さて昨日、(一応)現状の我が国では最大野党ということになっている立憲民主党が中長期視点にたった基本政策を発表。以下、エコノミックニュースからの転載。
原発、安保、カジノ等で立憲らしさ滲む基本政策政権を目指す立憲民主党が30日、中長期的視野に立った「基本政策」を発表した。原発新増設は認めず、地元合意ない再稼働も認めない。共謀罪は廃止、安保法制の違憲部分は廃止措置を講じる。カジノ事業は廃止、内閣人事局の改革、選択的夫婦別姓制度の導入、知る権利の強化など自民党と違う立憲民主党らしい『選択肢』を示した。
やっぱりそうなるんでしょうねえ、という感想しかないのですが、「カジノ事業廃止」を基本政策に盛り込んでまいりました。実際、立憲民主党の公式サイトにも以下のように基本政策の記述が成されています。
まあギャンブル依存や治安・風紀の乱れを語るワリには、カジノ以外に存在している既存のギャンブル等産業に関しては一切触れないあたりが、全日本自治団体労働組合公営競技評議会(※公営競技場労働者による労組)を支持母体にガッツリと抱える立憲民主党らしいっちゃあ、らしいですが、いずれにせよカジノ廃止は同党の基本政策として深く打ち込まれる事となったようです。
カジノ事業の存続に関しては、我々カジノ業界においては「10条問題」と呼ばれる非常に大きな問題が知られています。10条問題とは、IR整備法第10条が定める国によるIR区域認定の期間とその更新にまつわる問題で、IR整備法は以下のようにそれを定めています。
(認定の有効期間等)第十条 区域整備計画の認定の有効期間は、前条第十一項の認定の日から起算して十年とする。2 区域整備計画の認定を受けた都道府県等(以下「認定都道府県等」という。)は、区域整備計画の認定を受けた設置運営事業者等(以下「認定設置運営事業者等」という。)と共同して、区域整備計画の認定の更新を受けることができる。3 前項の更新を受けようとする認定都道府県等は、認定設置運営事業者等と共同して、区域整備計画の認定の有効期間の満了の日の六月前から三月前までの期間内に、国土交通大臣に申請をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により当該期間内に当該申請をすることができないときは、国土交通大臣が当該事由を勘案して定める期間内に申請をしなければならない。4 前条第五項から第九項まで及び第十一項から第十四項までの規定は、第二項の更新について準用する。5 第三項の申請があった場合において、区域整備計画の認定の有効期間の満了の日までに当該申請に対する処分がされないときは、従前の区域整備計画の認定は、その有効期間の満了後も当該処分がされるまでの間は、なお効力を有する。6 第二項の更新がされたときは、区域整備計画の認定の有効期間は、従前の区域整備計画の認定の有効期間の満了の日の翌日から起算して五年とする。
要は、国から都道府県等に与えられるIR区域整備の認定は「当初10年、その後5年ごとに更新が為される」とう規定であり、またその更新にあたっては都道府県議会の決議が改めて必要となるという規定であります。
この「10年-5年-5年…」という更新期間に関しては、その開発に多額の至近投入が必要となる大型開発を求めている我が国のIR導入方針にあって、その投資回収に要する期間を民間に対して制度が担保していないという点において、明らかな制度的瑕疵であると業界内で言われており、当ブログ上でも法案としてその内容が発表された時点からあらゆるタイミングでそこに言及をしてきました。
【参考】IR整備法10条問題:カジノ設置許可はたった10年
そして、今回立憲民主党が発表した基本政策の中に「カジノ廃止」が明確に盛り込まれたことで、この10条問題は改めてこの10条問題が顕在化したとも言える状況。党の中核的な政策方針を示す基本政策の中にこれが盛り込まれたということは、今後、立憲民主党の政策の中にはこの条項が生き残り続ける可能性が高く、立憲民主党がカジノ立地地域の首長を取る、もしくは議会の過半を取るなどと言うことがあれば、たちまちその地域におけるカジノ事業は廃止のリスクを負うこととなりますし、またかつての2009年の民主党による政権交代のように国政の主導権を彼らが握ることとなれば、IR整備法の存続そのものがリスクに晒されることとなる。我々にとっては由々しき事態であります。
この10条問題に関しては、そもそもIR整備法を起案したIR推進本部が法案そのものをパブリックコメントにかけないまま議会への提出を図ったことが問題の発端であり(我々業界専門家も閣議決定が為されるまでその内容を知らされていなかった)、また事後的に話を聞く限りでは「まさかこの規定が業界にとってそんな致命的なものになると思ってなかった」などとトボケたことを役所側は内々で言っているなどととも聞き及んでいるところですが、いずれにせよ法の起案を担当した役人(当時)の無用な功名心を発端とした大チョンボが、永遠に我が国での産業成立の「弁慶の泣き所」として残ってゆくのだな、と。
何ともひどい話だなと思いながら、今回の立憲民主党による基本政策の発表を眺めていた次第であります。