カジノ合法化に関する100の質問

日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ

本ブログを立ち上げてからちょうど1ヶ月が経過した。本ブログにはアクセス解析機能が付いているのだが、1ヶ月前に始めたばかりのサイトとしては私としてもちょっと驚くほどのアクセス数を頂いている。また、そのアクセス発生地域を見ると、全国のカジノ誘致を行なっている地域、特に頑張って活動を行なっている地域ほどアクセス数が多く、皆様の地域でのご努力がこういう数字に如実に出てくるんだなと感じている次第である。毎日アクセスを頂いている読者の皆様方には、改めてこの場を借りて御礼を申し上げたい。

ちなみに本ブログ内の著作物に関してだが、那覇商工会議所様などからは彼らが定期的に発行しているカジノ情報サービスに本ブログの記事を利用して構わないか?とご丁寧にも直接お電話も頂いているが、基本的な著作権取り扱いのルールさえ守って頂けている限りは(引用、抜粋には出所を明記する等)、自由にご利用頂いて構わない。

一方で、そういったルールを守って頂けない方には、厳正なる法的対処を行なうつもりなので宜しくお願い致したい。



批判を恐れずに敢えてここに記すならば、そもそもこの業界には専門家「モドキ」が多すぎる。カジノの専門調査部を抱える弊社には、定期的に

・某自治体からカジノに関する調査を受注したのだが、その調査手法に関して相談したい
・某企業からカジノに関するコンサル契約を受注したのだが、その手法に関して相談したい

などという問合せが入ってくる。弊社はシンクタンクといえども完全民間企業なので、商売になる限りはそういった下請け業のような依頼も基本的には快く対応させて頂くことにしている。しかし、先日などは

・某商工会議所からカジノに関する講演の依頼を受けたので、カジノについて教えて欲しい

などと連絡をしてくる不届き者もいた。このレベルになると、出来もしない仕事を受ける方も受ける方だが、発注する側も一体何をもって講演を発注しているのかとその認識を疑ってしまう。

私がいち専門家として業界内を見回してみて、「カジノに対する正確な知識を持ち、それを独自の視点で仮説検証作業を行い、自説を構築した上でアウトプットする」という専門家として最低限のレベルにまで達している人間は、どう多く数えてみても国内で5人程度しかいない(実業でこの業界に携わっている方々を除き)。それ以外の人間は基本的に、誰か他の人間の主張を寄せ集めてコピー&ペーストに近い形で発信している、もしくはただのカジノファンが趣味が高じて専門家を語っているだけである。そのような輩を間違っても掴まされないように、全国の関係者の皆様はぜひお気を付けて頂きたい。

…と、最後は何だか本旨とズレてしまったが、今回の投稿で皆様に殊にお伝えしたいことは「毎日、本ブログへアクセス頂き、有難う御座います」の一点である。今後ともご支援、ご鞭撻の程を宜しくお願い致します。

さて、シンガポールシリーズがひとまず終了したので、本日はちょっと毛色を変えてカジノゲームの定義に関して。

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何時から誰がそのように決めたのかは知らないが、我が国ではカジノゲームは「技術介入要素のない完全確率ゲーム」ということになっているらしい。おそらくこれは、技術介入要素が必ず求められる「遊技」との対比の中で整理されてきた日本独自のカジノゲームの解釈なのだと思うが、そういった事情を全く鑑みずにカジノ産業だけを見続けてきた私の立場からすれば、その定義は完全に間違いである。



もちろんカジノにも完全確率ゲームは存在する。一般的なスロットマシンは一端回りだしたら最後、完全に確率論に基づいてゲームの結果が出る。そこに技術が介入する要素はないし、誰がどのようにプレイしようともその結果に変化が出ることはない。

ところが、カジノゲームにはプレイヤーのスキルによってゲームの控除率が変化するタイプのゲームもある。その代表的な例がビデオポーカーである。ビデオポーカーは、最初にカードが配られた後、何段階かの意思決定を経てゲームの結果にいたる。その過程でどのような選択を行なうかによって、ゲームの控除率が変化する技術介入ゲームである。ただしビデオポーカーの場合、一端意思決定をした後はまた自動的にゲームが進むため、その先は完全確率ゲームとなる。同じプレイ戦略を取れば万人が同じ結果を得ることができるという意味で、ビデオポーカーは「戦略的スキルゲーム」と呼ぶべきだろう。

しかし、カジノゲームはここまでに留まらない。実は、カジノには日本の遊技機のように完全なる技術を必要とするゲームも存在する。Bally社が2007年に発表したPongスロットは、ボーナスゲームの中に日本で言う「ブロック崩し」のようなゲームフィーチャーを含むスキルゲームである。上記の戦略的スキルと違い、動体視力や反射神経が必要となるスキルゲームなので、私はこの種のゲームを物理的(肉体的)スキルゲームと呼んでいる。現在はまだ米国市場内には広くは受け入れられてはいないが、これまで「技術介入要素のない完全確率ゲーム」の代表格として挙げられてきたスロットマシンも中長期では技術介入要素を含んだ形で多様に進化して行くのだろう。



我が国において、どのようにカジノゲームが「技術介入要素のない完全確率ゲーム」とされたのか、その過程は知らないが、そもそもネバダ州におけるカジノ管理法はマシンゲームに技術介入要素が入ることを否定していない。

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Regulation 14
14.040 Minimum standards for gaming devices. All gaming devices submitted for approval:
1. Must theoretically pay out a mathematically demonstrable percentage of all amounts wagered, which must not be less than 75 percent for each wager available for play on the device.

(a) Gaming devices that may be affected by player skill must meet this standard when using a method of play that will provide the greatest return to the player over a period of continuous play.

【和訳】
14.040 ゲーム機器の最低基準。承認を受ける全てのゲーム機器は:
1.投入金額に対するペイアウト率が数学的に保障されていなければならない。その比率はゲームのプレイに必要な投入金額額の75%を下回ってはならない。

(a)プレイヤーによる技術介入要素のあるゲーム機器は、最もプレイヤーにとって有利なプレイ方法で一定期間プレイした場合においてこの基準に達しなければならない。
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上記の規定に収まってさえいればカジノゲームにスキルを持ち込むことは可能なのである。もっと言えば、私は少しだけゲームルールに手を加えれば、目押し機能の付いた日本のパチスロタイプのスロットでさえカジノゲームとして認可され得ると考えている。

ご興味のあるメーカーの方はぜひご連絡を頂きたい。

昨日のつづき

シンガポールで新設される両カジノともに来年の初旬に開業が予定されている。まだ開業すらしていない施設に対してあれこれと論評をするのも無粋な話。ここでの私のコメントは避けるが、シンガポール政府自身はこの開発に対しては相当の自信を持っているようだ。

今年のシンガポールの建国記念日(8月9日)のイベントでは、リー・シェンロン首相自身が新設されるカジノのCG映像に解説を付けながら、シンガポールの観光シーンが今後どのように変化してゆくかを国民に向かってプレゼンテーションを行なっている。

Marina Bay 3D cgi video - from National Day Rally 09
http://www.youtube.com/watch?v=YAr2i68DD6w&feature=related

私がこの映像を見て最も印象的だったのが、CG映像を紹介する直前に見せるリー首相の非常に爽やかかつ自信に満ちた笑顔である。1980年代に盛隆を極めたシンガポール観光産業は1990年代から2000年代にかけての誤った政府施策によって地に落ちた。しかし、その過ちを真摯に受け止め、シンガポールの将来のために「カジノ合法化」という大きな政策的な転換を行なったその人がリー・シェンロン首相である。

「世界一厳格な道徳国家」と呼ばれる同国において、カジノを合法化するという決断は非常に困難が伴う作業であったに違いない。リー首相の実父で「シンガポール建国の父」として未だ広い敬意を集めるリー・クアンユー初代首相は、当初この施策に理解を示さなかったが、最終的には息子の熱意に負けて「新しい国の形は新しいリーダー達が決めるもの」と同施策の容認に廻ったというエピソードは非常に有名である。その様な数々の困難を推してまでも彼らがカジノ合法化に向かって一歩を踏み出したのは、「カジノツーリズム」という新たな観光資源が未来のシンガポールの発展に大きく貢献するだろうという確信があったからに他ならない。

我が国でも新しい民主党政権の元でいよいよ本格化するカジノ合法化論議であるが、皆様自身の目で上記映像を見ながら、是非カジノと観光振興政策に関して思いをめぐらせてみて欲しい。



さて、以上でここ2週間ほど続けてきたシンガポールシリーズを一端終了させようと思う。ここまで読んで頂けた方々には、なぜ世界的にカジノツーリズムが注目され、なぜそれが我が国においても検討が行なわれ始めているかに関して一定のご理解を頂けたものと思う。

また、本シリーズを通して私が述べたかったのは大きく以下の3点である。

1. 我が国の運輸政策に偏った観光振興政策は早急に改めるべき。「集める施策」から「消費させる施策」へとシフトチェンジをせよ。

2. 現在の我が国の目的・滞在型観光資源の創出政策は、完全に間違った方向に進んでいる。根底からの見直しが必要である。

3. カジノツーリズムは目的・滞在型観光資源として非常に強力なツールである。最終的な結論はどうあれ、我が国においてもその是非に対して一定の議論を行なってゆく必要がある。

上記に関しては、まだまだ書き足りない部分もあるので、その点は今後の投稿の中でボチボチと補完をしてゆこうと思っている。

前回のつづき

シンガポールは新設する2つの複合型リゾートの開発地域を、シンガポールの都心に面する埋立地(マリーナベイ)、および国内最大のリゾート島であるセントーサ島の2地区に定め、それぞれに以下のような開発基本要件を付加した。

複合型リゾート1:
マリーナベイにおける複合型リゾート開発は、アジアの中核都市であるシンガポールの近代都市のイメージをさらに増幅させるような現代的な建築でなければならない。また、その開発はシンガポール政府の定める都市開発計画に則って開発が行なわれなければならない。

複合型リゾート2:
セントーサ島における複合リゾート開発は、観光客に「訪れるべき必要性」を見出させるような大規模かつ象徴的な開発でなければならない。その開発はファミリー観光客に圧倒的な余暇体験と娯楽を提供するようなワールドクラスの複合型トロピカルリゾートであることが望ましい。また本開発は、観光資源の魅力とその選択肢を増幅させようとするシンガポールの観光政策において重要な要素となっており、新たな観光投資を誘発するようなものでなければならない。

このような開発要件を定めた上で、シンガポール政府は世界中の開発事業者に対して具体的な開発案の提出を求める入札を開催し、最も優秀な開発投資計画を建てた企業に対してシンガポールにおける2つの複合型リゾートの開発運営権を付与することを宣言したのである。



通常の民間商業施設開発において行政側が上記のような形で詳細に投資要件を定めることは、民間企業の経済活動の自由を奪うものとなってしまうため難しい。消防法や建築基準法、もしくは景観条例のような最低限のものを除いて、自分で投資リスクを負って事業を行う民間開発に対して、行政側からいちいち注文を付けられたら事業者はたまったものではないだろう。

しかし、数量限定のライセンス制度を採用することの多いカジノ業種では、プロジェクト評価型の競争入札(総合評価型競争入札)を行なうことで、その投資のあり方に一定レベルのコントロールを付加することが出来る。何よりも行政側は「どうあるべきか」という基本コンセプトを決定してしまえば、あとは世界中から集められた優秀な民間業者達の企画力や創造力を最大限に活かしながら、最も地域に相応しいと思われる具体的な企画案を選べばよい。その上で、さらに開発に必要となる投資リスクまでもを民間企業に負わせることができるのだ。そのための「呼び水」となっているのが、カジノの開発運営権というわけだ。

かくしてシンガポールでは2つのカジノ開発運営権を巡り、世界各国から約20の開発事業者が集まり、それぞれ2000億円から4000億円クラスの複合型リゾートの開発案を提出。複数回の選考を経た上で最も高い評価を受けた2つの開発投資案が採用されることとなった。

次回へつづく

前回のつづき。

シンガポールが旧来から持っていた都市観光、臨海リゾートの2観光資源は、どちらも目的・滞在型となり得る観光資源である。しかし、それが旧来の周遊型観光から目的・滞在型観光資源へと昇華するためには、一定の条件が必要となる。



例えばニューヨークを観光で訪れるとして、もしその目的が「エンパイアステートビルに登って、メトロポリタンミュージアムを観て、グランドゼロを訪問して…」と、それぞれの具体的な観光施設に焦点が当てられている限りは、これはあくまでも旧来型の周遊型観光となってしまう。その種の観光客はツアーを組んでそれぞれのチェックポイントで写真を撮ったらお仕舞い。2度とニューヨークを訪れることは無いだろう。

一方で、観光客の訪問目的が「毎晩ミュージカルを観劇し、その後、市内に点在するライブハウスやクラブを散策しながらニューヨークという『街』が持つ文化やエネルギーを感じ取りたい」というものとなった場合、それは目的・滞在型観光となる。この種の観光客は恐らくニューヨークに数日に渡って長期滞在をし、特に目的も無く街を散策する。また、その趣味嗜好が継続する限り、毎年のように同じ街を訪れることだろう。

上記2つの例を分けるポイントとなるのが、そこに「特別な体験」があるかどうかという点である。どれだけ沢山の周遊型観光を取り揃えた所で、そこでしか得られない価値、圧倒的な感動、もしくはその観光を象徴する普遍的な観光シーン(イメージ)が無ければ、同じ場所に長期で滞在し、繰り返しそこを訪れる「観光動機」は生まれない。

しかし、この種の観光開発が決して簡単なものではないのは以前の投稿でも論じたとおりである。
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/642179.html



観光客を地域に長期滞在させるためには強力なコンテンツ(観光資源)が必要となる。普通はこれを探す事自体も難しいのだが、幸いにもシンガポールには都市観光と臨海リゾートという2つの観光資源があった。しかし、現行のシンガポールにおける両観光資源は周辺観光地との競争に勝ち抜くだけの競争力は持っていない。それを他にはない「特別な体験」にまで引き上げるためには、それなりの大きな原資(財源)が必要となる。

しかし、どの国も同じだが、それはリスクを伴う莫大な投資であり、公金でそれを賄うことはできない。税金をなるべく使わずに目的・滞在型資源を開発する原資を得たい。通常ならばなかなか難しい注文だが、それを可能にする数少ない手法のひとつが、シンガポール政府が採用したカジノツーリズムとその他の観光資源との連携だったのである。

つづく

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