目下、カジノを含む統合型リゾートの是非を巡って市長選が行われている横浜市に関する東京新聞の報道から。


<争点を行く 横浜市長選2021>(1)IR誘致 コロナ禍「局面変わった」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/121445

「みんなの力でカジノのないミナト・ヨコハマをつくろう!」。横浜市が進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の候補地の山下ふ頭(中区)の入り口には、港湾業者らが掲げた横断幕がある。二〇一七年の前回市長選で、林文子市長はIR誘致を「白紙」として三選を果たした。しかし、一九年八月、誘致する方針を表明すると、誘致に反対する市民から反発の声が巻き起こった。


もはや新聞が「社会の公器」たる役割を果たすつもりがない事などは明白であり、東京新聞の報道が中立を装いながら完全にワンサイドであることに関してはコメントする気にすらならないのですが、一方で以下の部分に関しては流石にやり過ぎなので一言申し上げたい。


◆時代遅れ指摘
専門家はコロナ禍で経済モデルは変わったと指摘する。
「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」代表の桜田照雄・阪南大教授(経営財務論)は、世界的にカジノはオンラインに移行していることをあげ「IRという集客型のビジネスモデルは、もはや時代遅れだ」と指摘。今回の市長選について「コロナにより、局面が変わっている。一人一人が熟慮して価値判断してほしい」と話す。


「専門家」と銘打って登場している桜田照雄・阪南大教授ですが、その人「何の専門家」として登場させていますか? 「世界的にカジノはオンラインに移行している」ことをあげ「もはや時代遅れ/コロナにより局面が変わっている」などとコメントさせていますが、カジノがオンラインに移行しているのはコロナ禍の発生如何に関わらず2000年代半ばからずっと続いていることで、むしろ2000年代に入ってから単純賭博の提供ではなく、トータルの滞在体験を提供する「統合型リゾート化」が業界内に起こって来たことそのものが、オンラインカジノ台頭に対する業界の変化です。

アメリカでは既に希望者に対するワクチン接種が完了し、徐々に産業の正常化が始まっていますが、米国を代表するカジノを中心とするリゾート都市であるラスベガスは既に回復の途にあり、寧ろ多くの観光地の中ではコロナ禍からの復活が早い観光地の一つに数えられます。以下7月の読売新聞報。

ラスベガス再び輝き、苦境脱しカジノ売り上げ最高…「ここには全てがある」
https://www.yomiuri.co.jp/world/20210720-OYT1T50255/

っていうか、そもそも桜田照雄さんというのはカジノをご専門としているわけではなく、大阪の夢洲構想の反対派の筆頭論者として「カジノ反対派」の旗を降ってきた方ですよね。そういう人間を、あたかも専門家であるかのように表現しながら業界の将来展望を語らせるなんてのは、沖縄の米軍基地反対派の筆頭論客を「軍事専門家」かのように紙面に登場させて極東アジアの安全保障を語らせるようなもんでしょう。

もはや「社会の公器」たる役割を果たすつもりがない東京新聞とはいえども、流石に無茶苦茶な紙面づくりですね、とひとこと苦言を申し上げておきたいと思います。