以下、神奈川新聞からの転載。


カジノ要件は「品位・清潔感ある空間」 横浜市が実施方針案
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-332900.html

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を巡り、横浜市は11日の市会建築・都市整備・道路委員会で、IR事業者の公募条件などを定めた実施方針案を報告した。世界最高水準のIRを実現し、海外と国内各地をつなぐ“玄関口”となることを目標に設定。市民からの反発が根強いカジノについては、「品位と清潔感のある空間の演出」などを公募要件とした。


ということで、本来は今年の6月に公表予定であった横浜のIR整備実施方針が約半年遅れで公示となりました。政府は既に、来年の10月から翌年の4月にかけて都道府県等からのIR整備申請を受け付ける方針を発表しており、これから全国の誘致自治体の猛烈なレースが始まる事となります。

で、今回発表された横浜IR整備計画ですが、個人的に評価したいのはこの部分。以下は上記と同じ神奈川新聞の記事からの転載。


「施設面積の3%以下」と定められているカジノについては、未成年やファミリー層が主に利用する動線から分離。「エレガントで落ち着いた内装であり、非日常を感じられる大人の社交場としてふさわしいドレスコードを設けるなど、品位と清潔感ある空間を演出すること」とした。
(※下線部は筆者)


カジノのみに限らない話なのですが、日本のギャンブル業界では心の奥底に存在する「後ろめたさ」の現れなのか、ギャンブル施設を「家族も楽しめる」などとファミリー路線でアピールすることがしばしば見られます。我が国のカジノ合法化においては、IR整備法が衆院本会議に提出された2018年5月18日に行われた法案趣旨説明において、当時の総理大臣であった安倍晋三首相はこの法案を以下の様に説明しました。


第196回国会 衆議院 本会議 第28号
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=119605254X02820180522&current=7

内閣総理大臣(安倍晋三君) 鈴木馨祐議員にお答えをいたします。
日本型IRの実現に向けた決意についてお尋ねがありました。日本型IRは、国際会議場や家族で楽しめるエンターテインメント施設と、収益面での原動力となるカジノ施設とが一体的に運営され、これまでないような国際的な会議ビジネス等を展開し、新たなビジネスの起爆剤となり、また、世界に向けて日本の魅力を発信する、まさに総合的なリゾート施設であり、観光や地域振興、雇用創出といった大きな効果が見込まれるものとされております。
(※下線は筆者)


実は私自身は、カジノに限らずギャンブル施設はあくまで大人の為の娯楽施設であり、青少年を積極的に寄せる様な施策、すなわちファミリー路線を採るべきではないという論者であるのですが、一方で日本の統合型リゾートは上記の首相によって行われた法案趣旨説明に基づき、長らく「家族で楽しめる」がキーワードとして使用されて来たのが実態。それが、現在IR整備の実施方針を作成している各自治体の基本姿勢に受け継がれて来たのが現状であります。

ところが今回、横浜市は法案趣旨説明で行われた「家族で楽しめるエンターテインメント施設」というキーワードを維持する事は仕方がないとしても(それが国側で定められた方針なので)、一方で独自の理念として「カジノについては、未成年やファミリー層が主に利用する動線から分離」すべしとする方針を掲げた。この点に関しては、この道の専門家として高く評価をしたいと思います。

繰り返しとなりますが、カジノに限らずギャンブルを提供する施設はあくまで大人の為のレジャー施設であり、子供が積極的にそこに立ち入るような施策は慎まれるべきもの。青少年の皆様は、ぜひ大人になってから施設にご来訪を頂けたら幸いであります。