恐らく世間の大多数は興味がないのだろうけれど、カジノ研究者たる私にとっては非常に興味深いニュースが入ってきました。以下、読売オンラインより転載。
生活保護法の中では、生活扶助の内容に関して、1)衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの 、2)移送、の二つを定めており、一応の用途制限をしている形なのですが、その具体的な品目に関しての定めはなく、車の所有や借金返済への利用など一部制限はあるのですが、給付された金額の範囲であれば多くの使途に対して制限がない状態となっています。一方、上記条例は生活保護者がパチンコや競馬で常習的にお金を使うことを「浪費」と位置づけ、その告発制度を設置するもの。なかなか面白い展開ですね。
本条例における今後の論議としては、恐らく憲法に定められた基本的人権論議へと発展するのでしょうが、1) 公的な監視制度を設けることが生活保護受給者の権利を侵害するものとならないか?、2) 生活保護受給者に保障された「健康で文化的な最低限度の生活」の中にギャンブル、もしくはそれに類するもの(遊技)が含まれるかどうか?、の2つくらいの論点が出てくるものと予想します。当然、カジノ研究者たる私としては後者に関して、今後どのような論議に発展するか興味深々なワケです。
その背景には実は、シンガポールのカジノ入場管理制度があります。2010年に国内初めての合法カジノが誕生したシンガポールでは、その入口において全入場者のID管理を行い、政府から生活保護を受けている人間や低所得者用の家賃補助住宅の居住者の中の一部の者を自動的に「ハジく」(入場拒否する)システムが採用されています。そしてこの制度は、我が国のカジノ合法化の大前提として、私自身も導入の提言しているシステムです。
ただ、そこで問題となるのが、やっぱり人権問題なのですね。「世界で最も成功した社会主義国」などとも呼ばれる(揶揄される)シンガポールでは、行政府の国民に対する統制観念が日本と違うため、このシステムの導入が「国民の人権問題に触れる」などという論議はあまり大きくは見られなかったのですが、日本では確実にその点が論議となるワケでして、その前哨戦(?)として今回の兵庫県小野市の条例論議は非常に興味深い。
「社会的弱者に対する権利保護」というレトリックで、「いわゆる」人権派弁護士さんにとっては格好の案件ですから、これから先、かなり広範な論議が巻き起こるのではないかと予想しておるところ。私自身はあくまで私論として「採用すべき」派ではあるのですが、最終的には裁判所に持ち込まれて公的な決裁が行なわれるところまで行くようならば研究者の目線としては非常に面白いなぁと。。当ブログでは、本件に関して今後も継続的にウォッチし続けてゆくつもりです。
生活保護不正受給“告発”条例提案…兵庫・小野
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20130222-OYO1T00620.htm?from=main4
兵庫県小野市は、生活保護費を不正受給したりギャンブルで浪費したりしている受給者の情報提供を市民に求める「市福祉給付制度適正化条例案」を市議会に提案する。蓬莱務市長は「生活保護費をギャンブルにつぎ込むのは市民感情では受け入れられない。ある程度の監視は仕方ない」と説明するが、識者からは懸念する声も出ている。[...]
生活保護法の中では、生活扶助の内容に関して、1)衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの 、2)移送、の二つを定めており、一応の用途制限をしている形なのですが、その具体的な品目に関しての定めはなく、車の所有や借金返済への利用など一部制限はあるのですが、給付された金額の範囲であれば多くの使途に対して制限がない状態となっています。一方、上記条例は生活保護者がパチンコや競馬で常習的にお金を使うことを「浪費」と位置づけ、その告発制度を設置するもの。なかなか面白い展開ですね。
本条例における今後の論議としては、恐らく憲法に定められた基本的人権論議へと発展するのでしょうが、1) 公的な監視制度を設けることが生活保護受給者の権利を侵害するものとならないか?、2) 生活保護受給者に保障された「健康で文化的な最低限度の生活」の中にギャンブル、もしくはそれに類するもの(遊技)が含まれるかどうか?、の2つくらいの論点が出てくるものと予想します。当然、カジノ研究者たる私としては後者に関して、今後どのような論議に発展するか興味深々なワケです。
その背景には実は、シンガポールのカジノ入場管理制度があります。2010年に国内初めての合法カジノが誕生したシンガポールでは、その入口において全入場者のID管理を行い、政府から生活保護を受けている人間や低所得者用の家賃補助住宅の居住者の中の一部の者を自動的に「ハジく」(入場拒否する)システムが採用されています。そしてこの制度は、我が国のカジノ合法化の大前提として、私自身も導入の提言しているシステムです。
ただ、そこで問題となるのが、やっぱり人権問題なのですね。「世界で最も成功した社会主義国」などとも呼ばれる(揶揄される)シンガポールでは、行政府の国民に対する統制観念が日本と違うため、このシステムの導入が「国民の人権問題に触れる」などという論議はあまり大きくは見られなかったのですが、日本では確実にその点が論議となるワケでして、その前哨戦(?)として今回の兵庫県小野市の条例論議は非常に興味深い。
「社会的弱者に対する権利保護」というレトリックで、「いわゆる」人権派弁護士さんにとっては格好の案件ですから、これから先、かなり広範な論議が巻き起こるのではないかと予想しておるところ。私自身はあくまで私論として「採用すべき」派ではあるのですが、最終的には裁判所に持ち込まれて公的な決裁が行なわれるところまで行くようならば研究者の目線としては非常に面白いなぁと。。当ブログでは、本件に関して今後も継続的にウォッチし続けてゆくつもりです。