さて、参院選も公示され、各政党の掲げる公約も明らかになりました。本日は、各政党が掲げる公約のうち、私の専門分野にかかる観光政策に関して比較分析を行ってみたいと思います。

という事で、まずは与党サイドから。

【自由民主党】
公約:https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/manifest/2016sanin2016-06-22.pdf
詳細政策集:https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/pamphlet/sen_san24_j-file_0620.pdf

現与党にとってここ数年の観光産業は、あらゆる産業の中でもっとも具体的な政策成果を残した産業のひとつであり、本選挙戦においてもその実績と共にその後の政策が沢山アピールされている分野であります。 その事もあってか、自民党が本選挙に掲げる公約の中では観光政策に関して以下のような記述があり、安倍政権にとって引き続き「観光立国の実現」というのが大きな政策目標となっていることが読み取れます。


●外国人旅行者数 過去最高(約2,000万人) 訪日外国人による消費額は過去最高(約3.5兆円)
訪日外国人旅客2020年4,000万人・旅行消費額8兆円を目指し、 観光立国を実現します。スポーツ産業を振興します。
 

また、公約以下の微細な政策を示した詳細政策集(J-ファイル)の観光政策の項目も同様に充実。以下、主な政策を抜粋。


・地方への誘客と地方における消費の拡大を図るためのプロモーションや欧米豪に対するプロモーションの重点的な実施
・査証(ビザ)要件の緩和・波及手続きの円滑化、入国審査の迅速化
・双方向の国際交流の促進、多言語音声翻訳の普及促進
・国際会議棟の誘致・開催やカジノいを含む統合型リゾート(IR)の推進
・外国人旅行者向け免税手続きにおける一層の利便性向上や免税店の地方絵の拡大
・宅配サービスを活用した「手ぶら観光」の推進
・訪日外国人旅行客の急激な増加に適切に対応するため、宿泊施設不足の解消、貸し切りバスの路上混雑の緩和
・CIQ体制の充実
・公衆無線LAN環境の整備
・ストーリー性、・テーマ性にとんだ多様な広域観光周遊ルートの形成や、魅力ある観光地の整備を促進
・人材育成等により観光産業の競争力強化や日本版DMOの形成を図る
・東北地方の風評被害を払拭し、訪日外国人旅行者を回復させ、インバウンド増加の効果を波及させるため、被災地の観光振興に力を入れて取り組む
・休暇を取得しやすくする
・無電柱化の集中実施や景観・歴史文化資産に配慮したまちづくり
・わかりやすい案内表示の整備をはじめとする情報提供の充実
・渋滞対策等による円滑なアクセスの確保
・道路空間の活用によるオープンカフェの設置などによる賑わい創出
・訪日外国人客をフェリー・離島航路へ取り込むための環境整備の促進
・訪日クルーズ旅客2020年500万人に向けた港湾の緊急整備、国際クルーズ拠点の形成、クルーズ船の円滑な蹴球を可能とする為の環境整備、クルーズふ頭や「みなとオアシス」における地場産品の販売拡大などを推進
・急増する訪日外国人旅行者に対応する為、入国管理の人的物的体制の強化、手続きの一部前倒しや機械化の推進
 

このように掲げられている政策を見ると自民党の観光政策の特徴は、それを「訪日外国人旅客2020年4,000万人・旅行消費額8兆円」という具体的な達成目標を掲げ、特に国際観光振興に重点を置いた観光施策が充実している点にあるといえると思います。

【公明党】
公約:http://www.komei.or.jp/campaign/sanin2016/policy/
詳細政策集:https://www.komei.or.jp/policy/policy/pdf/manifesto2016.pdf

自民党と共に政権を預かる公明党ですが、同様に昨今の観光産業の活況を成果として示しながら、公約に掲げる重点政策として以下のような観光施策を謳っています。


国内観光の活性化で内需拡大
訪日外国人旅行者4000万人時代へ地方創生を推進
休み方改革による国内旅行者増へ高速道路料金の見直しや家族向け旅行券(仮)など発行
 

また、詳細政策集において掲げられている具体的な政策は以下の通り。


・日本人の国内観光を活性化させるために、観光地の再生・活性化に取り組む
・有給取得率の向上や休暇取得の分散化など家族が休暇をとりやすい制度の導入による観光需要の平準化
・高速道路の割引料金の見直し
・日本人向け鉄道フリーパスやプレミアム付旅行券の発行
・スポーツと観光、テクノロジー等の他産業との融合などの支援
・文化をビジネスとして成長させるために、伝統行事の通年度化支援や、文化財の解説の多言語化による情報発信、適切な修理、美装化、文化施設の機能強化
・熊本城などの重要文化財、観光施設等の普及や観光業の再建支援ととともに、国内外へ九州の観光地に関する正確な情報発信や、九州をターゲットとした集中的プロモーション活動などを展開
・九州を目的地とした九州観光支援旅行券の発行
・熊本・大分を中国人観光客向けマルチビザの発給対象とする
 

前出の自民党が「訪日外国人旅客2020年4,000万人・旅行消費額8兆円」という達成目標を前面に押し出し、観光産業の中でも「国際観光の振興」に重点を置いた施策を充実させているのに対して、一方の公明党は「国内観光の活性化」を強く打ち出した政策が目立ちます。特に目玉となる独自施策が「高速道路の割引料金の見直し」と「日本人向け鉄道フリーパスやプレミアム付旅行券の発行」の二つ。どのような財源をもってそれを実現するのかに関しては謳われていませんが、いずれにせよ財政出動による消費者に対する直接的な需要喚起策を目指しているであろう事が読み取れます。

次に野党サイドの主な政党における観光政策の分析です。

【民進党】
公約:https://www.minshin.or.jp/election2016/yakusoku
詳細政策集:https://www.minshin.or.jp/election2016/policies

野党第一党の民進党でありますが、 選挙公約の「成長戦略」の項目に観光振興政策を大きく掲げています。


●成長戦略で、日本の潜在能力を引き出します
観光需要を地域経済のエネルギーにするため、観光をマネジメントする人材を育成するとともに、有給休暇を取りやすくします。
 

一方、それを実現するための具体的施策に関してですが、正直、かなりの迫力不足。詳細政策集に記載されている内容は以下の通り。


・ 「観光立国推進特別措置法」(仮称)を制定
・年次有給休暇の取得促進及び休暇の分散取得などの休暇改革
・観光資源の付加価値化・ブランド化の促進
・旅館・ホテル業の振興
・観光圏の開発
・エコツーリズム、グリーンツーリズムを推進し、持続可能な観光を目指す。
・観光地において、文化財を活用した地域づくりのための規制緩和等を検討
 

政権与党の自民、公明が具体的な数値目標や、それを実現するための具体施策を詳細政策集でそれぞれ謳っているのに対して、民進党の観光政策は「お題目」が並ぶだけの具体性に乏しいもの。しかも、内容に明記のない「観光立国推進特別措置法」を除けば、その施策も全てが現政権内で実施されているものばかりであり、野党としての「対案」となる新しい提案は含まれていません。

【日本共産党】
公約&詳細政策集:http://www.jcp.or.jp/web_policy/html/2016-sanin-seisaku.html

既に野党第二党にまで党政を拡大している日本共産党ですが、その詳細政策集の中に「観光」を明確に謳った項目はありません。一方、その他項目の中で観光に関して言及している部分を抜き出すと以下の通り。


・農林漁業の「6次産業化」はあくまで農林漁業者主体に――農林水産物の生産・販売とともに地域の資源を生かした加工や販売に力を入れることも、農林水産物の需要を拡大し、地域の雇用を増やし、農漁家の所得を増やすうえで重要です。地域資源の有効利用、農家や協同組織による農産物の直売、加工、観光、農家レストランなどの取り組みを積極的に支援します。民間企業と連携する農業の「6次産業化」はあくまで農業者主体を貫き、連携する企業も可能な限り地場企業を重視します。

・ライドシェアは副業を想定したしくみです。価格破壊が容易に起こり、今でさえ早急な改善が必要なタクシー労働者の低賃金と劣悪な労働条件はさらに悪化します。相次ぐバス事故に明らかなように、乗客の命を危険にさらすライドシェア導入など規制緩和に反対します。政府は、国家戦略特区での自家用車による観光旅客等運送事業を解禁しました。これはライドシェア導入に道を開くものであり、撤回させます。

・日本共産党は、政府が「地方創生」の名のもとにすすめる「集約化」に反対し、地方の基幹産業である農林水産業の振興と6次産業化、中小企業と小規模事業者の振興、観光産業や地域おこしなどの振興策、住宅と商店街のリフォーム助成への支援、自然・再生可能エネルギーの地産地消など、地方自治体がおこなっている地域の活性化策を全力で支援します。

・破たんに直面するカジノ推進構想 百害あって一利なし、カジノ合法化に反対します
賭博を合法化するカジノ法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)が議員立法として国会に提案されたのは2012年12月でした。それから3年半が経過しましたが、いまアジアを中心とするカジノ業界は深刻な売り上げの減少に直面し、2年連続で下落しています。国会では、カジノ法案は先送りに続く先送りです。賭博を全面的に合法化しようとするカジノ構想にたいし全国各地の反対運動も広がり、カジノ推進路線は破たんと矛盾に直面しています。
 

共産党のカラーといえばカラーでありますが、基本的には「政権与党の行っている現施策に反対」というのが主軸となっているのが政策の構成。特徴となるのは「6次産業化」による農村改革の文脈において農業者を主とした観光振興を謳っている点、そして政府の進めているカジノ合法化に対して明確に反対を示している点が共産党ならではの独自視点であると言えます。

【おおさか維新の会】
公約&詳細政策集:https://o-ishin.jp/election/sangiin2016/pdf/manifest_detail.pdf

地域政党から国政政党への転身の真っ最中のおおさか維新の会ですが、維新もまた今後の成長戦略の軸の中に「観光政策」を明確に含める政党であります。 
 

「既得権と戦う成長戦略」を、維新の手で!
規制で守られた補助金漬けの古い業界や団体が、新規参入や競争を阻み、税金を吸い上げて、っ国の活力が奪っている。
競争政策を強化し、医療、農業、観光といった産業を振興
 

一方、その詳細政策集に示されている具体的な項目は以下の通り。


<観光産業の更なる拡大>
①シンガポール型の統合リゾート(IR)を実現するための法制度を整備する。
【維新改革】大阪府市によるIR実現に向けた取り組み
○政府にIR解禁の法改正を働き掛け。
○IRの誘致活動を推進。

②2020年東京オリンピックに向けて全国で空き家や空き部屋を活用し、ホテルにかわる都市型「民泊」を可能にする規制改革を行う。近隣とのトラブル対策は行いつつ、一層の規制緩和。
③2025年国際万国博覧会の大阪招致、リニア中央新幹線の大阪同時開業等により、双極型さらには多極型の経済成長を実現する。
④地方空港の「選択と集中」。国際ハブ空港の機能を強化し、空港民営化を推進する。
 

その特徴としては、党名に「おおさか」という文字を残したことに象徴されるように、2025年の万博大阪誘致やリニア中央新幹線の大阪同時開業など、関西ローカル色が強い政策を国政選挙としても公約に掲げている点でしょうか。また、統合(型)リゾートの導入を観光政策の第一項目に掲げている点なども、これまで関西のローカル政党として示してきたのと同様の「維新カラー」であるといえるでしょう。

という事で、以上が今回の参院選において主要な政党が掲げている観光政策の比較分析です。選挙争点というのは、メディアなどが主導して「作られて」いってしまう側面も否めませんが、一方、ご自身の関心の高い分野をピックアップして、このように並べて比較してみるのもまた面白いもの。是非、皆さんもご自身で各政党の公約&詳細政策集を手に取り、確認してみて頂ければと思います。