カジノ合法化に関する100の質問

日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ

昨日の続き。

私が現在の民主党観光政策の中で最も危機感をもって注視しているのが国際ハブ化政策である。JAL破綻問題に端を発した我が国の航空行政再編問題で、最初に前原大臣が打ち出したのが羽田空港の国際ハブ化構想のさらなる推進である。現在、羽田空港は国際路線の乗り入れに向けて2010年の完成を目処に新しい空港ターミナルが建設の途にある。これは自民党政権時代にすでに決定していた政策方針であるが、前原大臣は羽田空港の完全24時間化を目指すと共に、この国際ハブ機能をさらに強化すると発表した。

これ自体は非常に喜ばしい政策である。そもそもあまりに利便性が悪いとして世界的にも有名な成田空港は、早期から国際ハブ化を推し進めてきた韓国・仁川空港などに圧倒的に遅れを取っている。もはや日本国内から海外に飛ぶのにも、成田ではなく仁川で乗り継いだ方がが利便性が高いといわれる。成田を抱える千葉県、ハブ空港を目指してきた関空、中部国際空港などの個別の事情はあるだろうが、国家戦略として羽田のハブ化を目指すというのは多くの国民に支持されている。



ただし、そこで気をつけなければならないのが、交通の利便性が高まることが国際観光産業にとって必ずしもプラスに働くとは限らないという点だ。いわゆるストロー現象と呼ばれる効果だが、交通の利便性が高まると「入ってくるもの」も多くなれば、同時に「出てゆくもの」も多くなるからだ。

専門家として予言しよう。羽田空港のハブ化と本格国際空港化が進めば、特に欧米から訪日していたこれまでの外国人観光客は10泊11日の「日本ツアー」から、5泊日本・5泊韓国(もしくは台湾or香港)の「極東アジア周遊ツアー」へとその旅行形態を切り替えはじめるだろう。これは逆の立場で考えれば判る。我々がヨーロッパ旅行に行くとして、1カ国だけの滞在で満足するだろうか?せっかくフランスまで行ったのなら、もし交通の便がよいならば、お隣のベルギーにまでちょっと足を伸ばしてみたいと考えるのが普通だろう。日本と韓国の間は2時間半、新幹線で東京から関西圏にまで移動する時間と変わらない。近い将来、国際ハブ都市・東京に降り立った外国人観光客を国内の地方観光地と韓国が奪い合うようになる。

ここで昨日の投稿で論じた「頭数で観光客を捉えてはならない」という私の主張に繋がる。国内の空港行政問題の解消、JALの再建など交通政策の観点で考えれば、ハブ空港化で観光客の頭数が増えればそれで良いのだろう。しかし、もしハブ空港化で我が国への訪日外国人客数が伸びたとしても、各人の滞在時間が短縮してしまい、総体として国内に落とす消費金額が減ってしまえば国際観光産業は縮小してしまう。ハブ空港化にはそのような危険性が潜んでいるのだ。

そしてそれが実際に起こってしまったのが、今回のセミナーでご紹介したシンガポールの事例だ。

明日に続く。

弊社が毎月定例で行なっているカジノセミナーが先日終わったばかりだが、今回、そこでは「シンガポールの観光政策とカジノ合法化」をテーマとして扱った。
(セミナーで配布したディスカッションペーパーは以下のリンクから)
http://www.casinonews.jp/Seminor/singapore_casino.pdf

実はこの資料、以前、私が自民党政務調査会内に設置されたカジノ・エンターテイメント検討小委員会に招聘された時に、議員さん方および官僚さん方に対してご説明した内容に少し手を加えて再編集したものだ。これは、別に自社セミナーだったからといって手を抜いて使い回しの資料を用意したわけではなく、あえてもう一度このテーマを世の中に訴えてゆく必要があると考えた故である。



我が国の観光振興政策は旧・運輸省からはじまり現・国土交通省が管轄しているのもあって「交通政策」に異常に大きな比重が置かれてきた。その最たるものが「訪日外国人○○○万人」という数値目標。いわゆる日本を訪れる外国人の頭数(あたまかず)を具体的な目標として決めたものだが、ここに我が国の観光行政の穴が示されている。

当たり前のことなのだが、国際観光産業の規模は訪日外国人の頭数だけで決まるものではない。国際観光産業の規模は、常に

訪日外国人数×滞在あたり使用金額=国際観光収入

で決定するものなのだ。このような当たり前の理解に基づいて観光産業振興を考えるのならば、まず最初に目指すべき国際観光収入の数値目標が決まるはず。さらに、その目標に基づいて目指すべき訪日外国人数、および滞在辺り使用金額が決定し、それを実現するための具体的施策に論議が及ぶはずだ。しかし、我が国では国際観光振興施策となると、必ず「訪日外国人○○○万人」という数値目標が先走って決まってしまう。

この理由は簡単。我が国の観光政策が未だに交通政策に偏った視点で組まれているからである。運輸・交通業の観点からいえば「訪日外国人の数」そのものが市場規模を決定する最も大きな要因である。その先で「観光客が何にお金を使うか」、はたまた最終的な「国際観光収入が幾らになるか?」は当然「二の次」となってしまう。



そのような流れで出てきたのが10月に報じられた前原国土交通大臣の「訪日外国人3000万人プログラム」である。

予算要求4倍、国交省が観光に「本気」-訪日客3000万人めざす
http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=42595

前原大臣が「本気」なのは理解するが、何に向かって本気なのかというのが最も大きな問題。訪日外国人を増やすために何かをするのではなく、「国際観光産業の拡大」や「各地域の経済を支える域内観光産業の活性化」のために「訪日外国人の増加」が必要なのではないか? 本末転倒になってしまっているのである。

さらにいえば、今回の国土交通省の政策方針には、JAL破綻問題やそこから表面化した我が国の航空行政の問題など、民主党政権になってから噴出してきた様々な問題が深く絡んでいる。これまで官僚や政治家がJALに対して押し込んできた地方路線を、経済性に基づいてJALが廃止していった場合、全国に飛行機が飛ばない空港が沢山出てくるだろう。そうなってはマズイとJALへの財政支援と共に、突貫工事で策定されたのがこの観光振興計画である。なぜこのタイミングで、マニフェストにも載っていなかった観光振興政策が民主党政権から大々的に打ち出されたかは、こう考えてみると合点が行くことだろう。

しかし、JALの問題も、地方空港の問題も、ここで挙げられたどれもこれもが結局は交通行政上の問題であって観光振興とは直結しない。本来はこのような「交通行政」と、観光産業振興のための「観光行政」を明確に区分するために、昨年観光庁という省庁が生まれた。これは、国内の観光専門家が世の中に新しい観光振興の視点に基づく政策決定機関が必要であると訴え続けたことで創出された悲願の結果なのだが、未だにそれは適正に機能していないようだ。

実は、今回のセミナーでご紹介したシンガポールの事例は、まさに交通施策に偏っていた同国の観光行政が破綻し、その方針転換を迫られた事例をご紹介したもの。今、まさに前原大臣に読んで頂きたいディスカッションペーパーなのである。

この話題は明日に続く。

11月16日の投稿で解説したとおり、風適法はパチンコに一定の射幸心をそそる性質があることを前提に、それを刑法で禁止される「賭博」と明確に区別し、その営業を認めている。
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/774267.html

その中で最も重要なポイントとなるのは、パチンコが遊技業である限り「技術をもって遊ぶ」ことが主目的であるべきで、そこから得られる様々な結果はあくまで副次的なものでなければならないという点である。パチンコ店はその関係が逆転してしまうような著しく射幸心をそそる営業を行なってはならないし、遊技機はその射幸性(射幸心をそそる度合い)において、一定の基準を超えてはならない。このように考えると、パチンコ業における「射幸性」という概念は、その業の存在そのものを定義づける非常に重要な概念であることがわかる。

一方、それと比較してカジノというものを考えた場合、射幸性という概念はパチンコ業におけるそれほど重要ではないことがわかる。そもそも「賭博」として定義づけられるカジノにおいて、その営業や各種ゲームが射幸心をそそる性質を持っているのは至極当然のことである。あくまで「遊技」であらなければならない遊技業とは異なり、プレイヤーの主目的が「遊び」にあるか、もしくはその「結果」にあるかと線引きする事はそれほど意味を持たない。諸外国のカジノゲーム規定はそういった要素よりも、むしろ「ゲームとしての公平性」に重点をおいて制度設計が行なわれるのが一般的だ。

現在の我が国におけるカジノ法制論議ではこの辺りを混同して、カジノ業の中に遊技業における射幸性論議のようなものをそのまま持ち込もうとする向きもある。しかし、私はそれは完全に間違ったアプローチだと考える。一度、基本に立ち戻って「遊技とはなんたるか」「賭博とはなんたるか」という基本的な部分の再確認をすることが必要だろう。

私は、これを突き詰めてゆくと最終的には我が国におけるゲーミング産業の再点検に繋がると考えている。カジノ、パチンコ、公営賭博(ひょっとするとゲームセンターも)。我が国のゲーミング産業はそれぞれがバラバラの統制システムの下で動いているが、もう少し一体的な運用が行なわれても良いはずだ。

昨日からの続き

さて、ここでようやく私の本業のカジノの話に戻る。私が皆様から様々なご質問を頂く中で「パチンコと同様の三店方式でカジノを運営することはできないのか?」という問合せを頂く事がある。この三店方式を利用したカジノ運営は、1999年に石原都知事がぶち上げた当初のお台場カジノ構想においても検討されており、アイデアとしては昔から存在するものである。今日は、その点に関して言及してみよう。



三店方式とは、パチンコ業種で使われる特殊な賞品の流通方式であり、これを通すことによってパチンコプレイヤーは結果的に現金を手に入れることができる。そのカギとなるのが「特殊景品」と呼ばれるパチンコ店からプレイヤーに対して提供される賞品である。 三店方式は全国一律のものではなく都道府県によって微妙に異なるが、例えば東京都ではパチンコの賞品として1000円、および2500円相当の「金(きん)」を埋め込んだ2種類のカードを提供している。これは風適法に定める「賞品として現金や有価証券を直接提供してはならない」、「賞品単価は1万円以下」のどちらにも抵触しない賞品の提供である。

プレイヤーがこの賞品を売却してしまえば現金を手に入れられるわけだが、そこにはもう一つの制約がある。それが風適法23条に記載される「賞品の買い取り行為の禁止」である。この規定によりプレイヤーは直接、パチンコ店にそれを売却するわけにはいかないので、別の主体にその賞品を買い取ってもらうこととなる。それが、皆さんご存知の景品買い取り所である。ただし、風適法の運用ルールの中では、パチンコ店が第三者に指示して賞品を「買い取らせる」行為は、パチンコ店が賞品を直接「買い取る」行為と同義のものとされており、買い取り所はパチンコ店と明確に主体を分けた第三者でなければならない。そこで生まれたのが三店方式である。

 パチンコ店:賞品として特殊景品をプレイヤーに提供
買い取り所:プレイヤーから特殊景品を買い取り、卸業者に売却
卸業者:買い取り所から特殊景品を仕入れ、パチンコ店に販売

このような流通経路を通せば、特殊景品はパチンコ店にとって「卸業者から仕入れ、それをプレイヤーに提供する」という点では、その他の一般景品となんら変わらないものとなる。この流通制度は、1963年福岡高裁による司法判断の中でも「違法とはいえない」とされており、刑法にも風適法にも抵触をしない合法のものとして運用されている。



さて、本題はこの方式を利用して現在の風適法の元で換金可能なカジノをを運営できるかどうかである。結論から先にいえば、その答えは「NO」である。

その理由は2つある。

1.風適法の7号業種にカジノは含まれない
 現在、風適法でその遊技結果に対して景品の提供が許されているのは、風適法第2条1項7号に規定された7号業種のみである。現在の風適法上の運用ではカジノは2条1項8号で定められる8号業種とされており、ゲームセンターと同様のカテゴリとして規定される。8号業種は景品の提供が許されていないので、三店方式の前提となる特殊景品を提供することができない。

2.パチンコ店が設置して良い遊技機の中にカジノゲームが含まれない
それでは、名義上「7号業種」として申請した店で、無理やりカジノゲームを設置してしまえば良いのではないかと考える者もいるだろうが、それも不可能である。昨日の投稿で説明したとおり、風適法とその関連規則は7号業種に設置してよい遊技機をぱちんこ遊技機(パチンコ機)、回胴式遊技機(パチスロ機)、アレンジボール遊技機、じゃん球遊技機、スマートボール遊技機の5種と定めている。カジノゲームは、上記のどの遊技機カテゴリにも含まれないため、それを7号業種店舗に設置することは風適法上禁止される。また、少なくとも現在の法解釈の元では、カジノゲームがパチンコ店に設置してよい遊技機として認められることはありえない。

ということで、現行の風適法下で合法的にカジノ換金を行なおうとするならば、いずれにせよ法律の改正が必要となる。もし、現行で我が国に換金可能なカジノがあるとするならば、どのような手法を取ろうともそれはすべて違法なカジノである。このブログを読んでいる方々には、そのような場所には間違っても出入りしないことをお願いしたい。

ちなみに左上のプロフィールにもあるように、私は海外の合法的なカジノ産業の出身者である。違法カジノには一度も足を踏み入れたことも無ければ、今後も足を踏み入れるつもりはない。

昨日の続き。

非常に雑駁に解説すると、遊技と賭博を区分するための条件として風適法は以下の3点を示している。

1. 賞品として現金や有価証券を提供することの禁止

--------条文(読みたい人だけ読んで)----------
第二十三条  第二条第一項第七号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一  現金又は有価証券を賞品として提供すること。
二  客に提供した賞品を買い取ること。
三  遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。
四  遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。
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当たり前のことであるが、パチンコ店がその賞品として現金や有価証券を直接提供してしまえば、それは刑法の禁ずる「賭博」になってしまう。また、パチンコ店がプレイヤーに提供した景品をそのまま買い取ってしまえば、それもまた現金を提供したことと同義となる。よって、風適法はパチンコ店が直接プレイヤーから賞品を買い取ることも禁止している。ただし例外として、三店方式と呼ばれる方式を利用すればプレイヤーが最終的に現金を手にしても違法ではないことになっているのだが、これを正確に理解して頂くにはもう少し複雑な解説を要するので別の投稿でのちに解説する。

2. 遊技への参加料金と賞品価格に対する制限

----条文(読みたい人だけ読んで)------
第十九条  第二条第一項第七号の営業を営む風俗営業者は、国家公安委員会規則で定める遊技料金、賞品の提供方法及び賞品の価格の最高限度(まあじやん屋を営む風俗営業者にあつては、遊技料金)に関する基準に従い、その営業を営まなければならない。
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いくらパチンコ店がその遊技結果に対して賞品を提供することが許可されているとはいえ、無制限にそれが許されているわけではない。賞品の提供に関しても、あくまでプレイヤーの「射幸心」を過度にそそらない範囲内であることが義務付けられている。

その詳細は風適法下に定められる国家公安委員会規則に委ねられているが、現行のルールでは「賞品単価は1万円以下」とされている。これはパチンコ屋の賞品提供を、刑法185条後段の「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」という規定の範囲に留めるために、適当として判断される基準である。また、その遊技料金に関してはパチンコならば4円/玉、パチスロならば20円/コインが上限とされている。

3. 「著しく客の射幸心をそそるおそれのある」遊技機の設置を禁止

----条文(読みたい人だけ読んで)------
第二十条  第四条第四項に規定する営業を営む風俗営業者は、その営業所に、著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして同項の国家公安委員会規則で定める基準に該当する遊技機を設置してその営業を営んではならない。
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また、パチンコ店に設置できる遊技機も国家公安委員会規則でその基準が定められており、ぱちんこ遊技機(パチンコ機)、回胴式遊技機(パチスロ機)、アレンジボール遊技機、じゃん球遊技機、スマートボール遊技機の5種類が遊技機として認められている。それぞれの遊技機には、射幸心をそそる度合いを表す「射幸性」の基準が設けられており、その基準を超えるものは「著しく客の射幸心をそそるおそれがあるもの」としてパチンコ店への設置が禁止されている。

風適法は上記3要素を通して「遊技」と「賭博」を区分し、前者を合法的な営業行為としているのである。



さてさて、ここまでが私の解説する遊技産業の法的位置づけである。上記は皆様に判りやすくかなりザックリと解説しているものなので、この辺りに本当に興味がある方はぜひ弊社に直接お問合せを頂きたい。そもそも私は賭博たるカジノ産業の専門家であり遊技産業は少し専門を外れるので、弊社内の遊技業種専門家をご紹介する。

そんな私があえてここで遊技産業の解説を行なったのは、この理解が次にご紹介するカジノのお話に繋がってくるからだ。この続きはまた明日。

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