さて、政府から示されたIR実施法案が与党内のプロジェクトチームにて審議され始めております。以下、関連する記事を2つ紹介。
税率30%という比率の論議は別として、政府が急に持ち出してきたのが3000億円を閾値とするこの累進課税案。カジノ売上が3000億円を超えると1000億円のレイヤーごとに10%ずつ税率が上がるという案であります。詳しくはシミュレーションをしてみなければいけませんが、この税制案に関して第一印象として申し上げますと、この様な税率設定をしますと原則的に日本の統合型リゾート開発、特に大都市圏における開発において超大型といえるような設備投資はなされなくなるのはほぼ確実かと思われます。
皆さんもご承知のとおり、統合型リゾートというのは収益エンジンたるカジノ部門の事業収益によって、他の必ずしも収益性が高いとはいえない部門を補いながら全体で利益を上げてゆく事業体です。即ち、カジノ部門で高い収益性を上げられる事業者は、その分だけ他の部門に対して設備投資を行う「余力」が出てくるわけで、その分だけ思い切った投資計画をたてることが可能になる。実は、これまでのカジノライセンスを巡る競争は、そういう構図の競争でありました。
ところが、今回政府はカジノ売上が3000億円を超えると1000億円のレイヤーごとに10%ずつ税率が上がるという累進課税案を示しています。この税制案の元では、カジノ部門側でどんなに大きく売上をあげる能力のある企業であったとしても、どの事業者も等しく3000億円を境にして収益性が激減します。即ち、全ての業者は似たり寄ったりの収益しかカジノ部門から期待が出来なくなるという事ですから、全体の投資規模も自ずと似たり寄ったりのものとなってしまうわけです。これから先の日本の特に大都市圏におけるカジノライセンスを巡る競争は、ほぼ決まったレンジの間でしか期待できないカジノ部門収益を前提としながら、どこまで各企業が全体の収益性を下げる投資を頑張れるかという、一種の「我慢比べ」のような競争に変質してゆくことになると思われます。
そして、この様な制度案に合わせて提案されることとなった、もう一つの「笑える」制度案が統合型リゾート内に設置されるカジノ施設面積をシンガポールに倣って1万5千平米を上限とするという面積規制です。役所側は、この規制の必要性について以下のような説明を行っています。
お役所の方々には投資回収という観点がないからこういうトンチンカンな発想が出てくるのかもしれませんが、そもそも必ず回収を行わなければならない施設開発投資において「無制限に」ゲーミング区域(=カジノ施設規模)が拡大するなんてことは起こりえないですから(笑 ましてや先述のように、もし累進のカジノ税制を採用するのであれば、なおさら事業者にとってはカジノ施設を大きく作る意味がないワケで、この二つの制度案が並んで出てきた時点で私としては「失笑」してしまった事をご報告申し上げたいと思います。
● カジノ税、収入の3割=3000億円超に累進課税-国と地方で折半・政府案
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018021900861&g=eco
政府は19日、統合型リゾート(IR)の中核となるカジノの運営事業者に対して課す納付金(カジノ税)を、関連収入の30%程度とする方向で検討に入った。[…]
カジノの収入が3000億円を超える場合、超過分により大きな負担を課す累進課税の仕組みも導入する。具体的には3000億円超~4000億円は40%程度、4000億円超~5000億円は50%程度とする案が浮上している。
●日本人の入場、週3回まで=面積にも上限-カジノ規制
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018021500563
日本人らの入場回数を週3回、月10回までに制限する。シンガポールの事例を参考に、最大面積を1万5000平方メートルとする規制も設ける。
税率30%という比率の論議は別として、政府が急に持ち出してきたのが3000億円を閾値とするこの累進課税案。カジノ売上が3000億円を超えると1000億円のレイヤーごとに10%ずつ税率が上がるという案であります。詳しくはシミュレーションをしてみなければいけませんが、この税制案に関して第一印象として申し上げますと、この様な税率設定をしますと原則的に日本の統合型リゾート開発、特に大都市圏における開発において超大型といえるような設備投資はなされなくなるのはほぼ確実かと思われます。
皆さんもご承知のとおり、統合型リゾートというのは収益エンジンたるカジノ部門の事業収益によって、他の必ずしも収益性が高いとはいえない部門を補いながら全体で利益を上げてゆく事業体です。即ち、カジノ部門で高い収益性を上げられる事業者は、その分だけ他の部門に対して設備投資を行う「余力」が出てくるわけで、その分だけ思い切った投資計画をたてることが可能になる。実は、これまでのカジノライセンスを巡る競争は、そういう構図の競争でありました。
ところが、今回政府はカジノ売上が3000億円を超えると1000億円のレイヤーごとに10%ずつ税率が上がるという累進課税案を示しています。この税制案の元では、カジノ部門側でどんなに大きく売上をあげる能力のある企業であったとしても、どの事業者も等しく3000億円を境にして収益性が激減します。即ち、全ての業者は似たり寄ったりの収益しかカジノ部門から期待が出来なくなるという事ですから、全体の投資規模も自ずと似たり寄ったりのものとなってしまうわけです。これから先の日本の特に大都市圏におけるカジノライセンスを巡る競争は、ほぼ決まったレンジの間でしか期待できないカジノ部門収益を前提としながら、どこまで各企業が全体の収益性を下げる投資を頑張れるかという、一種の「我慢比べ」のような競争に変質してゆくことになると思われます。
そして、この様な制度案に合わせて提案されることとなった、もう一つの「笑える」制度案が統合型リゾート内に設置されるカジノ施設面積をシンガポールに倣って1万5千平米を上限とするという面積規制です。役所側は、この規制の必要性について以下のような説明を行っています。
IR施設の述べ床面積やIR区域の面積の拡大に伴いゲーミング区域が無制限に拡大することは適切ではないことから、ゲーミング区域の面積の上限について絶対値を設けることは必要(絶対値規制)。
お役所の方々には投資回収という観点がないからこういうトンチンカンな発想が出てくるのかもしれませんが、そもそも必ず回収を行わなければならない施設開発投資において「無制限に」ゲーミング区域(=カジノ施設規模)が拡大するなんてことは起こりえないですから(笑 ましてや先述のように、もし累進のカジノ税制を採用するのであれば、なおさら事業者にとってはカジノ施設を大きく作る意味がないワケで、この二つの制度案が並んで出てきた時点で私としては「失笑」してしまった事をご報告申し上げたいと思います。