一週間ほど前に、観光産業の中で最もコロナの影響を受け、変容して行くのはMICE観光であろうというエントリを書いたわけです。一方で実は、先の記事を書いた時、私はこれに関連してtwitter側で以下の様なコメントもしていました。



日本の株式会社クラスター社がリリースしているVR空間で人が集まることができるバーチャルイベントサービス「cluster」なんかがまさにその典型なのですが、エンターテイメント用途の特殊な利用は別として、正直、僕は今のところMICEイベントがVR空間に置き換わって、参加者がアバターでそれに参加する的な方向性がイマイチピンと来ていないんですよね。例えば今年3月、情報処理学会がまさにclusterを使った学術会議を行ったワケですが、イベントそのものの開催機能としては普通にZoomなどのオンライン会議サービスで必要十分であるわけで、そこにアバターを持ち込む事になんの意味があるんだろうなあ、と。

世界初!cluster(クラスター)を使ったバーチャル空間での学会イベントが明日3月7日開催
https://news.yahoo.co.jp/byline/yukiigarashi/20200306-00166363/

一方で、エンターテイメント寄りの使用でいえば、コロナ禍にあって世界中の人々が自宅に閉じこもる中、大ヒットゲーム「Fortnite」内で行われた世界的人気ラッパー「Travis Scott」によるバーチャルライブに同時接続で1200万人の参加者が世界中からあつまるなど大成功。個人的にはアバター的な文脈で実施されるバーチャルイベントは暫くこういう用途に特化して使われるんじゃないかなあ、と思っていたりするところであります。以下はTravis Scottによるパフォーマンスの動画ログ。



という様に、現在、世界中で様々なMICEの形が模索されている中で、IT技術とエレクトロニクスの祭典である日本の展示会「CEATEC」が、今年の開催でスバラシイ実例を示そうとしている記事を見つけました。以下、Internet Watchからの転載。


CEATEC 2020 ONLINE、開催概要を発表、「ニューノーマル社会と共に歩む CEATEC」目指す
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1262318.html

今回の「CEATEC 2020 ONLINE」に関して、CEATEC実施協議会の吉田俊ディレクターは、「単に、代替手段としてオンラインで開催するわけではない。家電見本市からCPS/IoTをテーマとするSociety 5.0の総合展にシフトしてきたCEATECが、今回を契機に、さらに新たなステージに進むことになる」とする。

鹿野エグゼクティブプロデューサーも、「今回はオンラインでの開催となるが、今年だけのためのオンライン開催ではない。重視した考え方のひとつが、リアルとの接続性である。そして、その先に描いているのは、リアルとオンラインのハイブリッドでの開催である。ニューノーマル時代におけるCEATECのあり方を考える意味においても、オンラインでの新しい取り組みへのチャレンジは、これからの重要な試金石になると考えている。今年経験したものが、来年以降のCEATECにも生かせる」とする。

上記記事は引用した部分以外においても本当に示唆に富んでいて、関係者は皆、全文に目を通しておくべきだと思うわけですが、おそらくビジネス用途として行われる未来のMICEというのは、今回のCEATEC2020の延長線上にあるもう少し「質実剛健」なサービスにあるのではないかなあ、と個人的には思うわけです。

そして、先日のエントリでも示した内容に戻るワケですが、日本の国際観光競争力の強化、なかでも特にMICE振興を中心的な目的として定めて来た我が国の統合型リゾート構想も、この様な「ニューノーマル」時代のMICE産業の変化に合わせて、変わって行かなければならない。大型イベントの開催を失注しない様に、とにかく大きなMICE施設を作りたい(作らせたい)として国がひたすらに進めて来た我が国の思惑も含めて、時代の変化に合わせてその役割と機能をアップデートしなければいけない。私の立場として、その様に繰り返し訴えて行く所存であります。