実は、類似したエントリは以前、毎日新聞の論説に対しても行ったことがあるのですが、今回は改めて朝日新聞に対してエントリを書きたいと思います。以前のエントリは以下参照。
毎日新聞の考える「健全な賭博」とは?
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8759291.html
1. 朝日のカジノ反対論
昨日の朝日新聞の社説にて先月末に国会に再提出が行われた我が国のカジノ合法化と統合型リゾート導入を推進するIR推進法案に関連する論評が行われました。以下、5月8日朝刊からの引用。
統合型リゾート(IR)でカジノを解禁する法案を先月末、自民、維新、次世代の3党が国会に再提出した。昨年の衆院解散でいったん廃案になったものだ。法案をつくった超党派議連は「20年東京五輪までに実現を」という。
ギャンブルは、犯罪を誘発したり、暴力団など反社会的勢力の資金源となったりする恐れがある。遊びとはいえ、金を賭けて射幸心をあおるカジノの設置は、ギャンブル依存症や多重債務者を生む恐れもある。[…]
…という記述で始まり、
・すでに日本にはパチンコのほか、競輪、競馬などの公営競技で、ギャンブル依存症の患者は相当数いる
・依存症の人たちへの対策は今すぐにでも国の責任でやるべき課題
・すでにギャンブル大国と言われるこの国で、カジノを新たに認める必要があるのか。
と、反対論調一色となっております。ただ、これは以前、毎日新聞の社説に対するコラムにも言えることですが、このような朝日の論調を見るにつけて、私はそこに違和感を持たざるを得ません。
2. 朝日は我が国の賭博関連産業においては「善意の第三者」ではない
朝日新聞はギャンブル依存症やその他の社会的影響を懸念する立場から、如何にも「善意の第三者」かの如くカジノ反対論を展開していますが、我が国におけるギャンブル産業の発展においては朝日新聞社はけっして「第三者」ではありません。
第一に、朝日新聞は大手マスメディアの中では戦後最も早くから我が国の競馬産業の大衆娯楽としての普及に取り組んできた企業の一つです。朝日新聞社は、1949年から現在までに亘って、毎年「朝日杯フューチュリティステークス」という競馬レースの提供者となっています。このような提供者名を冠したレースは業界内では「冠レース」と呼ばれるのですが、朝日杯は大手メディア提供による冠レースの「走り」であり、この朝日杯をキッカケに多くのメディア企業は競馬における冠レースの提供に乗り出しました。この朝日新聞提供による朝日杯の誕生をきっかけに、大手全国紙のみならず、全国の地方新聞紙に同様の動きが広がり、現在ではほぼ全ての(公営競技場のない沖縄を除く)新聞メディアが、自社の名称を冠した冠レースを提供しています。
ちなみに、朝日杯はその中でも「G1」と呼ばれる中央競馬の中でも最も「格」の高いレースとされており、昨年の実績では12月21日に開催されるたった一日のレースを対象に125億632万1500円の馬券を売り上げています。
また、朝日新聞社は我が国のパチンコ産業の大衆普及においても、全くもって「第三者」ではありません。朝日新聞のような大手新聞紙は、全国のパチンコ店にとっては最も重要な広告媒体の一つです。特に日曜版には、地域パチンコ店の折込チラシが大量に封入されることが常であり、2010年4月には、朝日新聞グループ内にあって折込チラシの広告代理業を行っている系列企業、朝日オリコミ社は以下のような統計も発表しています。
朝日オリコミ、2010年4月の折込広告出稿統計 上位業種は「食品スーパー」「パチンコホール」「塾」
http://www.findstar.co.jp/articles/view/2302
株式会社朝日オリコミは6月2日に、2010年4月次における折込広告出稿統計を発表した。4月の首都圏1世帯平均の折込広告枚数は539.8枚、前年同月より2枚の増加となった。1世帯平均の折込枚数を業種別に見ると、「流通(スーパー、家電など)」がもっとも多く250.9枚。これに次いで「各種サービス(パチンコ、外食、塾)」160.9枚、「不動産(仲介、マンション)」68.1枚と続く。前年比で見ると「流通」「各種サービス」「通販」が前年を上回っており、とくに「各種サービス」が110.0%と好調だった。
小分類で出稿量を見ると、上位は「食品スーパー」(52.6枚)、「パチンコホール」(37.7枚)、「塾・予備校」(31.4枚)などとなっている。
朝日新聞社にとってパチンコ産業は主要なクライアントであり、その営業拡大を助力する広告サービスを提供している事業者であることが判ると思います。ここにおいても、当然ながら我が国のパチンコ産業の普及、ひいては彼ら自身が問題視するギャンブル依存者の拡大において、朝日新聞は「当事者」の中の一人であると言えます。
3. 朝日新聞のギャンブルに対する見解を問う
以上のように朝日新聞社は我が国のギャンブル産業の普及および依存症の拡大においては決して第三者ではないワケですが、そこで改めて朝日のギャンブルに対するスタンスを問いたいのです。
a) 冒頭にご紹介した社説の中では「すでに日本にはパチンコのほか、競輪、競馬などの公営競技で、ギャンブル依存症の患者は相当数いる」などとしているが、朝日新聞社を含むメディアが我が国においてギャンブル産業の拡大に与えた役割、もしくはその責任をどのように捉えているのか?
b) 「依存症の人たちへの対策は今すぐにでも国の責任でやるべき課題」などと国による対策不在の不作為を糾弾しているが、公営競技やパチンコ産業の国民的普及においてその一翼を担ってきた新聞社にが同様の不作為は無いのか?
という事で、朝日新聞は「すでにギャンブル大国である日本にカジノを新たに認める必要があるとは思えない」などと、如何にも「善意の第三者」ヅラをしながら論評を展開しているワケですが、賭博関連業界を俯瞰して研究対象としている私からすれば、既存の賭博関連産業における中心的関与者が、己の身分を隠しながら都合の良いポジショントークを展開しているようにしか見えないのです。
是非、貴方達が戦後から長らく産業の拡大と普及に関わって来た既存の賭博関連産業と、今、観光振興を目的として語られているカジノの合法化と、どこが質的に違うのか。まずは、その辺りの朝日新聞社としての立場をハッキリと示して頂いた上で、この論議に参加して頂きたいのです。