カジノ合法化に関する100の質問

日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ

さて、youtube側の僕のチャンネルにて、日本eスポーツ連合(通称:JeSU)が昨年秋に発表をした「JeSU参加料徴収型大会ガイドライン」に関する致命的な問題点を指摘する動画をアップしました。本動画は、本来彼らが当該ガイドラインを発表後に後続でリリースするとしていた「eスポーツ大会かんたんマニュアル(仮称)」の発表を待ってから更新しようと考えていたものなのですが、何故かその後JeSUさんから当該マニュアルがリリースされないので、仕方なく僕の動画側の更新を先行させたものであります。



詳細に関してはもっと複雑な規定がありますので動画側を参照して頂ければと思うわけですが、JeSUが示したガイドラインは、eスポーツ大会の開催にあたって各選手から徴収する参加料が「当該大会を開催するための会場使用料その他大会の設営に要する費用にのみ充当」されるものであり、「参加料は大会設営費用の一部を負担させることを目的とするもの」であるということを明確に担保させることによって、当該大会の「営利性」を否定し、風営法の適用除外をさせようとするものであります。

風営法の運用では、eスポーツとは別の分野において類似する論法で法の適用除外となる事例というものは確かに存在しており、この論法で一見、法適用を回避できるように見えるかもしれません。しかし、実はその別分野に適用されている適用除外規定にには「イベントの主催者に対して会場設置者が営業所を有償で貸す行為には会場設置者側に営利性が認められる」との規定が併せて定めてあり、この論法だけでは参加費徴収型のeスポーツ大会における風営法上の課題が完全に払しょくできているとは「いえません」。

現在のJeSUが示すガイドライン「だけ」を論拠として参加費徴収型のeスポーツ大会を行う場合

①無償の会場を使う
②風営5号の営業許可を取っている会場(要はゲームセンター)を使う
③上記2つに当てはまらない会場を使って、会場設置業者に法的リスクを丸投げする

のいずれかでしか参加費徴収型の大会を行う事ができない事となります。逆にいうのならば、今回JeSUが発表しているガイドラインでもし本当に参加費徴収型のeスポーツ大会が風営法適用除外になるとするのならば、近い未来、会場設置者とイベント主催者を(便宜上)分離し、同会場でグルグルとeスポーツ大会を短期で廻し続けて参加料を徴収するという脱法ゲームセンター(本来は風営許可が必要)が世の中に沢山誕生することになります。

一方で実は、この会場設置者とイベント主催者を便宜上分離することで「風営法の適用除外を主張する」という行為は、2010年から全国一斉に摘発が行われたダンスクラブの業界で長らく使用されて来た論法で、1980年代まで「ディスコ」と呼ばれていた業態が、その後急に「クラブ」と自称するようになった経緯でもあります。風営法は1984年の大規模改正より、規制対象として当時、若者に人気となっていたディスコを規制することとなりましたが、その後、殆どの業者は「我々はただの会場貸し業者で、イベントは別の業者がやっています」を謳う事となりました。その時に彼らは、それまでディスコと呼ばれていた業態を「クラブ」と呼び替え、「自分達は規制対象業種ではない」ことを主張し始めたわけであります。

一方でその論法が通用しなかったからこそ、2010年から風営無許可営業として全国的なクラブ摘発が相次いだわけで、私の目から見るとJeSUが主張している「このガイドラインに沿っていれば、そのeスポーツ大会『は』法適用除外になりますよ」という主張は、寧ろその主張を論拠として脱法ゲームセンターを世の中に沢山生み出しかねない、非常に危ういものにみえてしまうわけです。(そして、そういう脱法業態が出てきた時点でJeSUによるeスポーツ振興は終わり)

では本来JeSUさんは何を論拠にeスポーツ大会への風営法適用除外を主張しなければならなかったのか。その点に関しては動画側で詳しく解説を行っておりますので、ご興味のある方は私のyoutubeチャンネル側の動画も併せてご覧頂ければ幸いです。

「大人の遊び」研究所/木曽崇
https://www.youtube.com/channel/UC0UueKrYPGueHItKNUthRWw

これまでJeSU(日本eスポーツ連合)さんと散々対立してきた私ですが、こればかりは認めざるを得ません。以下、engadget日本版からの転載。


「リアルタイムバトル将棋」JeSUライセンス認定タイトルに、4月からプロ認定大会を開催
https://japanese.engadget.com/nintendo-switchi-e-sports-084036416.html

シルバースタージャパンは3月1日、Nintendo Switch用ソフト「リアルタイムバトル将棋」が日本eスポーツ連合(JeSU)のライセンス認定タイトルになったことを発表しました。「リアルタイムバトル将棋」は将棋の基本ルールである先手後手という手番制をなくし、好きなタイミングで、好きな数だけ駒を動かして、玉将を取ったプレーヤーが勝利するという将棋です。


一昨年前、これまでその「必要性」を謳ってきた自前のプロ認定制度が、実は本当は必要なかったということをウッカリ告白してしまったJeSUさんでありますが、すでに形骸化してしまったこの制度の使い道として、上記は唯一にして大変意義ある使い方だと思うんですよ。

【参考】日本eスポーツ連合さん、うっかり自ら「プロ制度は不要」を証明してしまう
https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20190912-00142276/

そもそも将棋の世界にはプロ制度は存在しており、そちら側で何かしらの「プロ」の枠組みを作るのはそんなに難しいお話ではないですし、「将棋の世界での」格としては当然ながら日本将棋連盟さん側と連携した方が良いハズなんです。

で、ありながら「あえて」ここでJeSU認定をとって「プロ」を名乗るというのは、寧ろ今までの日本将棋連盟の枠組みではなく「eスポーツ」という枠組みの中で新しいファン層の獲得をしたい、おそらくそういう意図なのだと思うのですよね。そういう意味では「これってeスポーツなんですっけ?」という、非常に微妙なラインにいるゲーム種にとっては、(一応ながらも)日本eスポーツの世界で統括団体を名乗っているJeSUさんに認定を頂くことって、「我々もeスポーツです!」って堂々と名乗るにあたって非常に有効な手段だと思うんですね。

そう考えると、リアルタイムバトル将棋と同様にJeSUによるプロ認定制度を利用すべき対象というのが色々見えてきます。例えば、カジノの世界では上記でいうところの「リアルタイムバトル将棋」と全く同じコンセプトで開発された「リアルタイムバトル・ポーカー」と呼んでよいマシンゲームがすでに複数存在しています。例えば以下のような機種。



上記Grab Pokerは、本来ターン制で争うポーカーを文字通りリアルタイムバトル制で「必要なカードを奪い合う」仕様に置き換えた新しいマシンゲーム筐体で、(認可の下りている行政区では)カジノに設置可能なギャンブル機であります。これなんかは、上記でJeSU認定を受けたリアルタイムバトル将棋と全く同じコンセプトでゲームをポーカーに置き換えたものであり、リアルタイムバトル将棋がeスポーツの枠の中に入るのであれば、リアルタイムバトル・ポーカーだって同様にeスポーツの枠内に入って然るべきであります。

もっというと、我が国における射幸ゲームの代表格であるパチンコ/パチスロにおいても、主要メーカーのひとつであるサミー社が主導する形でそのプレイ技術を争う競技化が進んでおります。以下、現代ビジネスからの転載。


パチスロがスポーツに?サミー「Pスポーツ」に対するパチプロの本音

すでに海外はもちろんのこと、日本でも大きな高まりを見せる「eスポーツ」。そんな中、その動きが異なる業界にも影響を及ぼしている。
今年12月、パチンコ・パチスロメーカー大手のサミーは、パチンコ、パチスロの技術を競う大会として「P-SPORTS(ピー・スポーツ)」を発足。その第一弾として、優勝賞金331万円をかけた「超ディスクアッパー選手権」を開催することを発表した。同社は「遊技におけるスキル(技術)を中心に『スポーツ』と捉えた『今までにない新しい競技カルチャー』」を目指すという


例えばパチスロなんてのは、液晶ゲーム画面を備え、回転するリールをタイミングよく止めることで獲得する点数を争うゲームであるわけですから、(無理やり主張すれば)「我々はリズムゲームです」とも言えるわけで、寧ろサミーさんはPスポーツなんてヌルい事を言ってないで、パチンコ業界への新しいファン層の取り込み施策の一つとして寧ろ積極的にJeSU認定を取ってパチンコ/パチスロをeスポーツだと言い張るべきなんですよね。

…って考えてゆくと、実は現JeSUの会長はサミーと同様にセガサミーグループ傘下のセガ会長取締役の岡村秀樹さんなんですよね。そう考えると「なるほど、紆余曲折に見えたここまでのJeSUの組成はセガサミーグループの『100年の計』だったのか(棒」と。JeSUさんとeスポーツの新展開に、引き続き胸を躍らせながら彼らの今後の活動を生温かく見守って参りたいと思うところであります。

以下神奈川新聞からの転載。



カジノ収益、外国人客は「非課税に」 IR誘致で政府が方針明らかに
https://news.yahoo.co.jp/articles/77b91cdcc72c04bc81f6fc2b48afddb440228cec
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の国内誘致を巡り、政府は24日の衆院内閣委員会で、外国人客がカジノで得た利益は非課税とする方針を明らかにした。立憲民主党の阿部知子氏(12区)の質問に答えた。
与党は昨年末に決定した2021年度税制改正大綱で、カジノに関する税制について、日本人客には競馬など公営ギャンブルと同様に利益申告と課税を求める方針を盛り込んだ。一方、「訪日観光客誘致につなげる」として外国人客は非課税対象とするとした。

「外国人客がカジノで得た所得に対して非課税とする政府方針」ですが、このことそのものに対する賛否というのは色々あってしかるべきだと思うんですよ。特に、日本国内のギャンブル愛好者からすれば、彼らはそこに所得税が課されているワケで、徴税の公平性という意味ではそこに不満が生まれて当然だと思います。

一方で、痛烈な政府批判を芸風としていらっしゃる松尾貴史さんという俳優なのかコメディアンなのかよく判らないことで有名なタレントさんが、本件に関して以下の様なツイートをしていらっしゃっており鼻水を吹きました。以下、ツイッターからの転載。

今回の外国人客のカジノ所得を免税とするのと似たような目的をもって設定されている制度として、外国人客の消費税免税という制度があります。これは海外から日本へ観光に来ているお客様達が日本から持ち帰る「お土産品」に関して特定商業者から購買した物品の消費税を免除(事後還付)する制度であり、ここ数年の免税店申請の手続き緩和によって免税対象となる商業施設が急増しました。この施策は、日本を訪れる外国人のお客様にどんどん国内でお土産品を購入して貰って国富に繋げる、要は「外貨獲得」を目的とした施策であるワケです。

で翻って、冒頭でご紹介した「外国人カジノ客のカジノ所得非課税」に関してですが、当然ながら同じ様な目的をもってその制度の採用が検討されているわけで、松尾貴史さんは「外貨獲得も放棄?」などとトンチンカンなコメントをしていますが、寧ろこの施策そのものが外国人のお客様に日本国内でドンドンお金を落として下さいという「外貨獲得」を目的した政策であるわけです。

ということで、本政策は松尾さんの御心配されている「外貨獲得の放棄」ではなく、むしろ「外貨獲得を推進」する為の政策ですので、安心してカジノに賛成をして頂ければ幸い。但し、繰り返しになりますが、徴税の公平性の観点からはまだまだ論議の多い施策(特に日本人ギャンブラー視点で)でありますので、その点は当方としても更なる論議を深めてゆきたいと思っておるところです。

以下、朝日新聞からの転載。


海外ギャンブルサイト、日本の「客」急増 捕まらない?
https://www.asahi.com/articles/ASP265R1KP1GUUPI002.html

オンラインカジノなど海外を拠点とするネットギャンブルサイトへの日本国内からのアクセスが増えている。参加への登録は手軽で、日本語で参加を促すサイトもある。日本では賭博が禁じられており、海外のサイトであっても賭けていれば違法になりうるが、証拠が集めにくく摘発のハードルは高いという。


上記調査報道の中では、日本から最多のアクセスを誇る海外カジノサイト「ベラジョンカジノ」へのアクセス数が2018年12月には約65万件だったものが、増減を繰り返しながら2020年11月には4,983万件まで急増しているという衝撃の事実が報じられています。

この様な海外カジノサイトの急成長の背景にあるのが、コロナ禍で「内籠り」する消費と、それを狙った海外事業者によるマーケティング攻勢であります。例えば上記朝日新聞の報道内で日本からのアクセス最多と報じられた「ベラジョン」ですが、当該事業者はニッポン放送の人気深夜ラジオ番組「オールナイトニッポン」のスポンサーとなり、マス広告を平然と公共の電波に流し始めています。例えば、去年の半ばあたりからスポニチで人気タレントを使いながら広告記事を頻繁に掲載している「ミスティーノ」ですが、これも海外を拠点とするオンラインカジノ業者です。

【参考】橋本マナミと松井珠理奈が花魁のコスプレ姿でオンラインカジノゲーム「ミスティーノFREE」を妖艶プレー
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2021/02/01/kiji/20210201s00041000267000c.html

上記紹介のベラジョンもミスティーノも「Free」と名付けた賭けられないサービスを謳っていますが、その一方で「安全安心の日本語サポート 初心者にも優しい! 」「日本最高のオンラインカジノ」などとして、ガッツリ賭けの行える日本語サイトをその横で堂々と運営しているワケで、彼らが何を目的として「無料版」などと称して広告を打っているのかというのは一目瞭然でしょう。

【参考】ベラジョンカジノ
https://www.verajohn.com/ja
【参考】ミスティーノカジノ
https://www.mystino.com/ja/


【追記 2021/02/09 13:43】
上記ご紹介のネットカジノのプロモーション以外にも、私が更に愕然としたのは長らく海外カジノ情報サイトとして日本のカジノファンを集めて来た「リゾカジ」というサイトが、ネットカジノのPRを始めた事。当該サイトの運営元は大阪市のIR推進会議委員も務めた大阪IR誘致の筆頭格の人物が代表を務めているハズですが、一体どういう解釈と経緯で、このプロモーションを良しとして始めたのか。私には皆目見当が付きません。

この様な状況下にあって、日本社会にオンランカジノの浸食がどれほど進んでいるのかを知ることを目的とし、弊社・国際カジノ研究所は昨年11月に行った「ギャンブル型レジャー参加実態調査」の中で、国内オンラインカジノ利用者数の推計を行いました。

各性/年代別オンラインカジノ利用率
onlinecasino
実施:国際カジノ研究所
対象:国内男女1,000人
手法:性年代別にインターネット調査パネルから無作為抽出し、ウェイトバック集計

当該調査の結果によると、我が国居住者のオンラインカジノ経験率は「人生の中で一度でも利用したことがある」と答えた生涯経験率が2.3%の国内推計288万人、「間近1年で利用したことがある」と答えた現役ユーザーとしての経験率が1.6%の国内推計203万人であることがわかりました。ボリュームゾーンとなったのは、30代から40代の男性でこの層では8%以上の者がオンラインカジノの利用経験があることが判っています。

この様に日本で海外オンラインカジノの攻勢が止まらない最大の要因は、日本の消費者の持つオンラインカジノに対する違法性認識そのものです。2020年9月に弊社が国内男女100人に対して実施した「日本国内からのオンラインカジノ利用に対する違法性認識」に関するアンケート調査では、国内からのオンラインカジノ利用が違法であるという正しい認識を持っていた者は全体の41%。それと同じ比率がその行為を「グレーゾーン」と認識しており、18%に至ってはそれが適法であると認識している事が判っています。一般国民の大半がその行為そのものの違法性認識を持っていないワケですから、海外事業者が日本に向かってマーケティングをすればしただけ、その利用者が増えて行くのは当然のことであります。

オンラインカジノ

実施:国際カジノ研究所
対象:国内男女100人
手法:性年代別を実際の日本社会の人口構成比に合わせてインターネット調査パネルから無作為抽出

一方で、この様な海外オンラインカジノの攻勢に対して、日本側の対策が行われているのかというと、各担当省庁がその責任を完全に「たらい回し」にしている状態であり、その対策は一切存在していません。2018年4月10日の参議院財政金融委員会において、藤末健三議員(自民)は法務省や警察庁、IR推進本部事務局など、カジノや刑法賭博罪に関係する省庁に対して一連の質疑を行い、以下の様にその質疑を締めくくっています。


藤末健三(自民党参議):

IR法ができて、日本で物理的なカジノができますよと。恐らく多くの方々がルールを理解し始めると思うんですよ。そして、ますますオンラインの方に流れていくと。そのときに全く規制がないという状況、本当に。誰が規制するのかといったら、ちなみにIR本部がやればいいんじゃないかと思われる方おられるかもしれませんけど、実は法的にIR本部は物理的なカジノしかできないようになっているんですよ。じゃ、誰がオンラインの方のをやるんですかといったら、警察庁はやりません、法務省はやりませんって、じゃ、誰がやるのという話になっているという状況でございますので、これを申し上げまして質問を終わらせてもらいますが、次回はきちんとペーパーも出して御質問申し上げますので、是非お答えください。両役所、お願いします。
(※下線は筆者)


要は、我が国においては現在拡大の一途にあるオンラインカジノへの対策を担当する省庁は「存在せず」、それが野放しにされているという状況。繰り返しとなりますが、この様な状況下では海外事業者が日本に向かってマーケティングをすればしただけ、その利用者が増えて行くのは当然のことであります。

我が国では2016年のIR推進法、2018年のIR整備法と、国政における大きな論議争点として我が国におけるカジノ合法化の是非が数年にわたって論議されて来ました。2018年に成立したIR整備法ではカジノの誘発する依存問題を抑制する為、週7日/月10日というカジノへの入場回数制限が課され、また本人や家族の申請によって特定人物の入場を禁止する排除プログラムなど、日本で営業されるカジノ施設に対して様々なセーフガードを課しています。

この様な様々なルールの元で目下日本ではカジノを含む統合型リゾート開発計画が進んでいるワケですが、一方で実は我が国国民はネット上、伝統メディアを問わず海外のインターネットカジノ事業者の行うプロモーションに晒され、手元のスマートフォンや家庭のPCから、海外のカジノサイトにいつでもアクセスをし遊ぶことが出来る。これら海外のカジノサイトには当然ながら日本の法律は適用されず、IR整備法が日本の国内カジノに求めている様な社会的セーフガードは充てられていません。私を含めて長年に亘ってカジノ推進側で旗を振って来た人間達が、この状況を「よし」として良いわけがありません。

一方で、我が国のカジノ合法化と統合型リゾート導入に反対をし続けて来た人達はどうでしょうか。立憲民主党の枝野幸男代表は、昨年9月にも記者団に対して「トップダウンの政治と草の根の声に寄り添う政治の明確な対立軸の象徴がカジノ問題だ」と、現在の与野党の対立軸の一つを「カジノ」に置くことを宣言していますが、彼らがそのカジノ批判の柱としてきたのがやはり依存対策を含む社会的セーフガードの不備であります。

「現制度では依存の拡大を防げない」は元より「最大の依存対策はカジノを作らないこと」とまで彼らは主張してきたワケですが、一方で繰り返しになりますが我が国国民は既に手元のスマートフォンや家庭のPCから海外カジノサイトにアクセスし、いつでも遊ぶことが出来る。しかも、それら海外カジノサイトは「現制度では依存の拡大を防げない」どころか、日本の法と制度に基づいた依存対策なぞはなんら付されていないものであります。我が国のカジノ合法化に反対し、そのリスクを声高に主張してきた人であればあるほど、現在の海外カジノサイト状況に対して怒りの声を挙げなければいけない。

要はこの問題はカジノ推進であろうが反対であろうが、与党であろうが野党であろうが、これまでの国内カジノに関する論議経緯に基づけばそこに意見対立というのは存在していないハズ。こうやって私が原稿を書いている間にも、海外のインターネットカジノ事業者はコロナ禍に乗じてネット上は元よりマスメディアにも既に侵食し、顧客拡大を図り、日本国民から売り上げをあげている。そして、現状放置をする限り、その状況はますます拡大して行くわけであります。そろそろ私達は、この問題に対して重い腰を挙げるべきタイミングなのではないでしょうか?

この他、本記事内でご紹介した弊社によるインターネットカジノに関する各種調査は、弊社YouTubeチャンネルにて公開しています。詳細にご興味のある方は以下のリンク先からどうぞ。
https://www.youtube.com/channel/UC0UueKrYPGueHItKNUthRWw

もうね、観光庁長官の年頭所感とか読むと、絶望しかないワケですよ。以下、トラベルボイスからの転載。


【年頭所感】観光庁長官 蒲生篤実氏 ― 政府一丸で観光回復へ、5本柱の政策プランで
https://www.travelvoice.jp/20210101-147851

観光庁長官の蒲生篤実氏が2021年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。蒲生長官は、年末年始は全国一律に一時停止としたGoToトラベル事業について、感染拡大を早期に落ち着かせて同事業を再開することが最大の支援策とし、2021年も適切に運用していく考えを示した。

さらに、感染拡大防止と観光需要回復のための政策プランについて、本年に取り組む5つの柱を紹介。国内旅行の需要喚起とともに、2030年6000万人の目標に向けてインバウンド回復への備えを進めるとしている。


感染再拡大と新たに始まった営業自粛要請に苦しむ観光業界を前にして、未だこんな大本営発表を年頭所感として発表する観光庁ってどうなんすかね、としか申し上げようが御座いません。蒲生長官が示した「5本柱」と称される2021年度施策は以下の通り;

1. 感染拡大防止策の徹底とGoToトラベル事業の延長等
2. 国の支援によるホテル、旅館、観光街等の再生
3. 国内外の観光客を惹きつけるコンテンツ造成
4. 観光地等の受入環境整備(多言語化、Wi-Fi整備等)
5. 国内外の感染状況等を見極めた上でのインバウンドの段階的復活

私は政府によるGoToトラベル構想が企図された当初のころから、現在我々が直面しているコロナ禍はその疾病の性質上「行きつ戻りつ」の繰り返しにしかならない前提で、観光業界自身がこのwithコロナ期に順応する為に、業界構造、ビジネスモデル、そして収益性に至るまで「変容」をして行かなければいけない。GoToトラベルはその様な変容を完了するまで、業界が「最低限生き残る」為のカンフル剤でしかなく、それ自身はなんら問題解決となるものではない、と申し上げて来ました。

【参照】GoToトラベル:変わらなきゃいけないのは観光産業
http://www.takashikiso.com/archives/10261280.html

ところが、観光庁は感染再拡大が始まったこの期に及んでも「GoToトラベルの再開と感染拡大防止策の徹底でこのコロナ禍を乗り切るのだ」との大本営方針を崩さず、業界そのものの質的な変化に関しては一切進める気がない。上記の5本柱でいうのならば、1に示された「感染拡大防止策の徹底とGoToトラベル事業の延長等」以外は、コロナ禍が発生しする前から存在した施策の焼き直しの施策ばかりです。それのどこが「コロナ禍対応なんだ」と。

そのことは、冒頭でご紹介した観光長官の年頭所感における以下の部分に象徴されていると言えるでしょう。


年末年始においては、12月11日の新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言を踏まえ、全国一律に本事業を一時停止しておりますが、感染の拡大を早期に落ち着かせて、本事業を確実に再開することこそが最大の支援策であると考えており、本年においても、感染拡大防止策を徹底しつつ、本事業を適切に運用してまいります。


上記には「本事業(GoToトラベル)を確実に再開することこそが最大の支援策」などとのコメントが紹介されていますが、要は観光庁としては、カンフル剤(GoToトラベル)を投与して延命を図る以外にコロナ禍に対応する策を持っておらず、医者で言えば完全に治療を放棄した状態であるということであります。本当にこの国の観光政策には絶望しかない、これはコロナ禍が発生したこの1年弱のあいだ、何度も当ブログで申し上げて来たフレーズであります。

観光業界ではコロナ禍が発生した直後、安倍政権下で発令された緊急事態宣言下において、「withコロナ」期を乗り切る為の施策としてマイクロツーリズムという新しい観光の形式が一時的にもてはやされた時代がありました。マイクロツーリズム振興とは、感染症と共に生きるwithコロナ期の生き残り策として、近隣都市からの小グループ旅行を中心に産業が維持できる体制を早急に作るべきだとする考え方。事業者でいうのならば、いまや日本国内最大となった温泉旅館業者である星野リゾートの星野佳路さんあたりが強力に旗振りをしていた考え方であり、私も業界専門家として同時期に同テーマでメディアに引っ張り出されたりもしました。

【参照】東洋経済:特集『賢人100人に聞く!日本の未来』
観光産業で生き残る地域・企業の条件、「人数から金額重視」に転換せよ#31
https://diamond.jp/articles/-/249002

一方で、この業界の「変容」を推し進めようとするマイクロツーリズム振興に対して完全無視を決め込んだのが、こともあろうか観光庁そのもの。各観光地で商業を営む業者よりも、そこに送客を行う旅行代理店や公共交通業者の生き残りを重視する観光庁は、一時は業界内のみならず、一般メディアをもあれだけ席巻したマイクロツーリズムの「マ」の字にすらあらゆる行政文書の中で言及せず、GoToトラベル事業に邁進。その後のGoToトラベルによる「俄か景気」の狂乱によって、業界変容の必要性を訴える声は全くかき消されてしまったのは、皆さんもご承知の通りであります。その辺りの詳細に関しては以下リンク先を参照。

【参照】この国の観光政策には絶望しかないんだな、という話
http://www.takashikiso.com/archives/10266631.html

一方で、ただただGoToトラベル景気の狂乱に踊り、その間になんら感染再拡大に向けた準備を行わなかった事のツケが今になって致命的な打撃となって帰ってきているのが観光業界であるわけですが、一方でコロナ禍開始当初から「業界の構造的変容」を主張し、その準備を重ねて来たホンノ一部の業者はこの感染再拡大にあたって何とか準備が間に合った、ともいえる状況。以下、1月14日に報じられた星野リゾートのプレスリリースからの記事。


星野リゾート、旅館客室で地域の伝統工芸を制作する体験を提供
コロナ禍のおこもり滞在時に
https://www.travelvoice.jp/20210114-147932

星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」は、全施設で「界のご当地おこもりグッズ」の提供を開始する。地域の伝統工芸品や文化にちなんだプログラムを、客室で自分だけで完成・完結できる体験を用意するもの。

コロナ禍で旅行に制限があるなか、地域の温かみが伝わるグッズでおもてなしとしてプロジェクトがスタート。宿泊者に客室で、土地ごとの個性や地域色が味わえるオリジナルグッズとともに充実した滞在時間が過ごしてもらい、完成品を持ち帰ってもらう。


このタイミングでこのプレスリリースが出せるということは、要は周辺競合業者がGoToトラベルの「にわか景気」に狂乱して、舞い踊っている中、足元でコツコツとその準備を重ねていたということ。「そりゃあ、そういう事が出来る業者は強いわ…」という感想しかございません。本来ならば、そうやって観光業者と地域連携の促進を旗振りするのが観光庁の役割であったわけですが、残念ながら九分九厘の観光業者はそういう準備もなく、沈没して行くしかないのが実情であります。

コロナウィルスに対するワクチンは治験段階を終え、一部でその投与が始まったものの、それが社会的に行き渡り集団免疫が機能する状態になるまでには、まだまだ時間がかかるとも言われています。もはやコロナ禍が始まって1年弱を経過してしまい、「遅きに失し」まくっている状態ではありますが、いまから改めて観光業界の構造変容を目指すのか、もしくは最早ここに至っては頭を窄めながら「早くこの災禍が終わりますように」と神頼みをするしかないのか。

観光業界はもはや「進むも地獄ならば、戻るも地獄」まさにそんな状況であるとしか申し上げようがない。本当にこの国の観光政策には絶望しかありません。

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