前回のつづき
シンガポールは新設する2つの複合型リゾートの開発地域を、シンガポールの都心に面する埋立地(マリーナベイ)、および国内最大のリゾート島であるセントーサ島の2地区に定め、それぞれに以下のような開発基本要件を付加した。
複合型リゾート1:
マリーナベイにおける複合型リゾート開発は、アジアの中核都市であるシンガポールの近代都市のイメージをさらに増幅させるような現代的な建築でなければならない。また、その開発はシンガポール政府の定める都市開発計画に則って開発が行なわれなければならない。
複合型リゾート2:
セントーサ島における複合リゾート開発は、観光客に「訪れるべき必要性」を見出させるような大規模かつ象徴的な開発でなければならない。その開発はファミリー観光客に圧倒的な余暇体験と娯楽を提供するようなワールドクラスの複合型トロピカルリゾートであることが望ましい。また本開発は、観光資源の魅力とその選択肢を増幅させようとするシンガポールの観光政策において重要な要素となっており、新たな観光投資を誘発するようなものでなければならない。
このような開発要件を定めた上で、シンガポール政府は世界中の開発事業者に対して具体的な開発案の提出を求める入札を開催し、最も優秀な開発投資計画を建てた企業に対してシンガポールにおける2つの複合型リゾートの開発運営権を付与することを宣言したのである。
◆
通常の民間商業施設開発において行政側が上記のような形で詳細に投資要件を定めることは、民間企業の経済活動の自由を奪うものとなってしまうため難しい。消防法や建築基準法、もしくは景観条例のような最低限のものを除いて、自分で投資リスクを負って事業を行う民間開発に対して、行政側からいちいち注文を付けられたら事業者はたまったものではないだろう。
しかし、数量限定のライセンス制度を採用することの多いカジノ業種では、プロジェクト評価型の競争入札(総合評価型競争入札)を行なうことで、その投資のあり方に一定レベルのコントロールを付加することが出来る。何よりも行政側は「どうあるべきか」という基本コンセプトを決定してしまえば、あとは世界中から集められた優秀な民間業者達の企画力や創造力を最大限に活かしながら、最も地域に相応しいと思われる具体的な企画案を選べばよい。その上で、さらに開発に必要となる投資リスクまでもを民間企業に負わせることができるのだ。そのための「呼び水」となっているのが、カジノの開発運営権というわけだ。
かくしてシンガポールでは2つのカジノ開発運営権を巡り、世界各国から約20の開発事業者が集まり、それぞれ2000億円から4000億円クラスの複合型リゾートの開発案を提出。複数回の選考を経た上で最も高い評価を受けた2つの開発投資案が採用されることとなった。
次回へつづく
シンガポールは新設する2つの複合型リゾートの開発地域を、シンガポールの都心に面する埋立地(マリーナベイ)、および国内最大のリゾート島であるセントーサ島の2地区に定め、それぞれに以下のような開発基本要件を付加した。
複合型リゾート1:
マリーナベイにおける複合型リゾート開発は、アジアの中核都市であるシンガポールの近代都市のイメージをさらに増幅させるような現代的な建築でなければならない。また、その開発はシンガポール政府の定める都市開発計画に則って開発が行なわれなければならない。
複合型リゾート2:
セントーサ島における複合リゾート開発は、観光客に「訪れるべき必要性」を見出させるような大規模かつ象徴的な開発でなければならない。その開発はファミリー観光客に圧倒的な余暇体験と娯楽を提供するようなワールドクラスの複合型トロピカルリゾートであることが望ましい。また本開発は、観光資源の魅力とその選択肢を増幅させようとするシンガポールの観光政策において重要な要素となっており、新たな観光投資を誘発するようなものでなければならない。
このような開発要件を定めた上で、シンガポール政府は世界中の開発事業者に対して具体的な開発案の提出を求める入札を開催し、最も優秀な開発投資計画を建てた企業に対してシンガポールにおける2つの複合型リゾートの開発運営権を付与することを宣言したのである。
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通常の民間商業施設開発において行政側が上記のような形で詳細に投資要件を定めることは、民間企業の経済活動の自由を奪うものとなってしまうため難しい。消防法や建築基準法、もしくは景観条例のような最低限のものを除いて、自分で投資リスクを負って事業を行う民間開発に対して、行政側からいちいち注文を付けられたら事業者はたまったものではないだろう。
しかし、数量限定のライセンス制度を採用することの多いカジノ業種では、プロジェクト評価型の競争入札(総合評価型競争入札)を行なうことで、その投資のあり方に一定レベルのコントロールを付加することが出来る。何よりも行政側は「どうあるべきか」という基本コンセプトを決定してしまえば、あとは世界中から集められた優秀な民間業者達の企画力や創造力を最大限に活かしながら、最も地域に相応しいと思われる具体的な企画案を選べばよい。その上で、さらに開発に必要となる投資リスクまでもを民間企業に負わせることができるのだ。そのための「呼び水」となっているのが、カジノの開発運営権というわけだ。
かくしてシンガポールでは2つのカジノ開発運営権を巡り、世界各国から約20の開発事業者が集まり、それぞれ2000億円から4000億円クラスの複合型リゾートの開発案を提出。複数回の選考を経た上で最も高い評価を受けた2つの開発投資案が採用されることとなった。
次回へつづく