなりません。

2)カジノの負の影響対策

一方、今回のカジノ合法化の検討に合わせて、必ず行わなければならないのがカジノ導入によって予想される様々な社会に与える負の影響対策であります。その内容は大きく、1)依存症問題、2)治安維持、3)青少年教育への影響、に峻別されるわけですが、今回のカジノ合法化に合わせてどのようにその対策を講ずるのかという手法論に対する論議および、その効果に関する検証も必要でしょう。

また、推進派の立場としては、反対派がことさらに主張する「賭博=害悪」論の中には、あまりにも実情を歪曲させ、誇張をしすぎた印象論に基づくものもあるという主張もあります。この辺りは、推進派が「事実」をデータ等に基づいて説明して行くことも必要であるものと思われます。

3)カジノ合法化の手法論

そして、最後に焦点になるのがカジノ合法化の賛否とは別に存在する、その合法化の「手法論」に関してです。特に本法案において法律的に最大の論議焦点となるのが、我が国において初めて「民営賭博を初めて合法化する」という今回のカジノ法案の建て付けであります。

皆様もご承知の通り、刑法185条において原則的に賭博を禁止する我が国においては、「賭博」は公の独占業務としてのみ認められ、一方で民間が提供するものは賭博未満に射幸性を抑えた「遊技」でなければならないというのがこれまでの賭博行政の在り方でありました。

一方、実は本カジノ法案は、その第二条において

●この法律において「特定複合観光施設」とは[…]民間事業者が設置及び運営をするものをいう。

という記述がなされており、これは民間事業者に直接賭博施設の運営権を付与する民営賭博の合法化を意味しているのだとの説明が行われています。即ち、今回のカジノ法案は、ただ単純に「我が国でカジノを認めるべきかどうか」の論議を超え、「我が国で民間企業が賭博事業を行って良いのかどうか」という非常に原理的な賭博統制論にまで論議が及ばざるを得ない法案となっているということ。

例えば私自身はカジノ合法化の推進論者でありながら、一方で民営企業に直接その権利を付与する事に対しては慎重を喫するべきだという立場をとる論者であり、この点は単純なカジノ合法化に対する賛否を超えた論点となるのは間違いないでしょう。

ということで、早ければ今月9日にも始まるとされているカジノ法案審議、その舞台となる衆院内閣委員会の動向に是非ご注目頂ければ幸いです。

世界のeスポーツ業界に衝撃が走っております。以下、「やじうまPC Watch」からの転載。


ワシントン賭博委員会がSteamのValveにCS: GO賭博利用の停止命令
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1023686.html

米ワシントン州賭博委員会は5日(現地時間)、PCゲームのダウンロード販売サイト「Steam」を運営している米Valveに対し、Steamプラットフォーム上で行なわれている武器スキンを使った賭博利用に対して、即座に停止するように警告を発した。

これは最近社会問題化しているオンライン対戦型FPS「Counter-Strike: Global Offensive(CS: GO)」を利用した賭博行為に対するもの。同ゲームでは対戦後や“ガチャ”といった課金行為によって武器のテクスチャを変更する「スキン」を入手できるが、スキンはSteam上のコミュニティマーケットでSteamウォレットを使って売買可能となっている。問題はこうしたスキンのやり取りが、ボットを使った自動取引で外部の賭博サイト上で使われてしまい、ユーザーがギャンブルによって多額の金銭を失ってしまうという問題が多発していること。
 

いわゆる「スキン賭博」もしくは「アイテム賭博」と呼称される行為でありますが、今年4月にbloombergが大きく報じたことで世界中で論議が始まり、私自身も同様のニュースを報じたBS NHKの報道番組に解説者として借り出されるなど、日本においても微妙に話題になっておりました。


【参考】
Bloomberg: VIRTUAL WEAPONS ARE TURNING TEEN GAMERS INTO SERIOUS GAMBLERS

NHK BS1:未成年をむしばむ“オンラインゲーム賭博”

対象となっているゲームは、オンライン対戦型FPSの「カウンターストライク:グローバルオンライン」(以下、CSGO)というタイトルでありますが、CSGOは世界のeスポーツの中で現在、最も人気のあるタイトルのひとつであります。一方で、このゲームが世界的に広くプレイ人口を抱えている理由の一つがここで報じられたアイテム賭博であり、そこに行政指導が入り、当局はその先の法的制裁を辞さない構えとの事ですから騒ぎにならないワケがありません。

…と、このように世界的に見ても未だ様々な法的論争が続くeスポーツ業界でありますが、何故かその世界の潮流から遅れて始まったばかりの日本のeスポーツ業界では、「(eスポーツ法制における)実務上の論点は整理されつつあり、法規制の大きなハードルはない」などとする謎言説が登場し、私自身、非常に戸惑っておるところです。以下、先日行われたeスポーツに関連するシンポジウムの内容を報じたアドタイの記事より転載。


あなたは世界が熱狂する「eスポーツ」のポテンシャルを知っているか?

筧:
法律の観点から、eスポーツ普及の阻害要因になっていることはありますか

藥師神:
まず一つ目は刑法の「賭博(とばく)罪」です。参加者から徴収した参加費が賞金の原資となると、賭博罪に当たる可能性があります。二つ目は、「風営法」です。例えば、風営法が適用される事業者であるゲームセンターが大会を開く場合、ゲームセンターが賞金などの「賞品」を出すことは明確に禁止されています。

そして三つ目は「景品表示法」です。例えば、ゲーム会社が、賞金付きゲーム大会を開くに当たり、ゲームの購入者のみに参加資格を与えるような場合には、賞金でゲームの購入を誘引する形になり得ますので、景表法に抵触する可能性があります。最後の四つ目が「著作権法」です。賞金付きの大会に限りませんが、ゲーム会社からライセンスを受けずに勝手に営利目的でゲーム大会を開くと、著作権侵害になり得ます。ゲーム大会を開く場合には、使用するタイトルを保有するゲーム会社と連携することが求められます。[…]

実際、実務上の論点は整理されつつあり、日本でもたくさんの大会が実現しています。運営資金や賞金をどう集めるかについてのビジネス上の問題は残りますが、法規制の大きなハードルはありません。
 

発言主は藥師神豪祐さんという弁護士さんですが、例えば薬師寺弁護士は「ゲーム会社が賞金付きゲーム大会を開くに当たり、ゲームの購入者のみに参加資格を与えるような場合には景表法に抵触する可能性がある」との解説を行っております。しかし先月、私が消費者庁に対して行ったばかりの法令適用の確認では薬師寺弁護士が説明するケース以外でも賞金制大会に様々な形で景表法が適用されることが確認されております。

また、その他にも現在日本で実施されている多くの賞金制eスポーツ大会が採用している「中間法人を立てることで、便宜上、消費者に対する直接の利益供与を回避する」という手法では、実は景表法の適用を免れ得ない可能性が限りなく高いことが確認されているところ。これら事実に関しては私自身が今回、消費者庁に直接コンタクトを取り法令適用確認を行うまでは、明確にされていなかった法令判断です。(詳細はリンク先参照

薬師寺弁護士はこれらをどのように整理をしてきたつもりなのかは全く存じませんが、実際のところ、これまで「安全だ」と謳われて開催されてきたeスポーツ大会であっても、実は主催がその法的リスクを認知せずに開催してきただけのものが山ほど存在しているわけで、そのような現状の中で幾らeスポーツ振興を謳ったシンポジウム内での言説であるとはいえ「法規制の大きなハードルはない」と大見得を切ってしまうのは、判ってやっているのなら非常に不誠実、判らずにやっているのなら非常に不見識であるとしか言いようがありません。

実はこの辺は他人事ではなく、私の属するカジノ関連の業種においても、私が見聞きしている限り、どう見ても「見切り発車」しているとしか思えないスキームの中で賞金制ポーカー大会を実施する主体などが現れ始めており、個人的には相当ヤバイ状況だなと思っておるところです。

いずれにせよ、ここを専門に研究している人間の立場からいえば、賞金制大会の実施というのは皆さんが考えているほど簡単なものではないので、現在のところまでで確実に法令上OKである事が確認されている将棋やゴルフの賞金制大会と同様のスキーム以外の形で実施を行うのは非常にリスクが高いです。本件に関しては、私自身も引き続き法令上の論点整理を精力的に行ってゆきたいと思っておるところであります。

何やらドえらい事が起ころうとしているようです。昨日twitter側で、あるフォロアーさんから「内閣府消費者委員会がスマホゲームに対する意見書を出すようなのでコメント下さい」というご要望を頂いたんですね。当然、見に行くわけじゃないですか。そうしたら、消費者委員会からこんな文書が開示されているワケですよ。


スマホゲームに関する消費者問題についての意見
~注視すべき観点(案)~

前段の「相談件数が増えてる/減ってる」という話に関しては、メディアが問題を大きく取り上げれば相談件数は大きく増えたり、それが下火になれば減ったりするもの。正直、被害の多寡とその害悪性を正確に現しているものとは思ってないので個人的には話半分程度にしか読まないわけですが(これは警察庁の通報件数も同じ)、注目すべきはその後に消費者委員会が示している「今後注視すべき視点」の部分であるわけです。

例えば「アイテム等の出現率やアイテム等を取得するまでの推定金額については、利用者に適切に情報提供されることが望ましい」という提案を含む「利用環境の整備」に関連する項目は、ゲーム業界を纏める業界団体であるCESAやJOGAに対する自主規制の徹底を求めているものとして読み取れます。また、風営法との兼ね合いに関しては「スマホゲームについては上記営業に該当するぱちんこ等とは異なって、物理的設備を設けて行われるものではないことから、現行の風営法の規制の対象とはならない」と現行法制に沿った原則的な解説をしつつも、「現時点においては、スマホゲーム利用による上記法の目的にあるような悪影響が顕著ではないところであり」という修飾をそこに付すことによって、「今は規制外だが将来的には判らんぞ」という牽制を業界に対して行っている様が見て取れるわけです。

消費者委員会としてはこういう意見書を出すことによって、業界に対して「これ以上踏み込むな」という一定のラインを示しながら、「当面は静観しますよ」というメッセージを送っているワケで、業界にとっても非常に意義ある意見書であると思うのですが、私として一見してギョッとした記載が以下の部分であります。


(電子くじの賭博罪該当可能性)
以上を踏まえると、一般論として、スマホゲームで見られる電子くじは、専らゲームのプログラムによって排出されるアイテム等が決定されることからすれば、上記「賭博」にいう「偶然性」の要因を満たしていると考えられる。また、上記「財産上の利益」の解釈に加え、有償で入手したオンラインゲーム内のアイテムを詐取した事案につき詐欺罪の成立を認めた下級審判決18があることなどからすれば、アイテム等については「財産上の利益」に当たる場合もあり得るところである。
 
実際に電子くじが賭博罪に該当するか否かについては、上記「財産上の利益」該当性に加え、「一時の娯楽に供する物」該当性等も含め、事案ごとに判断されるものである。電子くじで得られたアイテム等を換金するシステムを事業者が提供しているような場合や利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合は、「財産上の利益」に該当する可能性があり、ひいては賭博罪に該当する可能性が高くなると考えられる。
 
スマホゲームに関わる事業者は、アイテム等の転売等の換金を規約等において禁止しているものも見られるが、引き続き、事業者、消費者ともにこうした観点を踏まえて行動することが望ましい。
 

この辺の表現は、ガチャと並んで業界内で問題視されているアイテムの現金売買(RMT)行為を念頭において記載されているもの。具体的には、今年冒頭にグランブルーファンタジーと並んでソシャゲ業界大炎上のキッカケの一つとなったDonuts社の公式RMTアプリのリリースを受けたものだと思われます。Donuts社の当該アプリに関しては私自身が年初に書いたコラムがYahoo!ニュースに掲載された事が炎上のキッカケになった事もあり、何やら「戦犯」的な扱いを受けている部分もあるのですが、ニュースで大きく報じられたことでDonuts社は当該サービス自体をすぐに停止するという対処を行うことで事なきを得ました。

消費者委員会としては、この種のソシャゲ業者によるRMT公認の方向性に対して、上記文言によって「オマエラ判ってんだろうな」と睨みを効かせようとしているワケです。

と、ここまでのソシャゲ業界に対する各種牽制は良しとして、上記、賭博罪に触れた消費者委員会の意見は別のところに甚大な影響を与えそうな様相でありまして…。その対象となるのが、本エントリの表題でも記載したパチンコ業界であります。今回、消費者委員会は電子くじによって獲得されたアイテムの換金に対して以下のような解説を付しています。


電子くじで得られたアイテム等を換金するシステムを事業者が提供しているような場合や利用者が換金を目的としてゲームを利用する場合は、「財産上の利益」に該当する可能性があり、ひいては賭博罪に該当する可能性が高くなる
 

パチンコ業界では、消費者がゲームの結果に基づいて獲得した景品を別所で売却することで、消費者がそれらを疑似的に「換金」する、いわゆる「三店方式」と呼ばれる景品流通システムが「公然の秘密」として存在しています。この三店方式、一般的には「警察が業界との癒着の中で黙認している」などという表現をなされる事が多いのですが、実際はそれを規制する枠組みと法令解釈というのが存在しております。

例えば、以前、私自身がエントリの中でご紹介したことがある昨年6月に提出された小見山幸治議員(民主党[当時])によるパチンコ三店方式の合法性に関する質問主意書に対して、政府は「内閣総理大臣 安倍晋三」名で以下のように答えています。


ぱちんこ屋の営業者以外の第三者が、ぱちんこ屋の営業者がその営業に関し客に提供した賞品を買い取ることは、直ちに風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二十三条第一項第二号違反となるものではないと考えられる。もっとも、当該第三者が当該営業者と実質的に同一であると認められる場合には、同号違反となることがあると考えられる。
(出所:答弁書第一五二号内閣参質 一八九第一五二号)
 

即ち、少なくとも政府が示している風営法上の法令解釈においては、賞品買取りをする事業者の「第三者性」が担保されている状態であればそれは違法とはならず、逆にそこに第三者性が存在しない場合には違法になることがある。これが少なくともパチンコ業界において、これまで存在してきた三店方式の基本的な法令解釈であり、パチンコ業界における景品買取はこの法令解釈を元にシステム構築が為されてきたものであります。

一方、これは上記の質問主意書をご紹介した当時のエントリ内でも言及したことですが、実はこの政府答弁は小見山議員の問うた「三店方式の合法性」に関して、風営法の法令解釈の立場からしかその合法性に関して言及をしていません。即ち、三店方式の合法性を問うにあたってもう一方で懸念される、刑法第185条に定められる賭博罪との兼ね合いに関して言及を避けているというのが実態でありました。(詳細解説はリンク先を参照

ところが今回、消費者委員会から発されている意見書では、あくまでソシャゲ業界のRMTを前提としながらも、政府が答弁を避けた刑法上の法令解釈に踏み込んでいるわけです。

消費者委員会は、本文書において「賭博罪に該当するか否かについては、事案ごとに判断される」と断わりを入れながらも、刑法上の適法性判断は「事業者自身が換金システムを提供しているかどうか」という風営法上の解釈でも見られる「買取り事業者の第三者性」のみならず、「利用者が換金を目的としてゲームを利用しているかどうか」というプレイヤー側の利用目的も問われ、その内容次第では「賭博罪に該当する可能性が高くなる」とまで意見しているわけです。

繰り返しになりますが、上記はあくまで消費者委員会が「事案ごとに判断される」との断りを入れた上で、ソシャゲアイテムのRMT行為に関しての刑法上の法令解釈に意見したものでありますが、状態としては「ソシャゲ業界を牽制するために威嚇射撃をしかけた弾が、関係のないお隣の業界の脳天を撃ち抜いている」という状態になっており、私としてはワクワクドキドキが止まらないわけであります。

本文書は未だ消費者委員会からの(案)として示されているものであり、正式な行政文書として発布されているものではありませんが、これがこのまま正式な意見書として採択されるのかどうか。息を呑みながら見守りたいと思います。

さて、先のエントリ、そしてその前のエントリと私がここ数か月に亘りeスポーツの賞金制大会を巡って消費者庁とやり取りを行った法令適用の確認手続きのやり取りをそのままご紹介しました。本日は、その総括をしたいと思います。未だ、過去エントリを読んでいない方は以下のリンク先から。


 【参照】賞金制大会を巡る法的論争、消費者庁からの公式回答アリ(その1)(その2) 


1. 参加料積み上げ型

世界のeスポーツ大会ではEvolutionなどのように、大会参加者の参加料を積み上げ、それを原資としながら賞金を提供する形式の大会があります。 しかし、この種の賞金制大会は少なくとも我が国においては刑法賭博罪に抵触する違法な行為となります。

我が国において参加者の参加料を積み上げて成績優秀者になんらかの「褒賞」を提供する場合には、刑法185条の例外規定として定められている「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」に当てはまるもの、すなわち現在の法的解釈に基づけば1万円以内程度の日用品に留めておく必要があります。現金を褒賞として提供する事は、1円からでも「違法」となります。

2. 第三者によるスポンサー制賞金大会

参加者、および当該イベントと完全に利害関係のない「完全なる第三者」が協賛する形で賞金を拠出する形式においては、大会賞金を現金で提供する事が可能であり、またその上限金額もありません。また、実はこういう形式の賞金制大会においても、その参加料が大会の運営費を充足する為に使われる(=賞金に積み上げられることがない)限りにおいては、大会参加者から参加料を取ることも可能。

実はゴルフの賞金制大会などは、スポンサー企業が成績優秀者に賞金を出しながら、一方で大会そのものの参加料として数万円程度を参加者から徴取し、それで運営費を賄うという方式が採られていたりします。当然ながら、こういう形式の大会はeスポーツにおいても実施可能です。

(※ちなみに上記2点は消費者庁の所管する景表法の規制範囲外にあるものですので、あくまでカジノ研究者としての私自身の法令解釈として読んでください。)

3. ゲームメーカー自身が賞金を拠出する大会

そして、本項目が先のエントリ、その前のエントリで私自身が消費者庁に対して法令適用の有無を確認した内容です。ゲームメーカー自身が賞金を拠出する場合、そのゲームの性質、もしくはその課金スタイルによって以下の2つにケースが判れるようです。

1)有料プレイヤーが大会において有利になると考えられるゲーム

大会で賞金を獲得するにあたって、有料プレイヤーの方がその他のプレイヤーと比べて有利になってしまう形式のゲームに関しては、その賞金の提供が「商品取引に付随する経済的価値の提供」にあたると判断され、景品表示法の規制対象となります。この場合に設定可能となる賞金は「元商品の取引価額の20倍の金額、もしくは当該金額が10万円を超える場合には10万円」が賞金の上限価格となります。

ここでいう「有料プレイヤーが有利になる」の意は:
ゲーム技術の熟達のためには繰り返しのゲームプレイが必要であり、その前提としてゲームソフトの購買(家庭用ゲームなどの場合)、もしくは繰り返しの都度払い課金(アーケードゲーム機などの場合)が必要となるゲームの他、スマホや一部PCゲームに採用される基本プレイ無料(free to play)型のゲームにあたっては課金者が無課金者と比べて競争上有利になる(pay to win)タイプのゲームなどが含まれるようです。

ちなみに、アーケードゲームに関してはプレイヤーがゲーム料金を支払っている先はあくまでゲームセンターであり、大会賞金を提供しているゲームメーカーとは異なる主体であるという抗弁も成り立つのではないかという意見もありますが、景表法の運用の中では

「自己の供給する商品又は役務の取引」には、事業者が製造し、または販売する商品についての最終需要者に至るまでの全ての流通段階における取引が含まれる(出所:消費者庁「景品類等の指定の告示の運用基準について」3(1))

という規定があり、少なくとも現時点においては消費者庁からはアーケードゲームとその他のゲームの取り扱いを法的に区分するような判断は出ていません。

2)有料プレイヤーが大会において必ずしも有利にならないゲーム

一方、スマホや一部PCゲームに採用される基本プレイ無料(free to play)型のゲームの中には、ゲームへの課金がプレイヤーによる競争上の有利/不利を生まないタイプのゲームも存在します。その代表格がゲーム内のスキン販売等で課金をするタイプのゲームですが、この種のゲーム大会に対するメーカーの賞金拠出は景品表示法の規制対象にはならず賞金上限が無制限となるようです。またいわゆる「スタミナ制」の採用で一定以上のボリュームのゲームプレイに課金がなされる場合であっても、大会ルール上、過去の課金状況が競争上の優劣に反映されないと判断されるゲーム形式の場合には、同様のルールが適用されるとのことです。

番外編:間に中間業者を立てた賞金拠出

ちなみに現在、行われている一部の賞金制ゲーム大会においては、賞金および大会実施を取り纏める中間組織を間に立ててゲーム大会を実施し、成績優秀者に対して賞金を提供する形式の大会が執り行われています。この点に関して、今回の消費者庁との遣り取りの中では残念ながら直接的な法令適用の有無の判断は出されていません。

一方、実は弊社が行っている上記とは別事案における法令適用判断の確認においては、中間的なサービス業者を立てた場合においても、提携元の事業者と一般消費者の「関係性において」商品取引に付随した経済的利益の提供がなされていると判断される時には、その行為が景品表示法の規制範疇に入る場合がある、との判断が出ている事案も存在します。この場合には、中間に居るサービス業者そのものには法的リスクは及ばないものの、その提携元となる事業者にはリスクが及んでしまう可能性があるようですので、その点に関しては注意が必要であろうと思われます。

また、ここで行った一連の法的検討はあくまで私と消費者庁の間で行った個別、具体的な事業計画に対する法令適用の有無に対して、私自身が一般論としての法的解釈を加えたものです。消費者庁自身はその判断にあたって、


本回答は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134条。以下「景品表示法」といいます。)第4条の規定を所管する立場から、照会者から提示された事実のみを前提に、景品表示法第4条の規定との関係のみについて、現時点における見解を示すものであり、もとより、捜査機関の判断や罰則の適用を含めた司法判断を拘束するものではないことを付記します。 
 

としていることをご理解頂ければ幸い。また、本検討においてはゲーム大会への賞金拠出に限った法的検討を行いましたが、この他にも景表法上は大会会場内でその他の商業行為が行われているかどうか、その主体は誰か、はたまた大会告知の手法や参加要件など、様々な置かれている環境によって法令適用の有無の違いが生じてきます。さらに言えば、この種の大会の開催は景表法のみならず、風営法などその他の法律との兼ね合いも出て来るものでありますので、実際の大会実施にあたっては必ずそれぞれの分野の所管当局に直接相談を行って頂くようよろしくお願いいたします。

さて、先のエントリの続きです。先にご紹介した法令確認と並行して、実はもう一つ賞金制大会に関する確認手続きを消費者庁に向けて行っています。ということで、前回エントリに倣ってまずは私見を全く挟まない、弊社と消費者庁の答申のやり取りをご紹介します。

まずは私側の照会内容:


消費者庁における法令適用事前確認手続に関する細則の規定に基づき、下記のとおり照会します。

実現しようとする自己の事業活動に係る具体的な行為
 
・ 当社(株式会社国際カジノ研究所)は、カジノ、および宿泊、飲食、ショッピングセンター、その他各種アミューズメント施設に関する調査、およびコンサルティング事業等を業務としている。

・ 当社は、オンライン上において対戦型のパズルゲームを一般消費者に供給する事業を営む具体的な予定があるところ、当該パズルゲームの認知普及のためのプロモーションの一環として、当該パズルゲームの提供期間中に、当該パズルゲームを利用した賞金制大会を開催し、その大会における成績優秀者に対して賞金を提供するという企画を考えている。当社は、この大会の主催者あるいは協賛者という立場で参加することを予定しているが、いずれの立場であっても、大会における「成績優秀者」に対する賞金については当社が準備する。賞金の原資は、当該パズルゲームにおける有料コンテンツの売上の20%とする予定である。

・ この大会に参加を希望する者から参加料や入場料を徴収することはない。

・ 大会は、有料コンテンツで遊戯したことがあるユーザー(有料ユーザー)や無料でのみ遊戯しているユーザー(無料ユーザー)のほか、そもそも遊戯したことがない者であっても、オンライン上の特設サイト(パズルゲームのサイトとは別の誰でもアクセスすることが可能なサイト)にあるフォームから出場登録を行った後、メールにて受け取った出場証を大会当日の会場にて提示すれば参加することができる(なお、それ以外の方法で参加することはできず、仮に応募多数となった場合は先着順とする予定である。)。
 
・ 大会当日は、大会の参加者からは参加料や入場料を徴収しないが、その大会を観戦するために集まった観衆から入場料として1000円を徴収する予定である。
 
・ 大会は、上記特設サイトのほか、主にネットメディアもしくは関連する紙メディアを用いて、広く告知することを予定している。

・ この大会で使用するパズルゲームは、スマートフォンやパソコン上にて遊戯することができるものであり、スマートフォン等に当該ゲームのアプリケーションをインストールするのは無料である。また、このパズルゲームは、一定時間内に無料でプレイすることができるゲーム回数に制限があるが、有料で提供することを予定しているコンテンツ(アイテム)を購入することにより、その制限を越えた回数のゲームを行うことができる(いわゆる「スタミナ制」)。このほか、有料で提供することを予定しているコンテンツは、パズルゲーム内で使用するキャラクター等の見た目を変えるためのスキン(いわゆる「着せ替え機能」)がある。それ以外に有料で提供する予定のコンテンツはない。大会の中では、参加者は有料で提供されるコンテンツを利用することはできるが、ゲームの勝敗に影響を与えない。
 
・ 大会は、参加者1対1の個人戦又は団体戦において対戦型のパズルゲームを行い、先にゲームオーバーとなった方が敗者となり、対戦した相手方よりも長くゲームを続けられた方が勝者となる。また、対戦形式は、トーナメント制であり、上位まで勝ち抜いた参加者が成績優秀者となる。
 
・ 大会では、参加者のゲームに対する熟達度によりゲームの勝敗が決し、それにより成績優秀者が決まることとなる。大会当日の会場にて成績優秀者の発表を行うが、表彰は安全上の配慮により賞金額を記入したパネルを手渡すのみであり、賞金額は、後日、成績優秀者の銀行口座に振り込むことを予定している。
 
・ 大会で参加者が使用する機器は、主催者側で準備する予定である。
 
・ 大会前に自ら有していたキャラクターを用いて参加することもできる。しかし、有料で提供されているコンテンツは、上記に記載したとおりのもの(スタミナ制、着せ替え機能)しかないため、大会上、有料ユーザーが有利になるということはなく、無料ユーザーであっても、プレイ歴の長い者や、プレイ暦が短くても適時ゲームを繰り返しプレイしているといったような者であれば、「成績優秀者」として賞金を獲得する可能性は十分にある。
 
・ 大会の会場は、決定したものはないが、自社とは関係ない第三者が運営する施設(ライブハウスやイベントホールなど)を利用する予定である。会場において、主催者、協賛者等が具体的な商品又は役務の販売、勧誘行為を行うことはないが、当該施設においては、飲食物が販売されている場合があるところ、その売上はあくまでも第三者に帰属し、主催者、協賛者等(当社含む。)には一切入らない。
 


次に上記確認手続きに対する消費者庁表示対策課による回答:


1. 照会のあった具体的事実については、紹介者から提示された事実関係を前提とすれば、景品表示法第4条の規定の適用対象とならないと考えられる。

2. 当該事実が照会対象法令の適用対象とならないことに関する見解及び根拠
(1)景品類とは、「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年6月30日区政取引委員会告示第3号。以下「指定告示」という。)第1項に規定されているとおり、「顧客を誘引する為の手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する賞品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益」をいう。

 (2)紹介者が実施を予定している、オンライン上における対戦型のパズルゲームを利用した賞金制大会(以下「本件企画」という。)に関しては、以下のとおり、

○本件企画の告知は、当該パズルゲームの有料ユーザーに限らず、どのような一般消費者であっても無料で見る事ができるオンライン上の特設サイトで行われるものであること
○本件企画に応募する者は、上記特設サイト上のフォームから登録を行い、その後、メールで送付される出場証を本件企画の実施会場で提示することのみで参加することができるものであること
○本件企画の当日、会場にて成績優秀者の発表が行われるところ、当該成績優秀者に対して提供される賞金は、銀行振り込みの方法によるものであること
○本件企画の実施会場において、主催者・ 協賛社(照会者を含む。)が供給する商品又は役務についての販売行為や勧誘行為が行われることは一切なく、第三者が飲食物を販売することがあったとしても、その売上が主催者・協賛社(照会者を含む。)に帰属することはないこと

から、これら点によれば、成績優秀者に対しても提供される賞金は、指定告示第1項に定める「取引に付随」して提供されるものに当たらないと考えられる。

また、「景品類等の指定の告示の運用基準について」(昭和52年4月1日事務局長通達第7号)によれば、「商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合」(4(2)イ)には、経済上の利益の提供は「取引に付随」する提供に当たることとなるが、この点についても照会者によれば

○本件企画において、有料ユーザーが有利になるということはない

とのことであり、本件企画が実施された結果、実際に有料ユーザーが賞金の提供を受けることが可能又は容易とはなっていないという状況が認められる場合には、指定告示第1項に定める「取引に付随」して提供されるものには当らないと考えられる。

(3)以上、本件企画において成績優秀者に対して提供される賞金は、指定告示第1項に定める「取引に付随」して提供される経済上の利益には当らないことから、景品表示法第2条第3項に規定する「景品類」に該当しないため、本件企画は、景品表示法第4条の規定に抵触することはないと考えられる。
 

 一つ目にご紹介した法令適用確認の事例は「ある意味、法令を正しく読めばおそらくダメだろうな」と思われるものをダメ元で再確認するというものでありましたが、今回ご紹介した事例は私が関連法令を精査した上で「現行法規上、適法(=景表法の規制外)となるであろう」と思われるギリギリのラインで法令適用の有無の確認を行ったもの。結果、消費者庁の公式見解として「本件企画が実施された結果、実際に有料ユーザーが賞金の提供を受けることが可能又は容易とはなっていないという状況が認められる場合」という要件付きで、景表法の規定に抵触しない(即ち、賞金上限はない)という判断がなされました。

ちなみに、上記確認では第三者が主体となってゲーム大会を閲覧させ、そこから入場料を得る、およびその場で飲食物等の販売を行うことについても景表法上は問題にならないという見解が出ていますが、一方でこのような業態(即ち「eスポーツバー」)は景表法以外の法律(風営法)に抵触する可能性もあるため、こちら側でも法令適用の確認が必要となります。

上記消費者庁の見解および前回エントリでご紹介した見解ともに:


なお、本回答は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134条。以下「景品表示法」といいます。)第4条の規定を所管する立場から、照会者から提示された事実のみを前提に、景品表示法第4条の規定との関係のみについて、現時点における見解を示すものであり、もとより、捜査機関の判断や罰則の適用を含めた司法判断を拘束するものではないことを付記します。 
 

という注記が為されていますので、その点はご注意ください。 

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