カジノ合法化に関する100の質問

日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ

さて、カジノ界の巨星が落ちました。訃報です。


米カジノ王、アデルソン氏死去 トランプ氏の大口献金者
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/691832

【ニューヨーク共同】トランプ米大統領への大口献金者として知られるユダヤ系富豪で米カジノ大手「ラスベガス・サンズ」のシェルドン・アデルソン会長が11日、非ホジキンリンパ腫の合併症のため死去した。87歳だった。死去した場所は不明。同社が12日明らかにした。

ちなみに、左派系メディアの方々は先の米国大統領選にて敗退したトランプ・前大統領に紐づけて、「トランプ氏の大口献金者」などという側面を強調したがっている様ですが、彼は自己の政治姿勢に基づき共和党系の政治家を支持&支援してきただけであって、トランプ氏を殊更に支援していたワケではありません。

コロナ禍によって保有資産の大部分を占めるラスベガスサンズ社の株式価格が減損したものの、2020年の世界長者番付では28位にランクインした、文字通り「カジノ業界の巨星」シェルドン・アデルソン氏。米国マサチューセッツ州のボストンで、タクシードライバーの息子として生誕し、ワンルームマンションの小さな一室で育った同氏は必ずしも裕福な生まれではありませんでした。

そんな彼が稀有な商才を示し始めたのは12歳の時、地元で小さなニューススタンド(日本でいうキオスクにあたるもの)を営業し始めたことにあります。当時彼が12歳で営業していたニューススタンドにおいて、子供向けのキャンディーマシン(「当たる」とキャンディーが貰える子供向けゲーム機)を設置運営していた事が、後のカジノ業界における成功につながったなどと、一部メディアなどでは報じられていますが、その真偽は判りません。その後、アデルソン氏は大学に進学するも、それを中退。同氏は座学よりも、専ら「実業」に興味があったと言います。

シェルドン・アデルソン氏が米国のビジネスコミュニティの中で広く知られる様になったのは、1979年同氏が48歳の時。コンピュータの利用が徐々に広がり、主にビジネスで利用される様になった初期の頃に彼が立ち上げたコンピュータ展示会「COMDEX」が世に知られる様になってからでした。その後、COMDEXはコンピュータの一般家庭への普及につれて着々と大きくなり急成長、世界最大のコンピュータの祭典として知られる様になりました。

そして、アデルソン氏が「カジノ」に関わることになったのは、1988年に彼が行ったラスベガスカジノ、Sandsの買収。但し、彼の当初の買収の目的は「カジノ」に重きがあったわけではなく、あくまで当時彼が主たる事業としていたMICEビジネスでした(※MICE:展示会や国際会議などの産業の総称)。

1980年代から大型リゾートホテルの開発が進み、一気に「世界のエンターテイメント首都」として知られるようになったラスベガスでありますが、同時にその街の持つ客室供給量の大きさに注目が集まり、「万人単位」の参加者を一挙に集める世界規模のコンベンションや見本市が毎年開催されるMICE都市としても知られるようになっていました。そして、そのラスベガスを拠点にしていた見本市の一つが、アデルソン氏が率いるCOMDEXであったわけで、同氏はそのMICE事業の拡大を目的として当時のSandsの買収を行ったのでした。アデルソン氏は、買収したSandsに隣接する用地に「Sands Expo&Convention Center」を建設、1990年に開業した同施設は開業当時、世界第2位の大型コンベンション施設として知られました。

1980年代当時から「MICE都市」として世界的に知られ始めていたラスベガスではありましたが、当時のMICEはあくまでカジノの本業であるエンターテイメントに付随するものであり、「主たる機能」ではなかったのも事実です。特に当時のラスベガスは、アデルソン氏と双璧をなすカジノ業界の「カリスマ経営者」として知られたスティーブ・ウィン氏の全盛の時代。スティーブ・ウィン氏は1980年代から1990年代末にかけて、まるでテーマパークの様なエンタメ特化型カジノ施設を市内で数多く開発し、そこに脚光が集まっていた時代でありました。一方で、アデルソン氏の買収した旧Sandsは、必ずしも当時ラスベガス内で流行していたエンタメ要素に強いカジノ施設ではなかった。寧ろ、当時はあくまで「付随する機能」でしかなかったMICE施設を中核とした相対的に「地味な」施設であったのは事実です。

ところが、その「地味な」存在であったSandsの経営を通して、MICE施設とカジノのハイブリット化という当時のカジノ業界には存在していなかった新しい施設開発の潮流を確たるものにしたのが、まさにシェルドン・アデルソン氏でありました。同氏は1990年に開業した自身の「Sands Expo&Convention Center」とそれに付随する施設の経営によって、このビジネスモデルの成功に確信を持ち、カジノ開発業者としての道を本格的に歩み始めます。

1995年、アデルソン氏は自身が保有していた「虎の子」であるCOMDEXの運営権を日本の孫正義氏が率いるソフトバンクに売却。そこで得た8億ドルを原資に老朽化していたカジノ施設の再開発を行いました。その様にして完成したのが1999年開業のベネチアン・ラスベガス。その後のシェルドン・アデルソン氏のカジノ開発における「マスターピース」となる施設でありました。ベネチアンは、当時のラスベガスにおいて最高級と称されたスティーブ・ウィン氏による代表的な開発施設・ベラージオと並んでラスベガスを代表する高級カジノとして知られる様になりましたが、一方でその開発コンセプトは全く異なります。ベネチアンはカジノを中核とし、ショッピングセンターなどエンタメ施設は内包していますが、その主たる機能はビジネスコンベンション向けの施設。「Sands Expo&Convention Center」を中心としてビジネス客を大量に集客し、同一施設内で宿泊機能、料飲機能、「ビフォーMICE&アフターMICE機能」すべてをオールインワンで提供する。その「ビフォーMICE&アフターMICE機能」としてギャンブルやその他エンタメ施設が提供されるというカジノ施設でありました。

それまで、ラスベガスはレジャー客を中心とした週末および長期休暇の稼働が中心の街でありましたが、アデルソン氏が興したMICEを中心とした開発コンセプトは逆に平日に開催されるMICEイベントを中心にビジネス客が集まり、週末は「出張時の延泊の楽しみ」として稼働する。Sands社は、この様なカジノ開発をそれまでのエンタメ施設を中核にレジャー客を集めるカジノと対比する形で「MICE型カジノ」と呼称しました。この開発コンセプトには業界同業他社も同様に追随する様になり、レジャーとMICEはカジノの稼働と収益を高め為の両輪となりました。この頃からシェルドン・アデルソン氏は先にご紹介したラスベガスにおけるエンタメ型カジノ開発の基礎を築いたスティーブ・ウィン氏と並びカジノ業界におけるカリスマ経営者の「二大巨頭」として数えられる様になります。

そして、何よりもこのアデルソン氏の業界への貢献は、ラスベガスに留まらず「カジノ合法化」を世界中に広めたことにあります。2000年代に入って、世界の主要国は国際観光競争の中で「ビジネス観光」分野の強化にこぞって乗り出し、そのひとつの大きな柱として「MICE振興」強く打ち出しました。その中でスポットライトが当てられたのが、シェルドン・アデルソン氏の想起した「MICE型カジノ」という開発様式。MICE機能のみならず、同一施設内で宿泊機能、料飲機能、「ビフォーMICE&アフターMICE機能」すべてをオールインワンで提供するこの様な施設開発の様式が、各国のMICE誘致にとって強力な武器になるということが社会的に評価されることとなり、これが各国のカジノ合法化の大きな一要因になりました。

そして、その世界中で広がるカジノ合法化の波に乗り、アデルソン氏率いるSands社は世界中の新市場へと進出。MICE型カジノ分野では追随する同業他社を寄せ付けない圧倒的な競争力を持って、世界中のあらゆる将来有望な新市場における競争入札で勝利。いつしかアデルソン氏率いるSands社は常勝軍団と呼ばれる様になり、世界最大のカジノ企業となりました。

今回、87歳で没したシェルドン・アデルソン氏でありますが、同氏は足腰が弱くなった晩年も電動車椅子とプライベートジェットで全世界中を飛び回り、精力的に活動していたことで知られています。また、晩年は冒頭でご紹介した通り多くの政治家のパトロンとしても知られる様になり、特に自身の出自であるユダヤ系米国人コミュニティの地位向上の為に様々に尽力をしたことでも知られています。ちなみにユダヤ教は必ずしもギャンブルを戒律で禁じているワケではありませんが、シェルドン・アデルソン氏自身はプライベートではギャンブルを好んで遊ばないことを事に触れて表明をしており、「ギャンブルをしないカジノ経営者」の代表格としてカジノ業界では知られていました。

同氏がカジノ業界内外にもたらした様々な業績は、永遠に歴史に刻まれることでしょう。親族、近親者の皆様方にはお悔やみを申し上げます。

あくまでまだ「原案」として、との事ですが、7日に決定すると言われている首都圏に再発令される緊急事態宣言に関して、その自粛対象に飲食店のみならずパチンコ店を含む遊技場がまた含まれるとの一報が出回っております。以下、twitterからの転載。

(※2021/01/06追記:TBSが【独自】として報じた最初のニュースを削除した模様です。)

一方で、1月4日に報じられた小池・東京都知事による会見では「分析結果をもとに的を絞って実行力を上げる」という話だったハズなのですが、あれはどこに行ったのでしょう。以下、日刊スポーツからの転載。



小池都知事コロナ対策「的を絞って実効性を上げる」
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202101040000902.html

「これまでとまったく異なるステージ。すべてを止めるのではなく、的を絞って実効性を上げる。飲食店の営業時間短縮を中心に人と人の接触を徹底的に防ぐことが必要」と説明。感染拡大の分析結果をもとに、飲食店に重点を置く構えだ。


コロナ感染拡大の第二波ではあらゆるサービス業種の中で真っ先に「犯人扱い」され、魔女狩りの如く吊るし上げを受けたパチンコ産業でありますが、そもそも第二波の時も含めてパチンコ店を原因としてクラスター発生が起こったとする事例は報告されていません。またその後、あらぬ社会的批判から業界自身を守る為、業界側はパチンコ店における換気機能がその他業種と比べてはるかに高いことを専門家を交えた実証実験によって論証、その様な業界努力も完全無視ですかね?以下、10月に実証実験結果が報じられたサンスポからの転載。



「パチンコホールは『三密』を回避できる可能性が高い」換気実証実験映像 発表会レポート
https://www.sanspo.com/etc/news/20201028/pac20102811510003-n1.html

今回の実証実験では、ホール内にスモークを充満させ、営業時と同条件で換気。10分後の状態を検証すると、ホール全体に充満していたスモークがほとんど排出されるということが分かりました。

この結果に三鴨教授も太鼓判。新型コロナウイルス対策にも極めて有用な換気システムで、三密のひとつ「密閉」対策としては、ほぼ完璧だと語ります。また、「密接」と「密集」に関しては、台と台の間にアクリル板を設置することで対策がなされていると説明されました。


この様に続けられてきた科学的検証を全く無視して、社会批判が集まり易いというだけで特定業界を「自粛対象として残す」のだとすると、小池知事が年初の会見で述べた「分析結果をもとに的を絞って実行力を上げる」とする宣言は一体何だったのか、という話になります。現在出回っている報道はあくまで未だ「原案」の段階だとの事でありますが、最終的に出て来る自粛要請の内容はどの様なものとなるのか。

政治がポピュリズム的な煽動の「道具」として営業自粛を未だに扱うのか、それとも科学に基づいた「真摯な対策」としてそれを打ち出しているのか。それを判断する材料として、先行きを見守りたいと思います。

立憲民主党の神奈川県議会議員である赤野たかしさん(@takashi_akano)が、元日早々に寝言を言っていて休日気分が吹っ飛びました。以下、タウンニュースからの転載。


カジノに協力はNO

県は横浜市のカジノ誘致について「市の判断を尊重し、全面的に協力」としていますが、私はこれまでも「市に協力すべきでない」と強く県に申し入れてきました。

私が反対するのは、政治家となる前、競艇の収益金をもとに公益・福祉事業などを行う日本財団で働いていたからです。競艇は公営競技であり、「運営の厳格さ」が求められ、八百長行為は死活問題。一方でカジノは「客をだまして成り立つビジネス」。事前に払戻率もはっきりしません。

カジノへの賛否はそれぞれの政治信条に基づいて主張をして頂ければよろしいと思うのですが、ボートレース業界の中枢である日本財団から政治の世界へ転身した赤野たかしさんは、自身の出所であるボートレース業界に関して「『運営の厳格さ』が求められ、八百長行為は死活問題」などと評しながら、一方のカジノを「客をだまして成り立つビジネス」などと糾弾していらっしゃいます。ただ、この方、日本財団出身をえらくアピールしている割に、最近のボートレース業界の動向にはあまり詳しくいらっしゃらないのでしょうかね?

ボートレース業界では、昨年一月、公営競技史上最悪といわれる八百長事件が発生し、元トップ選手の一人であった西川昌希氏が逮捕される事件が発生しました。以下、当時の事件を報じた朝日新聞からの転載。


ボートレースで八百長した疑い、元競艇トップ選手ら逮捕
https://www.asahi.com/articles/ASN185Q6ZN18OIPE011.html

競艇で不正に順位を落とした見返りに舟券購入者から現金300万円を受け取ったとして、名古屋地検特捜部は8日、元競艇選手の無職西川昌希容疑者(29)=東京都練馬区=をモーターボート競走法違反(競走の公正を害する行為、収賄)の疑いで、西川容疑者の親族で塗装会社員の増川遵容疑者(53)=津市=を同法違反(同、贈賄)の疑いで逮捕し、発表した。2人の認否は明らかにしていない。


西川氏はその後、自身の起こした八百長行為に悪びれることもなく昨年末には暴露本を出版。ボートレース業界の八百長行為に反社会的組織が深く関与していること、そして西川氏自身の起こした八百長問題をボートレース業界が業界ぐるみで隠蔽し、もみ消しを図っていたことなどを赤裸々に描いています。

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競艇と暴力団 「八百長レーサー」の告白 
西川 昌希  (著)

更に最悪なことには、西川氏はボートレース業界に巣食う八百長行為は自分のみに留まらないことを、その後のメディアインタビューにおいて繰り返し告白している状況。以下、昨年11月に報じられたNEWSポストセブンからの転載。


収監八百長ボートレーサー告白 手を染める人間は他にもいる
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c0502793c2beb4d109e3309716af89ee7b7a3b1

「ボート界には今も八百長が存在します。俺の不正にも共犯者がいたし、誰が、いつ、どのレースで八百長をしたかも、具体的に証言できます」 取材に応じた西川氏は、髪を短く刈り込み、坊主頭になっていた。


要は、ボートレース業界こそ現在進行形で業界に内在するドロドロの八百長行為が露呈し、炎上しまくっている業界であるわけで、冒頭でご紹介した立憲民主党の赤野たかしさんは撚りによってこのタイミングで「競艇は公営競技であり、『運営の厳格さ』が求められ、八百長行為は死活問題」など主張しながら、他業界を「客をだまして成り立つビジネス」などと糾弾しているわけであります。

今回、赤野たかしさんは日本財団出身の議員として「八百長行為は死活問題」などと堂々と胸を張って宣った訳ですから、現在進行形で八百長問題が発覚し、あまつさえその不正を業界全体で隠蔽を図ったボートレース業界のクビを己の議員生命をかけてきっちりと取って頂きたい。それくらいの責任を示した上での、他業界に対する「客をだまして成り立つビジネス」批判であるべきでしょう。果たして、彼は自ら放った放言の責任をキッチリと取れる議員なのか、今後の赤野たかしさんの言動を引き続きウォッチし続ける所存です。

さて、年明け早々ボートレース業界から以下の様な朗報が届きました。以下、東スポwebからの転載。


ボートレースの2020年次総売り上げが史上5位に
https://news.yahoo.co.jp/articles/4996eb26c201093902fa78004b5623c936f6cc1b

ボートレースの2020年次(2020年1月1日~12月31日))の総売り上げが1兆9014億8760万2100円(前年比123.9%)を記録したと1日、日本モーターボート競走会が発表した。この売り上げ額は1993年以来となる1兆9000億円超えで、ピークだった1991年(2兆2200億円強)、第2位=90年、第3位=92年、第4位=93年に続く、史上5位の記録となった。


公営競技が最も好調だった時期である90年代冒頭の頃に迫る勢いで売上を伸ばしたボートレース業界からの一報ですが、これに先立つ形で昨年末には中央競馬の方からも以下の様な報道が行われました。以下、中スポからの転載。


【中央競馬】JRA年間売り上げ2兆9834億円…コロナ禍も9年連続アップ

JRAの年間売り上げは9年連続でアップとなった。日本中央競馬会は27日、2020年の中央競馬の総売り上げが、2兆9834億5587万2000円で前年比103・5%となったと発表した。新型コロナウイルス禍の中、9年連続の増加となった。


ということで、コロナ禍にも関わらず大変好調な公営競技業界でありますが、その大きな要因となったのがオンライン投票の普及。コロナ禍の発生により競技の開催中止に追い込まれたあらゆるスポーツ競技をしり目に、公営競技はこの1年の間「無観客試合&インターネット投票」という組み合わせで競技の開催を継続。外出自粛要請などによる「巣ごもり消費」を寧ろ追い風としながら、ガンガン新規の顧客を取り込み、売上を伸ばしてきました。

この辺りの構図は、実は弊社が昨年末に実施した「各ギャンブル型産業、コロナ影響調査」の結果にも明確に現れておりまして、間近1年で中央競馬以外の公営賭博に参加した人の中で「今年初めて参加した人、もしくは昨年は参加していなかった参加復帰者」は全体の12%と、中央競馬の」8%、パチンコの6%を大きく上回ることとなりました。

実施日:2020年12月7日
対象:間近一年でパチンコおよび公営賭博に参加したユーザー150人
調査手法:インターネット調査
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この様に好調な公営競技と対照的に、我が国に存在する既存のギャンブル型レジャー産業の中で圧倒的な「ひとり負け」状態が明らかになったのがパチンコ業界です。パチンコ業はコロナ禍にあえいだ間近一年での新規顧客、もしくは復帰者の取り込みが全体の6%程度と公営競技と比べると振るわなかったのに合わせて、参加頻度においてはユーザーの53%が「一昨年よりも参加頻度が減少した」と回答、中央競馬や中央競馬以外の公営競技と比べると、全体の参加頻度を減らしていることが判りました。

この理由は明確で、各種公営競技がネット投票によってコロナ禍の最中においてもファンのゲーム参加の維持が出来たのに対して、法制上、オンラインでのサービス提供が認められていないパチンコ業界はそれが出来なかったこと。また、特に昨年の前半ではパチンコ店でのクラスタ発生などは確認されていなかった状況下であったにも関わらず、国の主要閣僚や一部の都道府県知事などがパチンコを名指しして一種の「吊るし上げ」を行い、事業者やそのファンが社会的糾弾のターゲットとなったことなどの影響もあるのだろうと思われます。

上記調査に関する詳細に関しては、以下リンク先のYouTubeチャンネルにて詳細報告を行っておりますので、ご興味のある方はそちらも併せてご覧頂けましたら幸いです。

「大人の遊び」研究所/木曽崇
https://www.youtube.com/channel/UC0UueKrYPGueHItKNUthRWw/videos

さて、今日はちょっと専門的な難しいお話をします。

我が国の統合型リゾート内に設置されるゲーミングエリアには面積制限があります。ゲーミングエリアとは、カジノ施設内のゲームの提供を主たる目的とするエリアであり、具体的には統合型リゾートの総床面積の3%以内でなければならないという規定。これは統合型リゾートが単純賭博施設ではなく観光施設であることを法的に担保する為、我が国がカジノ合法化と統合型リゾート導入にあたって参考としたシンガポールを参考にして作られた規定であるとされています。

この様にゲーミングエリア面積に上限を設けるにあたっては、当然ながらゲーミングエリアの面積算定の「基準」というものが必要で、実はこの点に関しては既に業界団体側でも詳細な論議が始まっている状況。しかし、この論議を深めて行くにあたって私が驚いたのが、このゲーミングエリアの算定の手法論に関して皆さんあまり厳密な論考をされていないのだな、ということであります。

ゲーミングエリアの算定の方式は基本的に1)減算方式と2)加算方式という2つの手法が存在します。減算方式というのは、まずザックリと統合型リゾートの中の「カジノ施設」の定義を定めた上で、その中から「厳密にはゲームの提供を目的として使われておらず、面積制限に含めるべきではないもの」を減じて最終的なゲーミングエリアの面積を算出するもの。これはシンガポールのカジノ法制が採用している手法です。シンガポールのカジノ管理規則ではカジノ施設とゲーミングエリア、そしてそれ以外の付帯エリアについて以下の様に定義しています。まずはカジノ施設の定義:


“casino premises” means the areas defined by a casino licence under section 51 of the Act for the conduct of casino operations, which shall be made up of gaming areas and ancillary areas;

カジノ施設とは、法51条のカジノライセンスによって規定されるカジノ運営を行うエリアであり、ゲーミングエリアおよび付帯エリアによって構成される。
(出所:シンガポールカジノ管理(レイアウト)規則第2条)


さらに同規則はカジノ施設を構成するゲーミングエリアと付帯エリアの定義を以下の様に定めます。


“ancillary area” means any of the following areas within the casino premises:
(a) major aisles, the maximum area of which shall not exceed such limit within any part of the casino premises as the Authority may, from time to time, specify;
(b) back-of-house facilities;
(c) any reception or information counter;
(d) any area designated for the serving or consumption of food and beverages;
(e) any retail outlet;
(f) any area designated for performances;
(g) any area designated for aesthetic or decorative displays;
(h) staircases, staircase landings, escalators, lifts and lift lobbies;
(i) toilets;
(j) such other area not intended to be used for the conduct or playing of games or as a gaming pit as the Authority, when defining the boundaries of the casino premises or on the application of the casino operator, may allow;

付帯エリアとは、カジノ施設内の以下のエリアを意味する。
(a)主要通路、カジノ施設内での最大面積は当局がその都度示す基準を超えてはならない
(b)バックオフィス施設
(c)レセプションおよびインフォメーションカウンター
(d)飲料および食品の消費および提供の為に指定されたエリア
(e)小売り店舗
(f)パフォーマンス用の指定エリア
(g)装飾品やディスプレイ用の指定エリア
(h)階段、踊り場、エスカレーター、エレベーター、エレベーターロビー
(i)トイレ
(j)ゲームプレイおよび実施の為に使われないエリア、およびカジノ事業者の申請書によってカジノ施設内で境界線が明示され、それを当局が認めた場合のゲーミングピット

“gaming area” means any area within the casino premises other than an ancillary area;
ゲーミングエリアとは、カジノ施設内の付帯エリア以外の部分である


上記をまとめると、シンガポールの法制ではカジノ施設を「ゲーミングエリアとその他付帯エリア」の2つに分類した上で、まず法令によって付帯エリアとして定義される施設を規定し、カジノ施設内で付帯エリアとして位置付けられていないエリアを全てゲーミングエリアと呼ぶという構造をとっているワケです。そして、このゲーミングエリアに対して統合型リゾート内での設置面積上限を設ける。このシンガポールの様な面積上限の設け方を私は個人的に「減算方式」と呼んでいます。

シンガポールの面積制限規定を参考としたとされる我が国のカジノ法制でも、この減算方式が使用されるという前提で論議を始める人が多いのですが、必ずしもその様な法制になるとは限りません。というよりも、法の規定に「正確に」沿った規定を設けようとした場合、日本の面積制限はこの減算方式であってはならないのです。日本のカジノ規制を定めるIR整備法では、この面積制限に関して以下の様に規定を行っています。


IR整備法第41条第1項第7号
申請認定区域整備計画に記載された特定複合観光施設区域におけるカジノ施設の数が一を超えず、かつ、当該カジノ施設のカジノ行為区画のうち専らカジノ行為の用に供されるものとしてカジノ管理委員会規則で定める部分の床面積の合計が、カジノ事業の健全な運営を図る見地から適当であると認められるものとして政令で定める面積を超えないこと。
(※下線は筆者)


日本のIR整備法では、政令で定める面積上限の対象を「カジノ施設のカジノ行為区画のうち専らカジノ行為の用に供されるものとしてカジノ管理委員会規則で定める部分の床面積の合計」と規定しています。要はシンガポールの法令が、全体カジノ施設の面積から「付帯エリア」として定義されるものを減算したもの全てを「ゲーミングエリア」と呼び面積制限の対象としているのに対して、日本のIR整備法は「カジノ行為区画のうち専らカジノ行為の用にきょうされるものとしてカジノ委員会規則で定める部分の床面積の合計」が面積制限の対象であるとしている。

この法律に「正しく」則るのならば、上記条文に基づいて制定されるカジノ管理委員会規則は「専らカジノ行為の用に供されるもの」と考えられる床の用途を具体的に指定した上で、それら床面積の合計を面積上限の対象としなければならない。要は、シンガポールの法令が「減算」を前提として設計されているのに対して、日本の法令は専らカジノ行為の用に供されるものと規定される床面積を「加算」してゆくことを前提にして法律が設計されてしまっているワケです。

この様にそもそも「シンガポールの面積上限規定を参考にして…」として作られた我が国のIR整備法が、シンガポールの制限の在り方とは異なる形で作られてしまったことが意図的なのか、もしくは事故的なのかは、この法文を起案した当時の担当役人しか判りませんが、少なくとも現状の法律が「この様に作られている」ことから我が国のIRにおけるカジノ面積制限は論議を開始しなければならない。

カジノ面積制限はシンガポール法制に則った減算方式が相応しいのか、我が国の法が規定する加算方式が相応しいのか。はたまた、どちらが「相応しいか」の議論の前に、現行法制の中でシンガポール式の減算方式を採用することが運用解釈上可能なのか? まずはこの辺りから論議を重ねて行く必要があります。

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