ツイッター側で以下の様な投稿が飛んできて、正直戸惑っております。以下、転載。

依存症界隈では「良くも悪くも」非常に高名な国立久里浜医療センターでありますが、上記の様な駅貼り広告を張っているとのこと。久里浜医療センターに関しては、その名物センター長である樋口進医師も含め、かつてエントリを書いたことがあるのでご興味のある方は以下をご参照ください。

久里浜医療センター院長、樋口進氏の大罪
http://www.takashikiso.com/archives/9842840.html

いずれにせよ、我が国で未だ論証の薄いころから依存問題を煽りに煽り、「アルコール→ギャンブル→ゲーム」と燃やすに燃やしてきた久里浜医療センターですが、なんと「依存症は治療法のある病気です」とのセンセーショナルな広告で、患者を集めている模様です。

それではここで、久里浜医療センター長が発表した最新の共著論文をご紹介いたしましょう。以下転載。


松崎尊信、樋口進、「インターネット・ゲーム障害(DSM-5)、ゲーム障害(ICD-11)」、精神科治療学第35巻増刊号2020年10月
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/bn/35/zokan.html

一方、個人の内的要因としては、自己抑制や判断能力の欠如、自己評価や自己肯定感の低さ、社会的な孤立、人間関係の希薄さ、ゲーム以外に興味がない、等が指摘されている(Bernardi, S et al 2009, Han, D.H,2011, King, D.L,2014)。多くの縦断的研究からは、衝動性、神経症的な傾向が強い性向、孤独感、精神疾患としてADHD、うつ病、不安障害などの合併が、ゲームへの依存の背景にある可能性が指摘されている(Mannikko,N,2015, Rehbein, F, 2010)。衝動性がコントロールできなければ、ゲームによって深刻な影響が出ていたとしても、ゲームに対する渇望をコントロールすることは困難であるし、現実世界の好まざる問題から目をそむけるために、現実逃避としてゲームに浸ることもあるだろう。

依存(上記専門的な表記では「障害」)が親から遺伝的に受け継いだ気質やその他の精神疾病と合併することが多いということは、ゲーム依存より先行するギャンブル依存研究の世界では既に知られている事であり、上記はそれが同様にゲーム依存にも当てはまるとする研究を、久里浜医療センターの樋口センター長らが紹介した論文の一部です。

だからこそ依存というのは「治療」が難しいし、これこそが依存が「治療」を前提とした医療的アプローチよりも、「生活障害」を前提とした福祉的アプローチの方が適切であると言われて来た理由であるわけです。それを前提に冒頭でご紹介した駅貼り広告に関して伺いたいワケですが、久里浜医療センターは、その様な遺伝的要素の強い「依存」に対して、どの様な「治療法」をあてているのでしょうか。

これまで私が散々展開してきた久里浜医療センターおよびその名物センター長である樋口医師評の繰り返しにしかならないわけですが、この人達には一貫した主張など存在せず、時と場合によりコロコロと立場を変えて自分達に利益誘導を図ることしかしない政治的な性格が非常に強い組織だなあ、と改めて思った次第です。我が国の依存研究がこの様な機関を中心に進められていること、そしてその旗振りを未だ樋口進センター長が行っていることそのものが、我が国の依存対策政策の不幸であるな、と思わざるを得ないエピソードでありました。