さて、大阪日日新聞に以下の様な大阪観光局のMICE政策統括官へのインタビューが掲載されました。以下、大阪日日新聞からの転載。


大阪観光局MICE政策統括官インタビュー
大阪観光局は、国際会議や展示会など「MICE(マイス)」と呼ばれるビジネスイベントの主催者に向けた、感染症対策ガイドラインを策定した。新型コロナウイルスの影響で、大阪では100件近く展示会などのイベントが中止になった会場がある。同局MICE政策統括官の田中嘉一さん(49)に、マイスの現状や「日本一のマイス都市」を目指す大阪の強みを聞いた。

発表したのは「感染症拡大のリスクを抑え、MICE開催するための主催者向けガイドライン」で、4月から策定に着手。政府の対策方針、主催者の意見、海外MICE再開の動きなどを参照し、感染症の専門家が監修した。


読後の感想としてはあまりにも楽観的というか、現政策の肯定に偏った論調に鼻水噴かざるを得ないのですが、MICE政策を担当する統括官という立場上、仕方がないポジショントークなのだろうな、とは思います。ただ、この様な一種のポジショントークは別として、MICEを巡る環境は今回のコロナ禍によって劇的に変わって行かざるを得ません。

3密を避けるだのなんだのという目前の話よりも、何よりも今後のMICE産業に大きな影響を与えるであろうことが、全世界のビジネスパーソンの「意識」の変化そのもの。MICEとはMeeting(企業面談)、Incentive(インセンティブ旅行)、Convention(コンベンション)、Exhibision(展示会)の総称で、いわゆるビジネス観光全般を包括する概念でありますが、このコロナ禍に苛まれた3ヶ月強の期間において我々ビジネスマンは今ままで当たり前の様に行っていた直接の対面がなくとも、ビジネスは前に進むという事を知ってしまった、というか寧ろコロナ禍にあってもビジネスを動かす為にはその環境を整備せざるを得なかったわけです。

もはや直接対面なんぞしなくても、クライアント様とビデオ会議で商談をすることが出来ますし、国際会議だってわざわざ皆で出張せずともオンライン上で安価に開催が出来る。寧ろ、今までもそれが技術的に出来ることは皆知っていたわけですが、ビジネス上の習慣や、ホンの一部だけ存在するデジタルディバイドな方々にも対応する為、様々なMICEイベントが行われてきた。しかし、それもこのコロナ禍の発生した3ヶ月の間に全て払拭されてしまったわけです。

その様な中で、これからのMICE産業が変わって行かない訳がない。前出の大阪観光局の統括官は「マイスが停滞すると、経済などに深刻な打撃をもたらす」などと宣っているが、コロナ禍によって社会全体の変容が起こった、起こらざるを得ない状況下にあって、MICEだけがこれまでと変わらない立場で居られるわけがない。MICEの中でも、一部の「商品を実際に手に取ること」が優位に働く見本市や「皆が集まる事に意味がある」様なお祭り的な特別な意味を持つイベント以外のMICEイベントは、今後は確実にネットに代替されて行くことになるし、既に世界はその様に動いているワケです。以下、ASCIIからの転載。


FIXERがバーチャルイベントサービス発表、日本MS「de:code 2020」で採用

ccVESは、「Microsoft Azure」クラウド上で構築されたSaaS型バーチャルイベントサービス。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当面の間大規模なリアルイベントの開催は困難であることが予想されることから、顧客との接点を求める企業やさまざまなコミュニティ向けに、「バーチャル空間での参加体験」を提供する目的で開発された。

 ccVES上のバーチャルイベントにおいて、来場者は自ら選択した3Dアバターとなって会場内を移動し、セッションルームでの講演に参加したり、スポンサーブースを訪問して製品やサービス紹介を受けたりすることができる。またccVESでは、来場者と出展者間のコミュニケーション手段としてアンケート機能や「Microsoft Teams」を使った商談機能も備える。


この他にもビデオ会議サービスの米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの株式時価総額が6兆円を上回り、航空最大手7社の合計時価総額を軽く超えてしまった現象などは、これがコロナ禍が起こした一過性のモノではなく、未来に続く変革の始まりであるという事を多くの人々が予感しているから、と言えましょう。

その様な状況の中でIRがMICE振興に対して果たして行く役割に関しても、再定義が必要になることは確実でしょう。日本のIRは、観光庁が民主党政権下の前原大臣時代から(なぜか)「MICE振興の為のIR導入」を掲げ、日本に不足している大型MICE施設開発の為のIRなどという文脈で長らく語られて来ました。それを裏付けるかのように現在、観光庁が示している日本IRの整備基準には日本最大級のMICE施設の併設が必須とされているワケですが、その様なただ大型のMICE施設が果たして今後も必要なのかどうかに関しては改めて論議が必要となってくるでしょう。

一方で勿論、IRが持つMICE振興上の強みは上記以外のにも確実に存在します。まず第一に、単純なMICE施設提供のみならず複合観光施設ならではの宿泊、料飲、娯楽(アフターMICE)機能までもをワンパッケージで提供できるという圧倒的な利便性。そして、MICEイベントの中でも「今後も役割りとして残る」と前述した祭り的なイベントや何よりもこれまで日本ではあまり注目されて来なかったインセンティブツアー(褒賞旅行)に対して圧倒的に強いという施設特性。これらは統合型リゾートのみが提供できる「価値」であります。

逆にいうのならば、観光庁がIR導入の意義として当初描いていた「日本最大級のMICE施設の併設」などという規模を追求したような開発要件が、本当に日本版IRに今後の日本MICE産業の振興に資するのかどうかは改めて検討が必要。「規模」ではなく、IR導入がどの様に「質的に」日本のMICE産業の振興に寄与するのか。その辺りを改めて更新を行わなければ、日本版IRが日本のMICE振興に寄与することはないでしょう。要は、我々もwithコロナ社会において「新しい様式」への変化が求められているワケであります。